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人竜戦争と千年騎士 外伝  作者: むるふ
黄昏の園Ⅰ
2/7

メルヴィル編 下


 突竜がいるという山頂の祠に向かう道中、三人がキズナから聞いた話によると、ことのあらましはこうだった。


 メルヴィルのこの地方において、竜神と崇められている突竜へは、一週間に一度、町の商家や貴族達が持ち回りで食事を運ぶ取り決めになっている。


 今回順番となったのは、キズナが働いている商家。ここ数回は、山頂へ向かった者がケガをして帰ってくるなど、良くない噂があったことから、キズナを大切に思う主人は、とある人物をボディガードとして同行させ、送り出した。


 その人物とは、今は傭兵稼業を休止しているものの、国の内紛や、国家間の争いに数多く参加し、数多の功績を収めてきた元傭兵。そのひとりの有無で戦局が大きく変わると言われ、一騎当千とまで謳われた凄腕の男だった。


 その男はギルドには属しておらず、たまたまこの町に停留している話を聞きつけた商家の主人が、キズナと共に直接頼み込み、なんとか引き受けてもらったとのことだ。


「で、そのヴァルなんとかって人は、まだ竜と戦ってるんだね!」


「アルフレッドさん、なんとかではなくて、ヴァルテュールさんです。竜神様に勝てる、とまでは断言できませんが、あのお方も相当お強い方。途中で出会った魔獣も、ひとりで軽々と相手をされていましたから、すぐにやられるとは思えません。ですが…」


 キズナが最後にヴァルテュールを見てから、既に一時間以上が経過している。如何にヴァルテュールが強くとも、竜を相手に、単騎でこれほどの時間戦い続けられるとは、にわかには信じられないのだ。


「私、竜神様に襲われたときは、本当に怖くて…ヴァルテュールさんが間に入ってくれなければ、今頃…」


 少し前の光景を思い出したのか、ふるふると目を瞑りながら身震いするキズナ。


「ヴァルテュールさん、ですか。無事だといいのですが…」


 話しているうちに、徐々に山頂が見えてくる。


 祠の入口と見られる山の切り出された穴の前に、一頭の竜がいた。


「あれが竜神さま?おっきいの…」


「竜神様が、祠から出てきていましゅ!」


 キズナが最後に見たとき、突竜はまだ祠の中にいた。キズナを逃がすため、そして竜を山から降ろさないため、ヴァルテュールは祠の中で戦っていたはずだ。


「そんな、ヴァルテュールさん…」


 祠の中で倒れ、倒れているヴァルテュールの姿が、キズナの脳裏をよぎった。


「こっちだ、って言ってんだろ?」


 途端、キュオォォォ、という突竜の凄まじく甲高い雄叫びが辺りに響いた。


 突竜の影に隠れていた男が、竜の足元をスライディングしながら切りつけ、一行の前に姿を現した。


「ヴァルテュールさん!ご無事だったのですね!」


「んん?キズナちゃんじゃないか、なんだ、戻ってきちまったのかい。命懸けで逃がしたのに、それでも戻ってくるなんて、優しい子でおっさん嬉しいぜー?」


 身の丈を越える大剣を軽々と振り回し、突竜と対峙しながらも、背後からのキズナの声に反応できる余裕が、この男にはあるようだ。


 長身で体格がよく、カジュアルな服装をしているが、時折ちらりと見える左目の大きな剣傷が、戦場を駆け抜けた勇姿であることを物語っている。


「ヒカリちゃん、アルちゃん、援護に入るですよ!」


「おまかせなの!」「いっくよー!」


 ヴィオラの号令の元、ヒカリは左から、アルフレッドは右から、一斉に飛び出した。


 眼前には、水晶のように透き通った角と頭部、そして翼を持つ竜。竜としては小柄な方だが、それでも体長は、翼を閉じた時でさえ二階建ての一軒家を超えそうなほどだ。


(どんな攻撃をしてくるか、予想ができないのです。ここは、手堅くいくです)


