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決定
「……聖、音がおかしいぞ」
「……安定してないことは自覚してます」
入学式の曲を練習する合奏。
その基礎練習の段階で指摘を受け、聖は顔をしかめた。
個人練習の時点で、自分の不調には気付いていた。
息が入っていないのか、カスーという気の抜けた音が混じる音色。高い音を吹いた訳ではないのに、ロングトーン(同じ音を長く吹く)をしようとしても崩れて音を作れないアンブッシァ(唇の形)。
……今日の練習はできない。そう思えるほど。
「苛つく……」
何をやっても思い通りにいかない自分の体に、イライラが募る。
すると、紫藤が苦笑いで首をかしげた。
「聖、精神的に参ってるな」
「……へ?」
「お前、メンタル弱すぎだし。……今日は無理なら聞いてろよ。ってか、前来て指導してもいいし。俺は別の仕事するから」
「…………おいおい」