善神
目標は一週間で二話投稿できればと思っております。よろしくお願いします。
突然ですが皆さんこう考えたことはないだろうか、人間死んだらどうなるのか?と色々諸説あると思うが一言で言うと謎だ。
そして今、目の前で起こった現象に軽く戸惑っていた。
「なんだここは、いきなり激しい頭痛にみまわれ死にそうになって記憶はあるが」
そこには何もなかった。例えるなら無、色もない、風景もないそして自身の身体もなかった。
「やっと意識がつながったか、ずいぶんかかったな、まあ久々だから長く感じただけかもしれんな」
そこには白い袈裟を着ている坊さんみたいな人が突っ立っていた。そして左手には卒塔婆のようなもの、右手には数を携えていた。
「あの~どちらさんですか?」
と思わず反射的に聞いてしまった。
「おう、そうだな自己紹介をしておこう、ワシは善神じゃ、お主達が昔っから崇めとる神とか仏みたいな存在じゃ」
その時やっぱり俺は死んだんだな、と再認識させられた、心のどっかで夢の中なんじゃないのかとか、また意識を失えば現実に戻ると思っていたがそうじゃなかったみたいだ。
「ということは私はどうなるのでしょうか?、それとここはいったい何なんでしょうか」
「まあまあ落ち着け、そんなに一気にことを焦ることはないじゃろ、順に一から説明してやる」
そして目の前の善神からおおよその説明を受けた。要約するとこういうことらしい。
まず人間は死ぬと宇宙の一部になって長い年月をかけて新たに生を受けるらしい、だが生きていたときにどう生きるかによって色々変わってくるそうだ、例えば生きている間に悪行を重ねれば人として生まれ変わることは出来なくなるらしい、そして善行を積んだ者は色々と融通してくれるらしい。
「じゃあ私はどういったことになるんでしょうか?思い出してみてもその、そんなに良いことはしてきてないように思うのですが?」
相手の様子をうかがうように聞いてみた、なにしろこういうのは初めての体験だし嘘を言ってもどうせばれるだろうと、腹をくくっていた。
「暫し待て、今お主の記憶を読み取る」
そうして善神は目をつぶって数珠をこちらに向けて動かなくなった。時間にしてどれくらいだろうか?、この空間の時間の流れがどういうふうなものなのかわからない為なんとも言えないが、体感的に一時間ぐらいたった時、善神が声を出した。
「ふう~終わったぞい、お主見かけによらず色々苦労してきているようだな、そしてそれにめげずに生きてきたようじゃな、感心、感心。
今見たところ普通の人よりは善行が多いな」
「え、そんなこと有り得ないと思いますが?、だって良いことってそんなに出来ないと思いますし」
思わずそう返してしまった。だが実際はその通りだと思う、すぐ咄嗟に困っている人に手を差し伸べられるだろうか、そんな人はごく一部だと思う、その時に出来なかったことを後々振り返り自己嫌悪になる、それの繰り返しだと思う。
ましてや俺はお世話にも立派な生き方はしてこなかったんだから。
「そうとも言いきれんよ、今お主が心の中で思っていることも含めてな」
言われてビクっとなった。そうかやっぱり心の中もわかるのか、そりゃあそうだよな、なんってたって相手は神様だもんな。
「そう堅くなるな、お主は他の人にない優しさを強く持っておる、つまりな、善行と言うのは小さいことの積み重ねなんじゃ、例えばそうだの~子供の時、親の手伝いやその他言われたことをやっておったじゃろ?」
「えっとそうですね、確かに子供の時は何も分からすやっていたと思います」
「その小さいことの積み重ねが結果になるんじゃ、それにお主は本当に優しい人間じゃ、思い出してみろ、お主が32、3歳の時、当時一緒に働いていた上司が大病を患っただろう」
言われて思い出したがそうだった。当時、働いていた会社の直属の上司だった。常に上司と二人で協力して行かなければ行けない職場で忙しさもあり、ある時上司が急に倒れてしまった。その上司とは妙に馬が合い公私ともにお世話になっていた。
そして倒れたと聞き病院に駆けつけるとベッドに横たわっていて動けない状態だった。
病名は髄膜炎だった。ウイルスが血液に入ってしまい抗体が機能しないそんなような病気だった。そして運が悪いことにあの未曽有の大災害の東日本大震災と重なってしまった。
その影響でガソリンスタンドは停止してしまい誰もお見舞い行けなくなってしまったのだった。それは家族も例外なく影響を受けてしまった。上司には奥さん、そしてお子さんもいた為、見舞いに行けないのはさぞ苦しかっただろう、上司が入院している病院は結構遠かった為、車じゃないと行けない距離だった。それじゃかわいそうだと思い当時あった有給休暇を全部使い、地震の影響が落ち着く間、毎日、片道二時間の距離をかけて見舞いに行ったことがあった。
「ですがそれは普段お世話になっていたし、何かできないかと考えた結果そうなっただけですし」
「じゃがな、その上司はその時のことを深く感謝しいてな、今でもずっとお主のことを気にかけていたようだ、つまりお主は本当に優しい人間なんじゃ」
改めてそう言われると目頭が熱くなる思いだった。こんな自分でも思ってくれる人がいるのかと。
「うん、うん、やっとお主は本来自分が持っている優しさがわかったようじゃな、よしそろそろ本題に入るぞ」
と善神は告げたのであった。