友達3
今、俺は下駄箱に向かって歩いていた、今日も無事に一日が終わった為か気持ちが晴れやかだった。
最近、俺の母親こと天野ゆみの勤務時間が変わったみたいで、今まで帰ってから俺は掃除や洗濯、料理などをこなしていたが、やらなくていい!と言われてしまった。まあ、多分、母親なりに俺に気を使ってそう言ってくれたのだろう。
そんなわけで最近は、帰っても暇なのだ、本当にやる事がない、まだせめてテレビゲームや携帯ゲーム機、パソコンなどがあれば、違うのだが。まあ多分、俺が欲しいと言えば買ってくれるような気もするが、なんか悪い気がしていたのでいいだせないでいた。
ちなみに妹のリサは携帯ゲームを持っているが、まあ妹からわざわざ借りてまでやろうとは思わない。
でもな、せめてスマホぐらいあればなあー、・・・・
なんでも俺の両親は子供にスマホを持たせるのは中学生になってからという考えらしく、頼んでみたが駄目だった。でもクラスでも何人かは持っているみたいだった、でも学校に持ってくるのは禁止みたいだ。
「マコっちゃん、今日さ、僕の家に遊びに来ない?」
と声をかけてきたのは山越健であった。
いつも俺は帰る時、基本は一人で帰っていた、なぜなら、遊ぼうやら、どこどこ一緒に行こうやら、お馴染みのメンバーから声がかかる為、学校が終わったらすばやく帰っていた。まあ家で家事を手伝っていたし、何よりめんどくさかったしな。
だが最近は暇な為、ゆっくり帰っている、その為、こうして今日は山越健から声がかかったのであった。
「まあ、家に行くのは良いけど、行ってなにやるの?」
俺も暇なので行く意思を示し、行ってなんかやることがあるのか?という態度で返事をする。
「うん、色々あるけど、とりあえず来てよ」
山越健はなんとか来てもらいたいのか、有無もいわさずの態度で言ってきた。
この山越健とは一緒に登下校はしているが一緒に遊んだり、家に行ったことはなかった。
前に一緒にトイレに行ってやってから妙に懐かれている感じがするな、最近やたら俺に話しかけてくるし。
「じゃあ、一旦帰ったら、すぐ行くよ」
俺がそう言ったら嬉しそうにして、じゃあ早く帰ろう、と言って俺をせかしながら一緒に家に帰った。
俺と山越健は同じマンションの為、帰ってからすぐ向かったって、数分で着く、だからそんなに急ぐ必要はないと思うのだが。
そうして俺は家に帰り、荷物を置いてすぐさま山越健の家に向かった。
目の前にあるインターホンを押して数秒後、ドアが開かれた。
「ああ、マコっちゃん、さあさあ、入ってよ」
「お邪魔します」
俺は一言そういうと、靴を脱いであがろうとしたが、その時、複数の近づいてくる足音が聞こえた。
「あら、真君、久しぶりね、家にくるの初めてじゃない」
「ええ、家に来たのは、初めてですね」
目の前に現われたのはエプロン姿の山越健の母親だった。何回か会ったことはあるが言葉を交わしたのは初めてだった。
でも、なんかあれだな、いまどきエプロンを着ける人っているんだな、そうしてエプロン姿を眺めていると、その後ろに隠れてこちらの様子を伺っている顔が二つあった。
「ほら、二人とも、ちゃんとあいさつしなさい!、天野さんのところの真君よ」
「山越ユリです、5歳です」
「山越美奈、4歳」
「天野真、12歳です」
俺は二人の姉妹に合わせるようにあいさつをしてあげた。姉であろうユリは、俺の半分ぐらいの身長しかない、妹の美奈は姉よりちょっと小さいぐらいだ。
二人ともおとなしい性格なのかずっとこっちを見ているだけだった。
「じゃあ、ほら早くこっちきてよ」
と山越健に促されて山越健の部屋であろう場所に向かった。
同じマンションの為か、だいたい間取りは俺の家の間取りとほとんど一緒みたいな感じだな。
その後、部屋に案内され、その部屋を見てみると山越健がどういう人物か見えてきた。
まず、本棚が置いてあり、その中には大量の電車関係の本が無数に入っていた、そして部屋の大半を占めるのは電車の模型や電車に関係する品々が大量に置かれていた。んーなんというか、ここまでくると逆にすごいな。
どうやら、今日、俺を呼んだのは、まあ簡単に言うと電車の話しをしたかったらしい、なんでも電車の話が出来る人は学校にはいないらしい、なぜに電車の話を俺に、と思ったが来てしまった以上しょうがない、電車の会話をしてやるか。
まあ、前世で俺は電車通勤していたこともあるし、よく電車は利用していた為、そこそこの会話は成り立ったと思う、電車の話が出来たのがよほど嬉しかったのか、途中で山越健は興奮したように俺に向かって言ってきた。
「マコっちゃん、電車の話が出来てすごい嬉しいよ、じゃあさ、これあげるよ」
山越健が俺に向かって差し出してきたのは電車の模型だった。
「いやいや、そんな高そうなもの、貰えないよ、だってそれ、健の大事な物じゃあないのか?」
俺はすかさず断った、いや、だって貰っても困るし、使い道もないし。
そう言うと、山越健は少し残念そうな顔をしたが、じゃあわかったと言って納得したみたいだった。
そうこう色々と話をしているとドアが開かれた。
「兄ちゃん、遊んで、ママが兄ちゃんに遊んでもらえって言ったからきた!」
「えー、今、兄ちゃんは忙しいから、駄目だよ」
そこには山越健の二人の妹がいた、なんか期待に満ちた顔でこっちを見ているな。
俺はこれ以上、電車の話をされるのがそろそろ苦痛に感じていた為、これ幸い、との思いで山越健に言った。
「おいおい、そんなこと、言うなよ、二人と遊んでやれよ、電車の話は、また今度ってことで」
そう言うと、山越健は自分の楽しみを邪魔されたくないのか、いつまでも二人の妹と遊ぶのを渋っていたが、なんとか説得して納得してもらった。
だって、電車の話はもういいって、マジで。
その後、山越健とその妹のユリ、美奈と俺を含めた4人でゲームや話しをしてやって相手をしてやった。
そして、そろそろ時間もいい感じになり俺は、じゃあ帰るよ、と言うと二人の姉妹が声をかけてきた。
「ねえ、マコ兄ちゃん、また遊びに来てくれる?」
「美奈もね、また来てほしい」
俺は、また遊んであげる、と約束し山越健の家を出て行った。
んー、なんか疲れたな、電車の話を聞かされたのもそうだし、あの姉妹と遊んだのもそうだし、でも子供っていろんな意味でやっぱり面白いな、大人が考えつかない言葉や態度をしてくるし、親は大変だろうな。
でも、子供の笑顔っていいな。
心地良い疲れを感じながら俺は家に向かって帰って行ったのであった。