おーるがーるびーあぷりんせす
男なんていらないし恋人がいるやつは全員脳みそがお花畑なんでしょなんて自分そういうの興味ないし、そんなことするくらいだったらスクワットで頭を上下させて飛んできた恋愛種全部根付く前に捨ててやる。みたいな態度をとってたくせにカオリはしれっと彼氏をつくってた。
は? っておもった。怒りよりも呆れと困惑が先に来た。だってカオリは一重で目が小さくて背が高くて胸もAAカップで無愛想で男の前で愛想笑いするような女は全員バカなんだと信じてるような女だったから。
「キャバ嬢ならまだしもねーお金もらえるならわかるけど」なんてうそぶいてたけど鏡それを盗み聞きしてしまったらしい男子生徒が動物が肛門をなんの羞恥もなくみせびらかしているのを見てしまったような笑いをしていた。
そんなカオリに彼氏ができた? は?
「え? どんな人? わたしが知ってる? てかいつから?」
「えー、あんまり言えないんだけど、いちおう年上だから」
ま、あんたにはまだわかんない世界だよ。
っていう言外のセリフがきこえてきて頭の血管の中にトゲが混ざりこんだような苛立ちがふつふつでてきたけどおさえる。
「バイト先の人?」
「うーんまあいちおう」
カオリの頭の中では、スーパーのレジ打ちをしてるだけのくせに親からの仕送りで遊んでる私を見下してるからそこ恋愛なんてはじめてしまったらその優越感が相乗倍になっていよいよ私の生活なんてありんこが砂糖を見つけてときたまおおはしゃぎしているのにひとしくなっているだろう。
ばれてるよ。全部。あんた鈍いし鈍いことにも気づいてないしだからかわいい女の子の笑顔をバカにしてるし。
「えーいいなーすごーい」
「別に、普通だよ」
とかなんとかいいつつにんまりと口の端が広がっているのがわかった。うぜー。
ピピピとカオリのスマホがなって、カオリはすぐさまロックを解除してなにやら返信していた。
「あ、彼氏?」
「ん、うん」
「いいなー」
はあ? こいつに彼氏? しかも年上?
なんでこの顔性格ともどもブスの権化たるこいつが私の隣でお姫様気分になってるの。
あーーーーイライラする。
ぶっとぶ寸前のヤカンの中身くらいイライラする。
授業がはじまるチャイムがなって、カオリがスマホを机の上に置いた。
カオリはものほしそうな顔をしていたけど私は死んでもこれから口を開かないぞ。
もう一度カオリのスマホが光った。
人世代前の顔文字が踊っていた。
それをみて私は、ヤカンが覚めるのを感じた。