第70話【誓いの前日編その7】
アイナとのやり取りを繰り返し数分経過後、後方から不思議そうに話し掛ける、可愛らしい声が聞こえてきた。
「ノーメンのおじさん久しぶりだね!!そっちの人は誰なの?お夕飯一緒に食べに来たの?」
扉前で陣取る2人組の間を縫うように現れたのは、お腹を空かしたミフィレン達だった。
徐々にヒートアップするアイナを他所に、小柄な男は目の前にいる小さな癖毛金髪頭を、これでもかと力強く撫でながらこう言った。
「おっ、ニッシャん所のチビッ子じゃねぇか!!久しぶりだな?お兄さん達はな、そこの小さいのに用が有ってだな――――」
大好きなミフィレンが現れ、一瞬だけ天使の笑顔になるが、失礼な一言により「゛あんっ?」と、到底うら若き乙女から発せられる音じゃない、野太い怒声が皆の耳に届く。
「今、何て言った?セリエ――――貴方も私に一度殺されなきゃその小さい頭じゃ理解出来ないかしら?」
アイナが怒り心頭になったのを見かねてか、セリエは両手と頭を左右に振り、誤解を解くため必死だった。
「悪い悪い、冗談だよ!!じょ・う・だ・ん!!喧嘩売りに来たんじゃなくてさ、アイナちゃんの所の師匠さんに頼まれたわけよ?【娘と弟子】を晦冥の奈落まで連れてけってさ。あんたらの目的はニッシャの蘇生だろ?なら、人数は多いに越したことないよな」
「ガルルルッ!!」と獣の様な唸り声が、アイナから発せられるが、それを聞かなかったことにして、バルクスはミフィレンを連れてノーメン達の前を無言で素通りし、無慈悲な飛び火が来ないように、冷静かつ華麗に着席した。




