第10話…街の名
俺は鐘に向かって歩いていた…、
歩きというよりもはや歩き、むしろ走っている状態に近い…、
俺はとにかく灯を早く救い出さなくてはならない、その一心で進んでいた…、
早く…、
一刻も早く…、
そう思っているが、鐘は一向に近づいてくれないし、第一時計がなく、早くしようにもどのくらいの時間が経過しているのかも分からない…、
それでも俺は鐘に向かって進む他になにもできなかった…、
第一本当にここは何処なんだ?
仮にも街中だ、地名くらいあっても良いだろう…、
そう思い俺は、辺りを見回し、ここが何処なのか分かるモノを探し始めた、
コンビニエンスストア、
ガソリンスタンド、
民家、
アパート…、
何か書いていないかと探し回った…、
すると一つの商店に、その答えはあった…、
「スーパー水音街店」
そうかかれた看板…、
「みずおと…まち…?」
何処かで聞いたことのある名だった…、
それほど重要な事ではないことでだが…、
何処かで誰かからその名を聞いていたのだ…、
あぁ…何だっけなぁ…、
俺は思い出せずに頭を抱えた…、
何だ…、
水音街って何だ…、
それが分かれば少しは灯のことも…、
水音街…、
水音…、
水…、
みず…、
だめだ分からない…!
俺は頭をガリガリと掻きむしった…、
くそ…、
俺はその場で頭を伏せた…、
だめな男だ…俺って…、
灯が変になっても何もしてやれず…、
家からいなくなる直前も何も気付かず…、
森のなかで怯えて車を壊し…、
あげくのはて殺されかけ…、
街の名前を知っても何も分かりゃしない…、
なにやってんだよ…、
まったく…、
俺はため息を一つついた…、
ん…、
俺は奴らに殺されかけても対処できない…、
何故だ…、
…そうだ、俺は何も武器を持っていない…、
丸腰じゃ危険すぎる…、
俺はすっと立ち上がると近くの民家に近付いた、
普通の家庭なら包丁くらいはあるだろう…、
そう考えたのだ…、
俺はドアノブに手をかけた…、
鍵は開いている、
俺はゆっくりドアを開けた…、
ギィーッという耳に不快な音と共にドアが開き、薄暗い玄関が顔を見せた、
俺はフゥと息をはき、民家の中へ入っていった…、
コーン…コーン…、