表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつだってあなたが私を強くする  作者: 泥んことかげ
【第1部~出会いと約束】
5/111

第4話【目的と生命】

【応接室扉前】

ここに来るのは、初めてだな。

私の身長よりも大きく、さすが協会と言わざるをえない程、豪華な装飾をされている。

(この先は、お前一人で行け)

とでも言ってるのだろう。

ミフィレン1人見知らぬ土地に置いていくのは心もとないが仕方がない。


奴は依然と私の方へ向き直り、扉を開けている。


着なれないせいかドレスの裾を踏みそうになり、前のめりになる。

面倒くさいが手で捲し上げ、

ミフィレンの目の高さまで腰を落とし合わせる。

「ちょっとだけ、中で話ししてくるから、

大人しく待ってるんだぞ?」

安心させるため「ニッコリ」笑うが

またも機嫌が悪そうに「ムスッ」としている。

下を向いている、頭を「ポンポン」と二撫ですると、扉の向こうへ歩きだす。


【ピーン】とドレスが引っ張られ、危うく転びそうになる。

後ろを振り返ると、泣きじゃくりそうな顔でこちらを見ている。

目元は涙で零れ落ちそうだった。


(そうか...ずっと二人でいたもんな...寂しいよな。)


気持ちを察した私は、小さな手を掴みミフィレンの手に【炎魔法】で【犬】を造ってやった。


魔法に関しては繊細な方だから、ちゃんと燃えない様に調整してある。

よく一人で造っては、寂しさを紛らわしたもんだ。


本物の生き物のように、手のひらを動き回る、事実【魔法】は寂しい気持ちを紛らわせ、ほのかに温かさを与えた。


「パァッ」と明るい表情になり、その小さな体はミフィレンの周りを駆け巡る。


内緒にしてるが、とっておきの副効果として何が有っても守れるようにおまじないをかけておいた。


「ノーメン、犬っコロ、ミフィレンを頼んだぞ!」


小さく手を振る私に、腕を組み無言を貫くノーメンとミフィレンは小さな体に大きな身振りをし快く送ってくれた。


「行ってらっしゃい!」

協会中に響かせる程の声をあげ、私はそれを聞くと中に入り重く硬い扉が鈍い音と共にゆっくりと閉まる。


【応接室内部】

目の前には、いかにも偉そうな老年の男が椅子に腰かけている。

両隣には、いかにもな護衛の男2人が立っている。

森で研ぎ澄まされた感覚のせいで殺気が伝わってくる。


ガラス張りのテーブル越しに話しかける


「よく、きた。ニッシャよ、そこへ座れ」


声色は低く、それでいて聴き取り辛かったが何となく対面の椅子へ座った。

お上品とかそこら辺は、わからないけどとりあえず足を組む。


(私の美貌をもってしても鼻を伸ばさないどころか、視線すら送らない。

全く、お堅い職業は嫌だねぇ)


このドレス「スースー」して気持ち悪いけどまぁいいだろう。

協会の人間だけあって、どこか威厳を感じられる。

着席を見かねて、腰を曲げ前屈みになり両の手を目の前で組みテーブルに肘をつきあわせる。


「それでは、本題へ入ろう。協会は世界の永久の安定を構築するため、総力を上げ大精霊の一部をその身に宿している6人を探している」


ニッシャは興味なさそうに、煙草に火をつけ煙を上に吐きつける。

元々、話何て興味もなく気だるそうな態度をとる。

護衛は、私が相応の態度をとらなかったせいで2人同時に臨戦態勢に入るが

それを止めたのは、他でもない老年の男だ

。右手で護衛達に合図を送る。

「まぁ、待て...お主達2人はおろか、協会の戦力でもこやつは倒せんよ...フォッフォッフォッ」

冗談なのか誠なのか、読めぬ爺さんの戯言は置いといて。



「んで?何で私を呼んだんだ?精霊探しならお宅らの優秀な部隊とセリエ、ノーメンがいるんじゃないのか?」

右手の煙草で目の前や扉の方を指す。


切れ長の鋭い目で睨み付けると、そいつは深いため息をした。


「緊急事態なのだ。今までは不恰好ながらバランスを保っていたが、あることがきっかけでお前を頼らざるをえなかった」


そう言って珈琲を口に含ませる。

カップを置き「カタッ」という音と共に続ける。


「我が協会には、精霊を現在確認しており、使役者が三人おる。」


消】滅する記憶【シュハメナス】


荒】天を司る【カウラスとチイノス】


そして、ニッシャ、お主の


炎】燃で灰に帰す【レプラギウス】


「この3体は、比較的容易に見つけ保護することができた。」


ニッシャを見つめるがその目には光はなかった。


「私は別に、あんたらに世話になった覚えはないけどな」


足に仕込んだ煙草のストックがなくなったが、

胸を「トントン」と指で触れると、胸元から煙草が飛び出し挟まった状態で吸いだす。


(通常の人間ならこう、思うだろう。煙草になりたい、と)


