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リハビリ

施設や場所の名称は作者が昔住んでいた場所をモデルにさせてもらっています。多分わかる人にはわかるかもしれません。よろしくお願いします。

別室に呼ばれた両親は医師と対面になる形でこれからの説明を受けようとしていた。

別室と呼ばれた部屋は面談室と書かれており、こじんまりとしていた。大きさはプレハブ一個分ぐらい、内装は全面白張りの壁、そして中心に机と椅子が置かれているだけであった。


「まず落ち着いて聞いて下さい、真君が目覚めたと聞いてすぐ駆けつけました。そして簡単な質問をしました、えーとですね、まず自分の名前そして年齢、後、家族構成ですね、そして真君はその時、自分の名前と年齢しか言えませんでした」


そう言われた瞬間、母親である天野ゆみは一瞬意識が遠のく感覚に陥ってしまった。

ゆみは今の説明を聞いて息子のこれからの人生を想像してしまった。名前と年齢しかわからない、それだけでこれからの人生生きていけるわけない、様々ことが、ゆみの頭の中を駆け巡った。母親であるがゆえの心配、別室に行こうする途中でトイレに寄り化粧を直したがその目にはまた、うっすらと涙が滲んでいた。

だが父親の方は説明を受けて一瞬、たじろぎはしたが気丈に振る舞って声を発した。


「えーとつまり、どういうことなんでしょうか、単純に記憶喪失なんですか、それとも何か病気か何かですか」


父親こと天野一郎はそう聞き返した。本人は普通に言っているつもりであったが声には感情がチラホラ出ていた。


「詳しいことは検査して診なければ、わかりません、まだ詳しい状況はわからないので余り早合点はしないで下さい、私、自身も現段階では何も言えないので」


そう言うと医師は黙ってしまった。

15秒ぐらい沈黙が続きおもむろに、ゆみが声を発した。


「わかりました、先生にお任せします、本当によろしくお願いします」


「はい、私も医師として可能な限り、全力を尽くします」


その後、精密検査を明日から行うことが決まった。どうやらここは大学病院らしい、医師から説明を受けて両親が部屋に戻ってきてから色々と話しをしてくれた。

内容は掻い摘まんで話すが要はこういうことらしい。

まずここは千葉県のC大学病院らしい、そして家族はなんと神奈川県川崎から千葉県のI市に引っ越してきたそうだ、それも1ヶ月前に、何でも父親の転勤場所が千葉県のI市らしく、俺が千葉の大学病院にいるということもあり住んでいたアパートを引き払ってきたそうだ。そしてなんとI市にある新築マンションを思い切って購入したそうだが、んー大丈夫なんだろうか、まあ俺が気にしてもしょうがない、そのため俺と妹は4月から新しい小学校に通うそうだ。母親の方も勤めていたデイサービスを辞め今、I市近辺で新たな職を探しているらしい。

まあざっとだがこんな感じだ。

しかしあれだな、父親が一郎、母親がゆみか、やっと名前がわかったぞ、でも父親こと一郎も凄いな、37で新築マンションを買うんだもんな、前世の俺からしたら考えられんな、それともうひとつ、4月から新しい小学校に通えるこれはでかいな、だってそうだろ、今までの人間関係を気にせず作っていけるし、俺の性格の

まま振る舞えるしな。

でも色々と両親が話してくれたおかげで天野真という人物がもの凄い家族の愛情に触れていたというのが伝わってきた。もうこれ、記憶喪失のふりする必要ないんじゃないか、でも精密検査でなにをするかわからないしとりあえずボロが出ないようにしよう。

そういえば、両親に色々聞かれたが答えられないことも多かったな、変に身構えるよりなるようになるしかないな、うん。


そして翌日、家族同伴で精密検査の予定の説明を受けた。

まあ内容はいわゆる人間ドックみたいなもんだった。でも俺の場合は3ヶ月近く寝たきりだった為、まずは一週間ぐらいは身体の運動機能のリハビリをするらしい。確かに若い身体とはいえ3ヶ月近く寝たきりの身体は思うように動かなかった。その為、一週間リハビリしたのち精密検査に入るとのことだった。

そして目覚めてからずっと空腹に悩まされていた、この若い身体は3ヶ月近く点滴のみで栄養を補っていたのだから当然だろう。だが、いきなり固形物を取ると胃がショックを受けるからと水分と離乳食から始めるそうだ。これに俺自身我慢するしかないと言い聞かせるしかなかった。

3日目ぐらいで要約、思うように身体が動かせるようになった。


「真君、やっと身体が少しずつ動かせるようになったね!」


と笑顔でこちらに話しかけてきた人物がいた。

理学療法士のお兄さんだった。俺はなんとか療法士とか色々あるからよくわからないが要はリハビリと言って身体の機能を回復させるんだとか、今のご時世色々あるな。


「はい!、なんとか少しずつですけど動かせます」


「この調子なら今週中には歩くことが出来るかもしれないね!、うん、よく頑張ってるからね」


「ありがとうございます、でも人間の身体ってすぐ動かなくなっちゃうんですね、こんなに思うようにならないとは思わなかったんで」


「そうだね、だから僕達みたいなお仕事があるんだよ、少しでも手助けしたいからね」


目の前のお兄さんは子供の前だからかそんな言葉を恥ずかしげもなく言ってくる。本当に立派な若者だな、今のご時世、やさしさが足りないと言うけどこういうのを見るとほっこりするな。

その後予定通りリハビリをこなし歩ける状態まで体力は回復していった。何度か家族が見学に来ていたが嬉しそうな顔で眺めていた。うん、うん、やっぱり家族はありがたい。そしてリハビリの後半の方には普通に食事も取れるようになっていた。


「ふー、後は来週精密検査を受けてどうなるかだな」


今、俺は前世では経験出来ないようなことを体験してるんだよな、そう思うと何をやるにも楽しく思ってしまうから人間というのは不思議だな。精密検査と聞いたら前世では不安しかなかったが今はどんなものか早く検査受けたいなと思ってしまう自分がいた。





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