クラブ活動
今、俺が通っている学校には、クラブ活動と委員会活動、と言うのがあるらしい。
そして、なんでもどちらかに所属しなければいけないと、担任の教師である、浜村先生に学校を通いだしてから数日後にそう言われた。
なんでも、色々と聞いてみると、クラブ活動が運動系から生活、暮らしに関した内容のもの、委員会活動は学校の為に、色々やるみたいな印象を受けた。
さてと、どうするかな、俺は、悩んだ。まず運動系はやらない、これは決定だろう、わざわざ運動はしたくない。と、なると、運動をしないでなおかつ楽なもの、うーん、色々あるみたいだが俺はなんか楽そうな感じがしたので、家庭クラブなるものに入ることにした。
「浜村先生!、俺、家庭クラブに入りたいです」
と担任に告げた。浜村敬子は驚いて、珍しいものを見るような感じで返した。
「えーと、本当に入るの?、まあ別にいいんだけど、男の子が入るのは初めてね」
その後、浜村先生が家庭クラブの内容を話してくれた。
まあ、簡単にいうと家事手伝いを学ぶようなものらしい、料理、裁縫、掃除、洗濯などなど、活動日は週2回から3回ぐらい、現在、所属している人数は二人で俺と同じクラスの女の子、だそうだ。
ちなみに家庭クラブは人気がなくほとんど新しく、人が入ってこないらしく、ずっと二人で活動していたらしい、男が入るというのは今まで一回もないらしい。
話しを聞いて、ますます俺は、このクラブだったら少人数だし、家事はどっちかっつたら得意だし、なんとなくだけど、楽できそうな予感がしたので迷わず入ることにした。
梅宮隆やその他の男からは、ひやかされたが、俺はまったく気にせず、むしろ、堂々と家庭クラブに入ると宣言してやった。
梅宮隆は自身が所属する、サッカークラブに俺を何回も誘っていたが、俺が堂々とした態度で家庭クラブに入ると言った為、しょうがねえな、という感じであきらめてくれたようだった。
そうして、なんだかんだで今、俺は、家庭科室に向かっていた。
今日も無事に授業を終え、俺が家庭クラブに入るって決めて、最初の活動日だ。
家庭科室と書かれた部屋のドアを開けると二人の女子が話している光景が目に入った。
「あー天野君、本当に来た!」
「えーと、本当に入るんだよね?」
と、こちらに向かって、なんか疑わしい顔を向けているのは俺と同じクラスの佐藤みどりと武田仁美であった。
「そりゃあ、来るよ、だって俺、家庭クラブに入ったから、まあ、そのよろしく」
俺は、軽いあいさつを笑顔でしてあげた。
佐藤みどりという人物は身長が俺の頭、一つ分ぐらい小さい、髪形はショートのストレート、顔はリスに似ているな。
もう一人の武田仁美という人物は身長は俺と同じ、髪型はおさげだな、顔は、うーん、なんか彫りが深い顔をしているな。
「でも、このクラブに男の子が入るなんて、珍しいね、だって女子にも人気がないのに」
「本当、だよね、ずーっとみどりちゃんと二人だったからね」
「とにかく、新しい人が入って、良かったわ」
二人は嬉しそうにこちらに向かって、話しかけてきていた。
そうして二人と話しながら、このクラブが普段、なにをやっているか色々聞いた。
まず、だいたい全体の7割ぐらいは料理に関する知識や実践、残りの3割は裁縫や家庭の家事に関すること、みたいな感じだ。
そうこう話していると突然ドアが開き、浜村先生が入ってきた。
「はい、もうみんな集まってますね!、天野君もちゃんといますね」
浜村先生は俺が来ていることを、確認するとホワイトボードに色々と書き出していった。
その内容を確認すると、今日の議題、と書かれ、その下には作ってみたい料理と書かれていた。
「えーと、ですね、今日は最初に次回作る、料理を決めたいと思います!」
と、浜村先生は俺たち三人に向かって言ってきた。
なんでも、家庭クラブの担当は、浜村先生らしくて、色々と教えてくれるみたいだ。
ちなみにだが浜村敬子先生は28歳、結婚はしていないらしい、でも彼氏はいるそうだ。女子に突っ込まれて無理やり吐かされていた光景を見て知った。
まあ最近は結婚する平均年齢は上がってきていると言うし、28歳で結婚していない、というのも珍しくはないと思う、まあ前世で結婚をしていなかった俺が結婚の話をするのはどうかと思うが。
「私、から揚げがいい!」
「みどりちゃん、から揚げ大好きだもんね、だったら私もから揚げでいいかな」
本当に子供はから揚げが好きだな、まあ俺も好きだけど、でも、学校で、から揚げなんて作れるのか?それに小学生に揚げ物を作らせていいのか?そんなことを思っていると、浜村先生が声を出した。
「はい、二人の意見はわかりました、では天野君はどうですか?、なんか作りたい料理はありますか?」
俺は、ふと考える、確かにから揚げは美味しいし、いいと思う、でも最近食べたしな、今、俺が無性に食べたいのは、関西風の焼きそばとお好み焼きだ!。
俺は前世で関西の生まれなので、幼少からたこ焼き、焼きそば、お好み焼きに慣れ親しんできた、その為、時々、無性に食べたくなるのだ。
でも、今、俺が住んでいる場所は関東、その為、本格的なたこ焼きや、焼きそば、お好み焼きを食べる店がない為、日々、食べたいという欲求を募らせていた。
一度、母親である、天野ゆみにねだって、作って貰ったが、やはり本場の味を知っている俺からしたら物足りなかった。
そのなかでも今、一番食べたいのは、お好み焼きだ、よし!ここは試しに言ってみるか!。
「えーと、お好み焼きを作ってみたいです」
浜村先生は俺が言った料理が以外だったのか一瞬、驚いたような顔をしたが、すぐ笑顔になり言葉を返してきた。
「お好み焼きとは、随分、以外ですね!、先生としては、から揚げとお好み焼き、どちらでもかまいませんが、ここは三人で多数決をして決めましょう」
その後、多数決でから揚げに決定した。
はあ、うん、悲しくないよ、言ってみただけだから、本当に。
そして浜村先生からから揚げの作り方の説明を聞き、誰がどの食材を持って来るか決めて、その日の家庭クラブの活動は終わった。
ちなみに、この浜村先生は生徒の自主性を大事にしてくれるみたいで、だいたい意見をいうと、ほとんど通るらしい、二人の女子が言うには今までほとんど反対されたことはないらしい。
なんというか良い先生だな、それにあんまり怒っている姿を見たことがない、叱る時も、自分の感情はほとんど出さず、なにが駄目で、なにが原因でと言うことを冷静に生徒に対して説いている。
前世の俺の小学生時代にもこういう先生がいたら、俺も多少、変わっていたかもしれない。そう思うほどいい先生だ。
クラブ活動、なんか懐かしいな、こういう子供達が集まって、なにか一緒にやるっていうのは子供にとっては必要なことなんだろうな、そんなことを考えながら家に向かって帰って行ったのであった。