初めての同年代
10話まではすぐあげられると思います。よろしくお願いします。
眩しさを感じて目を開けた。窓の方を見ると日差しが入り込んでいた。時計に視線を移すと7時と表示されていた。全く、寝ているだけの生活なのになんでこんなに早く目覚めてしまうのか、なんかもったいないな、俺は前世では入院というものをしたことがなかった。そりゃあ1日検査入院とかは、あったが長期の入院はしたことがなかった。
結論から言うと暇だ、人間元気になると暇を持て余す、一応今日から検査が始まるらしいがCTやらMRIやら色々やるらしいが1日中やるということはない、やったとしても2時間ぐらいだ。
そうなると残された時間はなんにもやることがないわけだ、だが身体はリハビリのおかげでもう健康だと思う。食事だってもう普通だし、むしろ病院食だけじゃ足りないぐらいだ。
ちなみに家族には週一回ぐらいの頻度できてもらうように説得した。だって俺自身はもう健康だと思うし、それに病院から自宅まで車で一時間かかるらしいからな、母親は納得していなさそうだったが父親が説得してなんとかなだめてくれた。妹も寂しそうだったが
「お兄ちゃんがそう言うんだったら、わかった」
と言って納得していた。うん、いい妹だ。俺は前世では一人っ子だからか妹の存在はなんか、新鮮だ。そしてそういうふうに言ったせいか母親が以前の天野真が好きなもの、興味を持っていたものを色々持ってきてくれた。
「ほら、真、あなたが好きだった電車の本と、あとね、天体観測の資料と、それと船の本持ってきてあげたわよ!」
思わず俺は唖然としてしまった。おいおい、小6ぐらいだったら今流行りのテレビゲームやら携帯ゲーム機、それにカードゲームとか色々あるだろう、何故?、と思ってしまった。まあでも人それぞれだからあんまり深くツッコまないしよう。そう考えると天野真という人物は今流行りのものというよりは星とか乗り物が好きだったんだろう、俺からしたら考えられないが、なんというか純粋な子供だったんだろうな。
「あと、真これが好きだったでしょう」
そう言われて目の前に出されたのはプラスチックの入れ物に入った沢庵だった。おいおい、マジか、普通の子供だったら肉や甘いものやお菓子だろう、何故に沢庵?本当にこの天野真という人物はわからんな、でもおそらく母親がわざわざ持ってくるぐらいだから多分一番の好物なんだろう。
ちなみに前世の俺は漬け物が大好物だった。美味い漬け物があると知ればすぐ取り寄せてよく食べていたもんだ、そういう意味で正直この沢庵は嬉しい。
そういうわけで今、俺の暇つぶしアイテムは電車の本、そして星の星座が紹介されている資料と船の本しかない。はっきり言って暇つぶしにもならなかった。大人の俺からしたら、興味がない!、と言ってしまえばそれまでだがどうしても子供向けに合わせて作っている為文字が少なくページ数が少ないのだ、だから全部目を通しても一時間かからなかったのだ。
とあーだこーだしているとチャイムが鳴った。どうやらこのチャイムは食事の時間になると鳴るらしい。そして廊下の方から足音が近づいて来た。
「真君、はい!朝食ですよ、ちゃんと残さす食べなさいよ」
「看護婦さん、ありがとう、でもちゃんといつも残さず食べてるじゃん」
俺はいつものやり取りする。看護師はみな俺が子供だと思っているのかだいたい同じようなことを言ってくる、だからいつもこう返しているのだ。
「あら、そうだったかしら、まあいいわ、また食べ終わったら自分でかたずけといてね」
返事をするとそそくさと看護師は出て行ってしまった。それもそうだろうここは大学病院だ、入院患者数が多い、実際どれぐらいいるのかわからないが相当多いだろうな、それにもかかわらずこうして毎食持ってきてくれるのはありがたいな。
その後朝食を済まし検査の時間になったので検査の場所に向かって歩いていた。
なんでも今日の予定はCTとMRIというやつらしい。とりあえず機械の中に入ってじっとしていればいいとのことなので特に、
なにごともなくあっという間に終わってしまった。
あーあ、午後からなにするかなと、考えながら部屋に戻っていたらある場所に目が止まった。
「図書室、病院にも図書室なんてあるんだな、暇つぶしに覗いて見るか」
そう言って中に入って周りを観察する、部屋の広さはプレハブ四個分ぐらい、ちなみにだが俺は部屋の大きさを例える時、プレハブに当てはめて考えてしまう。一時期プレハブをレンタルする会社に勤めていた為だ。
入り口以外の壁づたいに本棚が設置されており、色々な本が置いてあった。部屋の中心には机と椅子が設置されており、家族づれや中年男性、女性の老人など様々な年代の人がみんな本を読んでいた。だがそんな中一人で黙々と勉強している女の子がいた。多分あれは小学生だろう、何故なら机の上にランドセルを置いてあるし小学生特有の黄色い帽子もあったからだ。
思わず暫く眺めているとその子と目線が合った。
「なによ!じっとこっち見て、気が散るから止めてよ」
なんだ、最近の小学生はこんなに気が強いのか?俺は思わずびびってしまった。前世では俺は別にコミュニケーション不足ではなかったが女性に関しては違った。俺は女性と接する時は最大限の敬意を払い接していた。何故か?、それは、俺は女性というものを尊敬しているからだ。世の中男はすべて女性から生まれるし、子供を出産する痛みは女性しかわからない、だから年代関係なく敬意を払って接していた。そんなんだったから多分結婚もできなかったんだと思う。必要以上に大事にし過ぎて何回か振られたこともある。
だがこの目の前の女はどうだ、初対面にもかかわらずこの態度、とまあこんなことで腹を立てていては女性とはお付き合い出来ないと思う。俺は優しく当たり障りがないように返した。
「えーと、ごめんなさい、こんなところで勉強しているみたいだったから気になっちゃて、本当にごめん」
そう言ってすぐ後ろを振り向き図書室から出て行こうとするとまた声をかけてきた。
「てーいうか君さ頭良い、あとさ小学生ぽいけど、いくつ、5、6年とか」
「え、ずいぶん色々聞くね、まあいいや、えーと勉強は多分そこそこ出来ると思う、それと俺は4月から6年生だよ」
そりゃあ当然だろ、俺は前世で37、しかも一流じゃないが一応大卒だしな。小中ぐらいの勉強だったら余裕だと思う、多分。
「ふーん、じゃあさ私の宿題のわからないとこ教えてよ!、ちなみに私も4月から6年だから」
と言ってこちらに手招きをしてくる。座っているから身長はわからないが髪型はロング、肩まである、顔はなんか一言で言うとカエルっぽいな、でも美人の部類に入ると思う。
そしてこれが転生して初めての俺の知り合いになるのであった。