そんなニッシャを他所に続け様に話す


残る精霊は、3体であり、その姿や

名前は伝記でしか記されておらず存在は確かだがもはや伝説とされている。


時】を司る【セントキクルス】


水】の守護神【イメサリス】


そして...と話を(さえぎ)るように扉が開く。


「ガタン」という音と共に余程重大な事柄なのか顔面蒼白の男が息を切らせながら喋りだす。


【協会内部の広場】


協会中央には、憩いの場である広場があり、天井はなく青い空が広がっていた。

回りでは皆が笑顔で争いはなくとても穏やかな空間だった。


柱にもたれ掛かる男は子守りを任されたが、今までのどの任務より難解であると頭を巡らせていた。

(任せたと言われたが、どうしたらいいのやら)


中央には噴水があり、任務を終えた者や、見学者で活気がある。


「ニッシャの犬可愛いー!!」

甲高い声でそう言うと、嬉しそうに

投げたボールをキャッチしてはミフィレンの回りを「グルグル」と駆け回っている。


体が炎で出来ているが、温かい程度であり燃やす力はない。

手のひらサイズと小さな体ながら、通常の犬のように利口であり主人に忠実である。


生命を造りだす程の、技量と緻密(ちみつ)な魔力調整はニッシャならではで、加減を間違えれば広場はおろかこの都市は姿形も残さず灰となるだろう。


(犬も可愛いが、あの子も可愛いなぁ)


ノーメンは無口であるが、心の中はおしゃべりである。

元気に遊ぶミフィレンを見て感心していると柱の裏側から声がした。


「ニッシャは連れて来られたようだが、まさか、おまけ付きとはね」


それを聞きすかさず返答する。


「あぁ、だが仕方がない、あんな小さな子を置いていったりしたら可哀想だからな。」


マスクの下はどうあれ、少し照れ気味で話しているのは言うまでもない。


「なんだお前、随分と気に入ってるじゃねえか?」


男はノーメンの態度が余程珍しいのか不思議そうに返す。


(あの時不思議なことが、あったんだ。ニッシャの闘争心を煽るためあの子どもを消したんだが、知らぬ間に魔法解除(マジックキャンセル)されていたんだ。まぁそのお陰で助かったんだがな)

と言っている気がするがそこはスルーした。

「まぁ、いい、ニッシャには気をつけろ。特にあの子関連はヤバイかもな」


そういい残し男は姿を消した。

「この子、造ってもらったの!凄いでしょ!」

ミフィレンを中心に人集(ひとだか)りができ、珍しい魔法を一目見ようと沢山の人が集まる。

同じ位の子ども達は、近寄り「キラキラ」した目でミフィレンとその【犬】を見つめる。


(いつの間にこんなに人が......見失ってしまう。)


ある中年の男性がミフィレンに話しかける。

「もしもし、その魔法は誰がかけたのかな?もしかして......お嬢ちゃんかな?」


犬が肩に止まりくすぐったいのか、身震いをし、優しく、元気に答える。


「ううん、違うよ!!これはね。ニッシャが御守りのために造ってくれたの!!」


(ニッシャ!!!)と聞くと一部の観衆は(ざわざわ)と波風をたてるように動揺しはじめる


誰かが「ぼそり」と呟いた。

「ニッシャってあの、朱天(しゅてん)の炎と呼ばれてた、あの問題の...帰ってきたのか......」


またある者は、

「また、あの悪夢が起こったら大変だわ。もう協会で討伐するべきよ!!」


周りの大人達は、動揺を隠せないのか、子どもを抱き寄せ、またあるものは根も葉もない話をしている。


誰かが言った。

あの子はもしかしたら、あの【ニッシャの子】ではないかと。

その、一言が火種となり、蜘蛛の子を散らすように広場の端へ散りはじめる。

その目は、好奇な目や、まるで化け物を見るように表情を歪ませるものもいる。

噴水の水が規則正しく流れるなか、辺りの人々は恐れおののき子ども達は何が起こったのか理解出来ずわけもわからなく泣きわめき喧騒と悲観が包み込む、一人「ポツン」と取り残されてしまったミフィレン。


