第75【誓いの前日編その12】
「うおっ!!俺は気絶していたのか……」そう言いながらミフィレンの方を見ると、皿に盛られていた料理が顔に付いているのを右指を差して笑っていた。
テーブルに置かれていた布巾で顔を拭くと、知らぬ間に魔法生物が増えている気がして、その姿をじっくり眺める。
頭には白い鳥が癖毛で巣を作っており、手の平に目線をやると、小さな猿と犬がお互いに抱きついてはいるが、少しでも主人が視線を逸らすと隙を突いて喧嘩が再開する。
笑みを浮かべるミフィレンに、白い歯を輝かせながら答えると、アイナとセリエが互いの意見で衝突し罵倒し合っているのを、止める素振り所か無言無表情で、背筋良く座っているノーメンが、無機質な白マスク越しにこちらを見ていた。
大きな体だが、小さな身振りでミフィレンの頭の鳥を指差し、次に自分を指差しながら、バルクスを見て鼻で笑うを交互に繰り返している。
(この鳥は、俺が作った――――お前みたいな筋肉自慢には出来ないだろうな!!繊細さが違うんだよバーカ!!)
と脳内のリトルバルクスが言っている気がして、簡単に挑発に乗りムキになると勢い良く立ちあがり、隆起する自慢の筋肉を見せびらかすように上着を脱ぎ捨て半袖になると、己の全細胞と全筋肉達を手の平に集約する勢いで、全身全霊の魔力を込め創造を開始する。
「「ぬおおおおぉぉぉ!!俺ならぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛出来るうぅぅ!!」」
1人対抗の炎を心に灯し、大きな手に力を入れ思い思いに創造をするが、そんな努力も虚しく、全く眼中にないアイナとセリエは未だに口喧嘩をしており、ノーメンは張り合うように己の筋肉を触りながら確認している。
唯一見ていた筈のミフィレンは、耳に詰まっていたリンゴを巡って、【猿鳥犬】の三匹が、小さな体を駆使して奪い合い戯れているのを笑顔で見守っている。