新しい家族
とりあえず10話ぐらいまでは早めにあげたいと思っています。よろしくお願いします。
廊下の方から複数の足音近づいてくるのがわかった。おそらくその時がきたらしい。
勢いよく部屋のドアが開けられる。
「真、目が覚めたのね、本当に良かったわ、本当に本当なのね」
と最初声をかけてきたのが多分母親だろう、とここで俺は母親らしい人物を暫く眺める。身長は165センチぐらいだろうか、髪型は黒髪のロング、顔はいわゆる狐顔ぽいな、体系はモデルなみではないがスマートだな、37歳には全然見えないな。ぼーっとそんなことを考えていると目の前の母親に抱きしめられた。
「もう、本当に心配かけて、でも良かった」
母親の目から涙が流れていた、化粧をしているであろう顔は溢れ出る涙が多いのか多少崩れていた。だが涙を拭こうともせずひたすら泣いていた。
俺は前世では結婚はしたことがないし両親は俺が若い時に二人共立て続けに病気で亡くなった。子供は俺一人だったし親戚もいるが遠方だし頻繁に会うこともなかった。だから親が子を思う気持ちはイマイチ解らないが母親からしたら子供というのは特別な存在なのかもしれない。なんせ自分のお腹を痛めて出産してくれたんだもんな。
「えーと気持ちはわかるが少し落ち着いたらどうだ、顔が昔流行ってたやまんばメイクになってるぞ」
落ち着いた口調で話しかけているのがおそらく父親だろう。身長は相当たかいな、180ぐらいだろうか、髪型は中心で分かれているごく普通の髪型だな、顔はモテそうな猿顔だな、ふと思ったが母親にしてもそうだがこの両親、見た目は37とは思えないな、着ている服はカジュアルで若く見えるし体系も締まってる。俺は前世で37だったがそれと比べても俺がいかに老けていたか、軽いショックを感じるな。
「なによ、変なこと言わないでよ、全くデリカシーがないわね」
と一言すぐさま反論する母親、しかし違うところからも同意する意見が飛んできた。
「お母さん顔がグシャグシャだよ、お父さんの言う通りだよ、なんか怖い」
甲高い声でそう告げたのがおそらく妹だろう。身長は母親の胸あたりだから150ぐらいだろうか、髪型はツインテールになってるな、顔は母親似の狐顔だな、体系は小学生特有の痩せ型だ。
「もう、リサまでお父さんと同じこと言って、お父さんの真似したら駄目でしょう」
「まあまあ、でも真、本当に良かったよ、こうしたまた家族みんなで笑えるんだから」
そう言った父親もハンカチで目頭を押さえてた。そして妹の方も手で両目を押さえていた。なんかこっちまで涙腺が抑えきれなくなりそうだ。涙というのは不思議なものだな、思っていても出せるものじゃないし、ふとしたことで急に出てくることもあるし。と色々考えていると俺は自然と涙を流していた。目の前が霞んで見えないぐらいだった。
俺は前世で両親が亡くなってから自分の記憶では20年以上泣いたことはなかったと思う。そりゃあ花粉とかでむせて泣くことはあったが、ふと感動するアニメや映画を見ても確かに感動はするが泣くまではいかなかった。多分両親が立て続けに亡くなったことにより心のどっかで壁を作り感情を抑え込んでいたんだと思う。
でも俺にとっては縁もゆかりもない家族なのになんで感情が溢れてきたのだろうか、多分おそらくこの天野真という身体が反応したんだと思う。でもあれだな、家族っていいなと思っていると目の前の家族のみんなが近づいてきて抱きしめられていた。
家族のみんなから抱きしめられていて1、2分たったぐらいだろうか、部屋の入り口から声をかける人物がいた。
「ご家族の皆さん、本当に良かったですね、とりあえず安心できますね」
「ありがとうございます、先生。先生のおかげで息子も助かりました」
そう言って父親と母親は深く頭を下げた。
「いやいや、私が出来たことは真君が運ばれて来たとき頭に怪我をしていたからその治療を施しただけです、3ヶ月近く意識がなかったのにこうして意識が戻ったのは本人の生命力以外ありません」
そう言って医師もこちらの感情につられたのか、手を目元に何度も持って行っていた。
しかしあれなんだな、頭を怪我してそっから意識不明、そういうことって本当にあるんだな、そういういえば善神が言ってたけどジャングルジムの上から落ちたって言ってたな、でもそう考えると3ヶ月近く意識不明ってなんか怖いな、まあでもおかげでこうして転生出来たんだしな、うーん色々考えると申し訳ないという気持ちと、これからのことを思う期待と色々な感情が湧いてくる。
そして医師がまた声をかけてきた。
「真君、少し落ち着いたら精密検査をしたいんだ、まあ簡単な検査だから緊張する必要はないよ、それとご両親の方々に話しがあるので別室の方にきてもらえますか」
そう言うと医師と両親は部屋から出て行ってしまった。そうなると残されたのは妹だけである。
というかなんか気まずいな、天野真という人物が以前どういう態度で妹に接していたかわからないし、んーどうしよう下手なことは言えないしな、現状だと名前がリサということしかわからいしな、と考えているとリサが話しかけてきた。
「お兄ちゃん、3ヶ月寝ててその時、夢とか見た?」
えーと、あまりに突拍子のない質問に驚いてしまった。大人な俺の感覚からすると普通こういう場合は身体のことを気遣ったことを聞くんじゃないだろうか、でもあれなんだな、子供というのは不思議で面白いな、大人じゃ考えつかないような発想するっていうし、まずは少しずつ返していくか。
「うーんとね、多分、夢とかは見てないんじゃないかな、それに寝てる時のことはよく覚えてないんだ」
「ふーん、そうなんだ、じゃあさお兄ちゃんが入院する前さ、冷蔵庫に入っていたお兄ちゃんのケーキさ、私が食べちゃたの覚えてる?、あの時、お兄ちゃん凄い怒っちゃて口も聞いてくれなかったから」
おいおい、天野真よ、お前はそんなに小さい人間なのか?、それぐらいのこと兄貴何だから許してやれよ、全く、でもこういうやり取りってやっぱ子供だな。でもあれか、ということは以前の天野真という人物は妹にケーキを食べられてすぐ怒るような人間だったということか、となるとどうしようか、話しに合わせてあん時はムカついたなと言った方がいいのだろうか、でもここで合わせたっていずれボロが出る、だったら俺の性格を少しずつ出していった方がいいだろう。
「もうそんな昔のこと覚えてないし、もうそんなことで怒んないよ」
「本当、良かった、実はあの時のこと、ずっと気になってて、ほらケンカしている途中でお兄ちゃんそのまま怪我して、入院しちゃったから」
そうだったのか、結構複雑だな、でもあれか、その気持ちを抱えながら妹は3ヶ月近くいたのか、なんというか申し訳ないな、
ここはひとつフォローを入れよう。
「リサ、悪かったな、本当にごめん、これからもいい妹でいてくれ」
と俺はリサに向かって頭を下げた。
「ちょっと、なんでお兄ちゃんが謝るのよ、私が悪いのに、なんか変なの」
その後お互いに目線が合った途端、なぜか笑い出してしまった。
リサという妹との距離が少し近くなったような気がした。