第18話…手術室の闘い
鐘の音が終わると薬品の匂いの中に強い血の匂いが混じった…、
まずいと思い後ろを振り向く、
まだ何も変わっていない…。
いや…、
さっきまでぺったりと手術台にくっついていたはずの青いシーツが盛り上がっている、
俺はごくりと行きをのみ、そのシーツを思いっきり剥がした…。
「グガァッ!」
半ば予想通りであったがあの怪物が中から俺の首根っこに噛みついてきた。
「ぐっ…」
俺はそれの頭に包丁を突き刺し、振りほどいた。
俺の顔に鮮血がかかる…。
その怪物は俺が今まで見たなかでも一番グロテスクな姿をしていた。
…まさに手術中の患者。
腹はぱっくりと割れ、血がだらだらと流れ、内臓が露出していた…。
俺は胃酸が逆流するのを抑え、敵に包丁を向けた…。
「…ウゥ…、シニタクナイ…、タスケテ…」
怪物はうわごとのように淡々とそう言っている…、
俺は一歩後ろに下がった…、
…!?
何かにぶつかる…。
「コマッタ…、コマッタ…、」
それは医者の姿をした怪物だった。
「臓器…ナイ…、移植…デキナイ…」
この医者の怪物はあの腹の割れた怪物の専属医だったのだろうか…?
「移植…デキナイ…、コマッタ…、コマッタ…」首を曲げ、頭を抱えながらそう繰り返していた。
「コマッタ…、コマッタ…」
しかし怪物はそう言いながらもよたよたと俺に近づいてきていた…。
「コマッタ…、ドウシヨウ…」
怪物はふと顔をあげた。
俺とそれの目が会う。
身構える俺…、
見つめるそれ…。
目があってすぐ、怪物が少しニタァと微笑んだ気がした…。
「…?」
…まさか?
「臓器…、アッタ」
やっぱりか…、
こいつ俺から内臓えぐりとる気だ…。
俺は更に低く身構える。
一人は死から逃れようともがき、分けも分からず俺を襲い、
一人はそれを助けようと俺を襲う…。
すなわち死ぬべきは俺か…?
あいにく断るね。
俺はしばらくその場に立ち止まる。ぎりぎりまで近づいてきた所を刺し、致命的を狙えば殺すことはともかく時間は稼げるはずだ…。
自分の立ち位置を確認する…。
気が付くと扉からは離れていた…。
いや、もしかしたらあの扉は固く閉ざされてしまっているかもしれない…。
だとしたらあの鐘が再び鳴るまで闘い続けるしかない…。
いや、だったらその時こそ殺してやれば良い…。
…よし、もう少しだ、
もう少し近づいて来たら二人まとめて切り裂いてやる…。
「ウゥ…シニタクナイ」
「臓器…臓器…」
よし、いいぞ、もっと近くだ…、あと数10cmで良い…、
もっと近づけ…。
「「ヌァァァ!」」
今だ!
俺は右手ごと包丁を振り上げ二人の怪物を切り払った…。
予想通り大きくよろめいた…。
その間を掻い潜って扉のドアノブを掴んだ…。
…開け!
ガチャッガチャガチャ!
開かないっ!
俺は一つ舌打ちをする。
その時、
「ぐぁぁっ!」
背中に激痛が走る。
何かに深く切りつけられたような痛み…。
俺は身体中の力が抜けるような錯覚に陥りその場に倒れ込んだ…。
「臓器…トレル…」
くそ…、
何とかしようにも体が動かない…。
うぅ…、
ダメだ…、
意識が…、
薄れる感じがする…、
ここに来て何回も味わったこの感覚…、
次はちゃんと起きれるかな…?
コーン、コーン…