天野真
ふと急に目が覚めた。頭がぼーっとする感覚を感じていた、数秒すると意識がはっきりしてきた。そして目線を左の方に移すとどうやら左手に点滴がつながれているようだ、今度は右の方に目線を移すと程よい日光の日差しが降り注いでいた。そうこうしているとやっと意識が覚醒したのか転生したことを思い出した。
「ふう~やっぱり身体はまだ思うように動かないな、でも本当に転生したっぽいな」
そうつぶやいた時ドアが開けられる音がした。入って来たのは看護師だった。いつものように体温を計り、点滴をチェックするだけの作業のはずだった。
「えっ、なんでというか意識を取り戻したの?」
看護師は驚いていた。それは当然だろう、3ヶ月意識不明の人間が急に意識が戻ったんだから。その後看護師は慌てて部屋から出て行ってしまった。
さてと、どうするかな、記憶喪失の演技をするつもりではいるが現代医学の前に通用するのか、不安な部分はあるがとりあえずやるしかない。その後廊下の方から足音が聞こえてきた。
「真君、意識が戻ったようだね、一時はどうなるかと思ったけど難は逃れたね」
「先生、私は今までで一番驚きましたよ」
スポーツ刈りそして丸眼鏡、白い白衣を着た40過ぎぐらいの男と少し茶髪で色白のいかにも看護師という服装をした女、歳は20代前半ぐらいだろうか、その二人が興奮してはしゃいでいた。
「錦織さん、ご家族の方にご連絡をしてください」
錦織と言われた女はすぐ返事をし部屋を出て行った。そして医師であろう白衣を着た男はこちらに向かってたずねてきた。
「真君、自分の名前と年齢、家族の名前は言えるかい?」
さてと、どうしよう、自分の名前と年齢は言える、でも家族の名前はわからんぞ、んーどうしよう、考えていると医師が不安な顔で眺めていた。まあとりあえず名前と年齢だけ言って後は思い出せないと言うしかない。
「えーと名前は天野真、年齢は12歳、えーと後は」
とここで考えているという意志表示を見せる。
「あとはちょっとわからない、でもなんかわかりそうなわからないような」
「うん、落ち着いて、ちょっと焦らせちゃったね、ごめん、とりあえず今、お父さんとお母さんに来て貰うからまたその時話そうか」
とりあえず頷いておく、そしてまた来るからおとなしくしてな、と言い部屋から出て行った。そして部屋の上の方に立てかけてある時計を見ると8時と表示されていた。どうやら朝の8時らしい、その下に飾ってあるカレンダーを見ると2018年3月15日とだということがわかった。そういえば俺が会社を辞めたのが2018年1月15日だから死んでから2ヶ月ぐらいしかたってないのか、なんか不思議な感覚だ。ふと窓の方に目線を移すと天野真という子の顔が現れた。髪は黒で毛がもじゃもじゃ、分け目も出ていない、回りも耳につかない程度になっていた。そして顔はえーとこれは表現が難しいだろ、簡単に言うと今風の顔、おでこは広くなくて、目は二重、顎は細い、これは多分イケメンに近いんじゃないか、ふん、思わず心が躍ってしまうな。
「んー我ながらいい男だな、思わず声に出して言ってしまうほど」
となると後はこれから会う家族だよな、どういう感じで向き合えばいいんだ?さっぱりわからんぞ、とはいえ向こうからしたら大事な息子だもんな、下手なことはできないしな、とりあえずその場の雰囲気に任せるか、もうそれしかないしな。
それから一時間しないぐらいで父親、母親、妹が到着したのであった。