表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつだってあなたが私を強くする  作者: 泥んことかげ
【第1部~出会いと約束】
49/111

第48話【子育て日記二日目】(アイナ激闘編その1)


「へ~、いつもニコニコちゃんのあんたでもそんな顔出来っ―――」話し掛ける間も与えられず、脚を力強く握られると壁側前方へ力任せに投げられる。


 宙を浮いて呑気に木目調の綺麗な床材が、容赦なく鼻先の所まで迫ってくるのを呑気に眺めていると―――

 受け身を取る隙を与えてくれないアイナは、浮遊している私の背中に乗り、全体重を込めた拳を果敢に後頭部へ降り下ろしていく。


 一発を貰う毎に叩きつけられた顔で地鳴りが起こり、その轟音は道場内で増幅され力を増した衝撃は、人や照明を大きく縦横無尽に揺らしている。


 息もつかせず左手で自慢の朱髪を鷲掴みにされ、私の背中から片足だけ降りたアイナは、スピードをもろともせずに急ブレーキを掛けると、間髪入れずに背負い投げの要領で反対方面に投げる。


 己自信で(くう)を切る音を耳で感じながら咄嗟に体を捻らせ、破片を口から吐き出し、正面を向いた私が見たのは天井へと飛び、壁を力強く蹴った事による反動を使った【垂直落下式の蹴り技】を仕掛けるアイナの姿だった。


 直撃を避けるため両腕を胸の前でX(クロス)させ、完全受け身で衝撃に備える―――が、着弾と同時に感じたのは、いつも笑っているイメージだったアイナの紛れもない【殺意】と130cmと小柄な体躯から繰り出される圧倒的【重圧】で、床が陥没し、まるで隕石が飛来した様なクレーターが、ニッシャを中心に広がり始める。


 建物全体を揺らすほどの威力のせいか、口元から血が飛び散るとアイナの右頬を(かす)め赤い(ライン)が耳元まで出来ていた。

 そんな強烈な一撃を貰った私だが、悪運の強いことに幸い急所は外れ、防御(ガード)に徹したおかげで致命傷も免れたが、お陰様で内部の骨が数本イッちまったみたいだ。


 踏みつけた脚を腕から退けると、後方の開口へ飛び乗り、数Mも沈んでいる私を鼻で笑う。


「こんな、弱い人間に私の大好きな()()が殺された?……笑わせないでよ!!」



 悲痛な声が雑に出来た穴を通る様に反響しながら微かに聞こえる。

薄れ行く意識の中、下から覗いたその先には、心が黒く歪んだ彼女(アイナ)の姿を確認出来る。

見間違いでなければ、人の暖かさをもった(しずく)が頬を伝い、数秒の沈黙後に私の口元へ落涙した気がした。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