第9話…忘れていた事
ん…、
つっ…いてて…、
とりあえず生きてるか…、
まぁ、良かった…、
…あいつらどこへいったんだ…?
俺の服にはあいつらの血でべちゃべちゃに汚れているのに…、
奴等の姿はまるでない…、
なんだってんだ…、
とりあえず俺はその場から動こうと立ち上がった、
一日に二回も気絶していた俺は、酷い目眩に襲われ、まともに歩くことも難しかった、
辺りはまた不気味な静寂に包まれていた…、
しかしこの静寂の中でも、あの異形の人間は息を潜めている…、
その耐え難い恐怖に俺は途方もなく震えていた…、
「…あの鐘…」
俺はふとあることを考えた…、
あの鐘の音は、この怪物と何か関係があるのだろうか…?
ないはずはない…、
しかしどのような関係があるのか…、
それが分からない…、
俺はその鐘を見上げた、
今は鐘の音の鳴る気配はない…、
鐘の鳴らないこの街はまた、虫の声も聞こえない、
完全な無音の間と化していた…、
まるで辺りは空気も何もない真空なのではないかと疑うほどの静けさ、
俺には恐怖でしかないそれは、この街の住人には一体何なのだろうか…?
何なのだろうか…?
何なのだろう…?
何なのだ…?
ん?
俺の目的は何だ?
恐怖に怯えにここに来たのか?
違う、俺は妹を捜しに来たんだ…、
妹を…灯を捜しに…、
この奇妙な出来事の連続で俺はすっかり目的を忘れていた…、
いや、忘れてしまうほど今の状況は異常なのだ…、
俺はもう一度鐘を睨んだ、
彼処に灯はいる…、
理由は不明だが、鐘の音を目指して歩いていた灯は彼処にたどり着くはずだ、
そうに違いない…、
いや、別に違っていたらまた別の場所を捜せば良い…、
ただ今すぐ行かないと、早く灯を見つけておかなくば灯が…、
灯が…どうなる…?
そうだ…、
死ぬ…、
死ぬ!?
だ…だめだ、死ぬなんて!
待て灯!死ぬな!
俺は灯が奴等に殺される可能性があることに気がつくとふっと脅威的な不安に襲われた、
だめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだ!
死んじゃだめだ灯!