 ヴィオラは杖を掲げ、杖から体に取り込まれていくマナの流れに集中した。


「水の精霊よ、刃より守りし水を纏わせたまえ…『アクエリアス・ウォール』、続けていくです、火の精霊よ、敵を屠りし炎の加護を与えたまえ…『エクスプロード・ファング』」


「ありがとうなの、ヴィオラちゃん!」


 ヴィオラの支援法術によって、ヴァルテュールを含めた三人に、水のマナによる全方位防御結界と、火のマナによる攻撃倍加の効果が付加される。


「今の法術、見たことないです。この三人はいったい…?」


 目を丸くするキズナは、このあと立て続けに信じられない光景を目撃することになった。


 左から駆けていたヒカリに、突竜が鋭利な角で攻撃しようとした瞬間、ヒカリは寸前で跳躍して躱し、更に翼による追撃を、空中にいながらにして身をよじって回転することで避けた。


「ばーーーん!」


 そしてがら空きになった突竜の翼の内側、水晶で覆われていない生身の部分に、ひと振りの細身の西洋剣を突き刺したのだった。


 ヴィオラの支援法術も相まって、痛みに奇声を上げて悶えながら、突竜が仰け反った。


「ここは、外せない!」


 ドン、と重い銃声が響くと、アルフレッドの放った銃弾は突竜の瞳に直撃する。まるで、ヒカリがそうすることを分かっていたようなタイミング、そして正確さだ。


「土の精霊よ、万物を捕えし呪縛と変化したまえ…『アース・バインド』」


 アルフレッドの銃弾により、反対側に仰け反ろうという瞬間、ヴィオラの法術によって突竜の周りの地面が陥没し、頭上から大量の土石が降り注いだ。


 足元を完全に埋められ、身動きがとれなくなった突竜を見上げながら、一瞬にして起こった出来事に楽しそうに笑うのは、ヴァルテュールだった。


「なんだなんだ、可愛い嬢ちゃんと坊主が増えたってか?こりゃあおっさんも、本気出さないとなあ!」


 ヴァルテュールは、その大剣を振りかぶって、思い切り地面に叩き込んだ。


「うわ、あわわわ」


 まるで地震のような揺れ。離れた場所にいるキズナでさえ、立っているのもやっとなほどだった。


「いくぜ、『空堕とし』!」


 そこから一気に、大剣を空へ向かって振り切る。


 ただの大剣による物理攻撃ではない。練ったマナを大剣に乗せ、更に飛ばしながら切り上げることで、切断力を増しただけではなく、凄まじい射程距離を生み出している。『空堕とし』の名の通り、そのマナは空に向かって高く伸びていった。


 大抵のものは真っ二つになるのではないかと思う程の攻撃。しかし、突竜は角の水晶を欠けさせただけで、ダメージは負っているものの、まだ戦えそうだ。


「おお、すげえな。さすが竜神さまだぜー?わっはっは!」


(あれほどのマナを放出して、まだこんなにも余裕があるですか…凄まじいですね)


 そして、突竜の堅さもまた、驚くよりほかない。


「わあ、おじちゃんすごいの!わたしも、負けないの!」


(ここはヒカリちゃんに、お任せするです…!)


 ヒカリが走りながら手に持つ剣にぼそぼそと何かを語りかけると、剣は徐々に発光を始め、数秒後には眩い光に包まれた。


「ヒカリ、援護するよ!」


 アルフレッドは持っていたスナイパーライフルを二丁拳銃に持ち替えると、突竜の注意をヒカリへ向けさせないよう、弾幕を張った。


「風の精霊よ、礫から、かの者を守りたまえ…『ワールウィンド・フィールド』」


 突竜へ一直線に駆けるヒカリの周りに、ヴィオラの法術によって薄緑色の膜が張られると、アルフレッドが連射した銃弾がヒカリに当たる直前で、まるで意志を持っているかのように、膜の外周をなぞるように避けていった。


