第11話…包丁
その小さな家の中は、俺の想像通りの薄暗かったが特に蜘蛛の巣がかかっているわけでもなく、比較的綺麗に整頓されていた。
「誰か住んでるのか?」
人が住んでいないにしてはホコリが少ない、
香水か消臭剤のような香りが漂っているし、人気は無いがどうしても無人とは思えなかった。
俺はとりあえず電気か何か、とにかく明かりになるものを探した…、
辺りが暗く、前方が確認出来なかったからだ…、
何かないだろうか…、
そう考えながら俺は辺りにある物を荒らした、
タンスの中、
クローゼットの中、
田舎臭い押し入れの中など、とにかく扉という扉を開けた、
しかし光となるものは何もなかった、
暗闇の中での静寂…、
分かりやすいホラーが、再び俺を襲った…、
「くそ…」
俺は頭を掻いた、
仕方ない…と俺は、とにかく武器となりゆる物を手に入れ、早くここを出ようと考えた。
一番殺傷力の強いであろう物…、
それでいて日本の一般家庭にある物…、
となると前述の通り包丁辺りが妥当だろう…、
俺はさっそく包丁がある確率が高い台所に行こうと思い、半ば手探りで歩き出した…、
暗闇の中を歩いているうちに、すぐにそれは見つかった。
これまた綺麗に整頓されていて、見習わなくてはならないなと思わせる程だった…。
水道下の包丁収納棚を開けようと、俺はしゃがみこむ…、
いてっ…!
どうやら緊張で筋肉が濃縮しガチガチに固まっていたようだ…、
俺は無理矢理体を動かし、包丁収納棚を開けた…、
中には長さの違ういくつかの包丁があり、俺はどれが一番使い勝手が良いかを考えた…、
「これかな…」
俺は一番刃渡りの長い包丁を手に取った…。
「ドロボウ…!」
っ!!!
俺は後ろを見た、
予想したことでもあったが、そこにはまた地みどろの女が立っていた、
「カエセ…」
どうやら包丁を盗られたことに腹をたてているらしい…、
「分かった!返す!だから来るなっ!」
俺は包丁を落とした…、
「カエセ…、シネ…」
どうやら話を聞く気はないようだ、
俺は落とした包丁をひろいあげ、それを構えた、
「来るなっ!」
俺は相手を威嚇した、
「シネ…、カエセ…」
そんなことはお構い無しにそれは近寄ってくる、
「カエセ…、」
仕方ない、俺は包丁を前に持ち、それに突撃した、
包丁の刃はそれの胸を直撃し、嫌な感覚が俺の手に伝わってきた…。
「グ…アァ…、カエセ…」
その地みどろの女は胸を刺されたにもかかわらず、少しよろめいただけでまた俺に向かって歩き出した、
だが俺はそんなことは構わずその家をでる、
…はずだった…。
「…っ!」
扉が開かない…、
その家の玄関が開かないのだ…、
「開け…空いてくれよ」
ガチャガチャ…、
「シネ…、コロシテヤル…」
後ろからはまだ奴の声が響いている…、
「シネ…シネ…シネ…シネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネ!」
女は狂ったように俺に飛びかかってきた…、
「うあぁぁぁ!」
その時また鐘の音が鳴った…、
コーン…コーン…、