やれやれと、ノーメンが止めようとしたその時、地鳴りの

ような音が聞こえ、足元はぐらつき立っていられないほどの振動が人々を襲う。

警報がなり、緊急事態に備えた魔法壁(マジック)(ウォール)が発動する。


【ザーザーザーザー】と聞き取りづらい音が、辺りに響く。


口早に話し、焦りが伝わってくる。

「ただいま、都周辺におかれましては危険生物の襲来が確認されました。ただちにシェルターへ入り安全を最優先にしてください。」

その言葉を聞いた民衆はパニックを起こし、我先に避難所へ走り阿鼻叫喚(あびきょうかん)となる中、

足を(つまず)かせ、転ぶもの、血を流し怪我する者で溢れていた。


「尚、危険生物におかれましては対危険生物討伐部隊が参りますのでご安心ください。」


親とはぐれ、泣く子に近寄るミフィレンは自身と同い年であろう女の子と一緒に両親を探すことになった。



【応接室内部】

老年の男は一睨みすると、若い男は黙って出ていった。

外が騒がしいが、扉が閉まると内部は閑散(かんさん)としていた。


「なんで、こう次から次へと問題が起こるんだよ...!!」

苛立ちを隠せず、ミフィレンが心配になり立ち上がろうとする。

男は依然冷静であり淡々と話をする。

「まぁ、そう慌てるな。たかだかlevel-Ⅱが数体とそれを統率するⅢがたったの一体、この都の軍事力には到底及ばんよ。珈琲でも飲んで落ち着きたまえ」

外は緊急事態宣言が宣告されていたが、異様な落ち着きぶりに私は釈然としなかった。

今すぐにでも、出て「()()()」だけでも連れて帰りたかったがそうもいかなかった。

この都にいる限り私の行動は制限され、下手な問題を起こせば即刻牢獄行き何てこともありえる。

ここに足を運んだ時点で、私の答えは「YES」以外の選択肢何てなかったのかもな。


【協会魔法壁(マジックウォール)前】


協会の精鋭隊延べ200人、対危険生物討伐部隊300人計500人で迎え撃つ。


「くそ!!何故いきなり、危険生物が押し寄せたんだ!」

そんなことを言うのも無理はない。

この都市(シレーネ)は危険地区から、十数㎞も離れており安全を確保された設備、優秀な部隊がおり襲来してくるのは初なのである。

「大丈夫だ問題ない。我々は通常通り任務をこなそう」


死蠍(デススコーピオン)〕=【危険度level-Ⅱ】

(完全迷彩のその体長は5Mであり、猛毒を含む尾と針は6M程ありここまで大型なのは稀である)


軍隊蜂(アーミービー)〕=【危険度level-Ⅱ】

(数万匹の手の平サイズが塊で群れをなす。その中に1匹いるとされる女王が軍を統率している。)


劇毒蜘蛛(ポイズンスパイダー)〕=【危険度level-Ⅱ】

(主食は主に虎やその他猛獣である。劇毒酸性の液体を吐き、耐熱耐冷性の糸はどんな炎でも燃えず、どんなに冷えようと凍らない。その耐久度およそ10tと超強高度である。)


超筋力(スーパーマッスル)兜虫(ビートル)〕=【危険度level-Ⅲ】

(環境の変化により突然変異したとされる。全長4Mと大柄であり、完全肉食で強者の血肉を吸収したことにより、文字通り鋼の肉体を手に入れた)


【協会内部広場】


ノーメンにとって非常事態でも、態度は依然変わらず只、与えられた任務をこなすのみ。

【ミフィレンを任せたぞ。】

だが、今のところ「犬」の方が役に立っているな......

(やはり、己が可愛い人間ばかりだ。自身の保身の事しか考えられない愚かなものしかいない)


人混みに巻き込まれ足を怪我したらしい女の子が、赤ん坊を抱いたまま動けないようだ。

そんな中、自身も怖い筈なのに同じ目線に合わせたのが、ミフィレンだった。

「大丈夫?私ミフィレン!あなたは?」

肩に犬が乗った状態で座り込む女の子に手をさしのべる。

手を握り立ち上がると同時に「犬」がミフィレンとアイナを行き来する。

不思議な事に、小さな擦り傷などが治ってゆく。

「私、アイナ。お母さんと一緒に来たの。

あなた優しいんだね......この魔法のお陰で不安が和らいだわ。ありがとう。」

持ち前の明るさと魔法の温かさもあいまってか、落ち着きを取り戻す。

外部では、危険生物襲来で協会内部に常駐する、部隊が出払っている。内部に先程の喧騒はなく荒れた広場は静寂だった。

ノーメンは腕を解き小さな3人へ歩きだす。 

(ミフィレンは任されたが、あの小さいのは誰だ。任務に支障がなければいいが)

その時だった、広場上空の吹き抜けの魔法壁(マジックウォール)が数秒であるが消滅したのだ。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