「これがわたしの、とっておき、なの!」


 昼間だというのに、前も見えないくらいの閃光が辺りを包んでいた。


「ヒカリさん、竜神様を、助けてあげて!」


「…!?」


 どれほどの攻撃をもってしても、通ることのなかった一撃が、通った。


 光が弾け、収まったとき、神々しいまでの突竜の姿は、変わり果てていた。


「あぶ、なかったの…」


「ヒカリちゃん、よく頑張ったのです」


 攻撃が突竜に当たる刹那、キズナの声を聞いたヒカリは、頭部に向かっていた剣先を強引に曲げた。結果、その剣先は頭部に当たることなく、突竜の翼を切り落とすに留まった。


「竜神さま、ごめんなさいなの」


 最後の瞬間、キズナの声を聞かなければ、ヒカリの攻撃は頭部に直撃していた。他の竜とは違い、水晶化した頭部は桁外れの防御力を誇るが、それでもなお、あの攻撃は防ぎきれなかった可能性もある。ヒカリは申し訳なさそうに謝った。


『良いのだ。人間よ。気にすることではない』


 が、周囲に鳴り響くような声が、ヒカリを慰めたのだった。


「竜神ちゃま!?」


 戦闘が始まる前から噛み噛みだったキズナが、驚きとともにそう発したことで、場の空気は自然と緩やかなものとなる。


『少女よ、そなたも、恐ろしい思いをしたことだろう。正気を失っていたとはいえ、我の所業、心から謝罪しよう、すまなかった』


「い、いえ、私はそんな。でも竜神様、正気を失っていたとは、いったい?」


(時を重ねた竜は、人の言葉も理解できるという話もあったですが、本当だったのですね)


(意外と、可愛らしい声なの)


(うーん、女の子なのかな?)


 ひそひそと話す三人を気に留めることなく、突竜は倒れ込んだまま、その視線をキズナへ向けた。


『ふむ、人間であるそなたに分からぬのも無理はない。いつからであったか、我が正気を保っていたのは、そなたが三度ほど前に来た時までだ。それ以降、我は徐々に正気を失っていった』


「三度、というと、半年ほど前でしょうか?」


『人間の時間の感覚は、我には分からぬ。そなたが言うのなら、そうなのであろう。特にここ最近は、どこか遠くで強大な力の蜂起があったようで、正気を保つのが難しくなっていた。それに呼応し、獣達もまた、闇に取り付かれている』


「強大な力の蜂起、なのですか」


 ヴィオラは手を顎に当て、考え込む。


「ヴィオラちゃん、なにか心当たりがあるの?」


「いえ、気のせいでしょう。すみません、話の腰を折ってしまったのです」


『気にせずとも良い。この正気を失っていく感覚は、千年前にも存在した。あの時、我はまだ幼竜だったため、まだ正気を保っていられたが、正竜となっている今では、この有様だ。しかし、大いなる光のおかげで、我は正気を取り戻した、そこの幼き人間よ、そなたにも感謝しよう』


「えへへ、褒められたの」


 真っ直ぐな感謝の言葉に、照れたヒカリは自分の頭を摩りながらそう答えた。


『そちらの人間の男よ、そなたも大儀であった。思えばそなたは、最初から我が正気でないことをわかっていたな。後ろの三人が居たとはいえ、我を屠ることなく耐えたその胆力、賞賛する』


「なんのことかわからねえが、礼なら受け取っておくぜー?」


 大剣を肩に担ぎながら、相変わらず飄々とした態度でヴァルテュールはそう答える。


『ふむ…我も、いよいよ人との交わりを避けられぬ頃合。この姿では、我を見る人間もまた、困惑するに違いない。…キズナよ』


「は、はい!」


 崇め奉る神の呼びかけに、自然とキズナの背筋が伸びる。


『しばらく、事情を知っているそなた以外、山への立ち入りを禁ずる。よいな?』


 しかし、その言葉に自信を持って頷けるわけがない。キズナは言わば、大きい商家とはいえ、ただの使用人である。そんな少女に、神へのお供えを止める権限などあるはずがない。


「うぅぅ…竜神様、私の言葉が、町の皆さんに通じるとは到底思えません…自信がないです」


『ふむ、そうか。それならば、やむを得まい』


 そう言うと一瞬にして突竜の姿が消え、立っていたのはひとりの少女。


 翼を切り落とされたせいか、肩に傷を負っているようだが、腕はしっかりとある。一瞬そこにいた全員が、まさか、と眼を見張らせたが、腕が無いなんてことはなく、どこからともなく安堵の息が漏れた。


 しかし、そんなことは気にしない竜神は、人間の姿になった自分を、腕を上げたり背中を覗き込んだりして見回した。


「ふむ、我が人間の姿になると、このようになるのか。案外小さいではないか、特に人間の男、お前とは大きさが違いすぎて話しにくいな」


「これは意外だぜ。しっかし、周りには女子ばっかで、おっさんなんだか孤児院でもやっている気分になってきたんだぜー?」


 うん、それも悪くないかもしれん、と何故か得心したような様子のヴァルテュール。


 本当の意味で変わり果てた姿の突竜を見て、わなわなと打ち震えていたのは、キズナを除いた三人の女子だった。


「かわいいのです!」

「かわいいの!」

「かわいいんだよ!」


 青みがかった白い髪、透き通るような白い肌に、神秘的にすら感じる水晶のように透き通った瞳。


 そして、何よりも、小っさい!


「ふむ、それは、褒め言葉として受け取っておこう。さあキズナ、我とともに町に降りるのだ。そして人間に、我より直接伝えようではないか」


「え、えええ…竜神様、そのお姿で、でしょうか…?」


「ふむ、なにを言っているのだ。初めからそうと言っているだろう。さあ、行くぞキズナ」


「私、なおさら自信がなくなったんですが…」


「キズナちゃん、なるようになるのですよ」


 キズナが町に戻り、自分とほとんど同じ年くらいの少女を差して「これが竜神様です」と周りに言って信じてもらえるとは、ヴィオラにも到底思えなかったが、肩を叩き、そう励ました。




 山を降りた五人と人間の姿をした竜は、無事ギルドに依頼の達成を報告すると、先日の食堂で卓を囲んでいた。


 少女の姿をした竜神の説明は、後日公の場でキズナに説明してもらうこととし、一連の騒動は山頂にはびこる強力な魔獣による仕業だったと報告した。ギルド側も、キズナを証人として報告を受理し、依頼は完了となった。


 途中、通り過ぎる店を見るたびに、あれはなんなのだ、あの食べ物はどんな味がするのだ、と厳かな口調ながらもはしゃぐ竜神に、キズナは気疲れで疲労困憊の様子だったが。


「とりあえず、追加報酬ももらえたことですので、ここはぱあっとやるです!」


「「「「「かんぱーい!」」」」」「ん、なんなのだ、それは、我にもやらせろ!」


 陽気な雰囲気で杯をカラン、と鳴らすのを見て、少女が身を乗り出して抗議する。


「竜神様、若干、めんどくさいのです…」


「まあまあ、ヴィオラちゃん、ここは堪えてなの」


 ヴィオラをなだめるヒカリの横では、一人だけ酒を飲み、この一杯のために生きてるぜー、と気持ちよさそうなヴァルテュール。


「しかし、三人とも強いんだぜー?おっさん、驚いて腰を抜かしそうだぜー?」


「本当に驚きました。お三方とも、ヴァルテュールさんと同じくらいお強いなんて。私、憧れます!」


 本当に腰痛持ちなのか、時折、あいたたた、と腰を摩るヴァルテュールの言葉に、キズナは目を輝かせた。


「時にアル坊、その拳銃だのライフルだのは、やっぱりバサーストのもんか?」


 バサーストとは、ここメルヴィルよりも遥か南にある国のことで、鉱山都市が多く、武器や防具の生産が盛んな国だ。特に銃火器などは、ほとんどバサーストでしか手に入れることができない。


「ん?もぐもぐもぐ、おっちゃんほふははっはへ!ほくはははーふほふっふぃんはほ!」


「アルちゃん、食べてから話すです。はしたないのですよ。ちなみに、おっちゃんよく分かったね、ぼくはバサーストの出身だよ、と言ってるです」


 こくこくこく!


「お、おお。ヴィオラちゃんも、よくわかるんだぜ? まあ、気になったんで聞いてみただけなんだ、気にしないで欲しいんだぜー?」


「ちなみに、私はアクセルハイバーグ出身なのです」


「ハンバーグみたいで、美味しそうなの」


 アクセルハイバーグって、王都がベルセラントの?と訪ねたヴァルテュールの言葉は、ヒカリによって遮られていた。


(まあ、いいか。いずれ、わかるだろう)


 そう思い直し、酒を煽ったヴァルテュールは「マスター、もう一杯くれ!」と上機嫌で追加注文した。


「ふむ、ハンバーグとな。それは美味いのか、どうなんだ、ヴィオラよ」


「え、私、ハンバーグなんて言ってないのです…。ちなみにハンバーグは、今アルちゃんが食べているです。ミンチにした肉を成形して、焼き目をつけた食べ物なのです。ソースも色々あるですが、デミグラスなんかがメジャーなのですよ」


 ヴィオラの話に興味を持ったのか、もともと礼儀などは頭にない竜である少女は、対面に座るアルフレッドの皿から、ひょい、とハンバーグを手づかみし、その口に放り込んだ。


「あ、ぼくのはんばーぐ!?」


「ふむ…美味だ!我もこれをもらおうか」


「ぼくのはんばーぐなのにーーー!」


(あああ…まさか竜神様もこんなに食べるなんて、意外なのです!お給料が、エンゲル係数が、ハンパないのですー!)


 ヴィオラの心の叫びは、誰にも届かない。


 それからは、食べ物の恨み、と竜神に詰め寄るアルフレッドを除き、談笑が続いた。


「ところで、みなさんはこれからどのように?」


 ふと、気になったのですが、と前置きして、キズナがそう問いかけた。


「おっさんは、もともとここには立ち寄っただけだからなー? まあ、しばらくは居るが、その内どっかに行く予定だぜー?」


 男なら、明日のことは明日考えるもんよ!と豪快に笑い飛ばす。


「わたしたちはどうするの、ヴィオラちゃん?」


「そうですね…メルヴィルでの仕事は大体終わったですから、また次の場所に行くです。明日の朝、この町を立つですよ」


「また新しい町だね!楽しみだなあ!」


「そうか、皆、道中気をつけていくと良い。またここに寄ることがあったら、顔を出せ」


「皆さん、今回は本当にありがとうございました。このご恩は忘れません。また、どこかでお会いしましょう」


 その後もしばらく交流が続き、会計の際ヴィオラが「ああ、お金がないのです」と嘆くのを、乾いた笑いで聞かなかったことにして、その夜は解散となった。




 翌日、キズナが三人を訪ねようと、泊まっていたはずの宿に立ち寄った時には、三人は既に旅立ったあとだった。


 ひとつ聞き忘れたことがあったので、キズナはギルドに寄り、受付嬢に確認する。


「ああ、この間の三人ですか…私も調べて驚きました。彼女たちはなんと、このメルヴィルでギルド登録してから、まだ一ヶ月しか経っていないんです。それなのに、銀髪の少女はBランク、あとの二人はAランクですよ?おまけに、パーティーランクはAAなんです。もうわたし、驚いて心臓飛び出すかと思いましたよ」


「そうでしたか…それで、あの誰も受けなかった依頼を受けることができたんですね。ちなみに、パーティーの名前って、どんな名前でしたか?」


「ああ、パーティー名ですね? ええっと『黄昏の園』と書いて、エデンと読むらしいです。変わった名前ですよね」


「黄昏の園…そうですか、ありがとうございました」


 ギルドを後にしたキズナは、外で待機していた一人の少女に問いかけた。


「竜神様、しばらくこの町で暮らすなら、人間らしい名前も必要です。何かいい名前、ありますか?」


「ふむ、これといって特にないな。キズナよ、そなたが決めるが良い」


「ふふ、そう言うと思ってました。では竜神様、今日からあなた様を、こう呼ぶことにします…」


 …エデン様。



 人竜戦争と千年騎士 外伝  黄昏の園Ⅰ 完

 

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