部員七人
銀木農業高等学校吹奏楽部は現在、七人の部員で構成されている。
部長は、本編主人公でもある剣崎聖。
農業科二年。担当楽器はトロンボーン。びょんびょん伸びるラッパである。
小学校時はテナーサックス。去年のアンサンブルコンテストはシロフォンで出場。他、小物打楽器やホルンを持ち代えるなど、わりと流浪している。
二年後期から部長になったが、いかんせんメンタルが弱い。強い女性陣にやや尻込みしつつ部を率いている。
目指すは、県大会出場。
副部長の一人、天宮志乃は食品科一年。
担当楽器はユーフォニウム。吹奏楽を知らない人に一番説明しにくい楽器である。とりあえず、小さいチューバとだけ言っておく。
中学校はトロンボーン。去年のアンサンブルコンテストはティンパニ他、小物打楽器で出場するなど、聖に負けず劣らず流浪している。
聖に比べればメンタルが強く、中学でも幹部を経験してきた為かしっかりしている。
ちなみに現在、金管楽器はこの二人しかいない。
聖と同じ農業科二年の月島茉里は部の癒しである。
担当楽器はクラリネット。主旋律が多い黒い縦笛だ。
現在、この部で県大会常連校出身で、さらにその上の大会を経験しているのは聖と茉里、それから沙輝だ。
基本的に穏やかに笑っているので、メンタルがやられた聖の避難場所になっていたりする。よき気がつく、吹奏楽部の母だ。
もう一人、聖と同じクラスに所属しているのは黒河厚央。
担当楽器はクラリネット。音の高いパートを担当することが多い。
明るくマイペース。ただしかなりの天然で、不思議君認定をされている。動植物、果ては無機物にまで話しかけ、宇宙人と交信する。
……楽しい人だ。
木管楽器のセクションリーダーをつとめるのは食品科二年の長門清美。この吹奏楽部は人数が少ないため、パートリーダーではなくセクションリーダーを置いている。
清美の担当楽器はフルート。銀色のキラキラした横笛である。
明るくマイペース。よく厚央とつるんで悪戯を仕掛けてくる。トロンボーンのベルにぬいぐるみを詰めるのは止めていただきたい。
可愛いものが好きで手先が器用。料理上手と女子力高めだが、たまの毒舌がキツイ。
一年生は現在、志乃ともう一人しかおらず、それが生活科一年生の秋津穂香だ。
担当楽器はアルトサックス。ポップスやジャズで活躍するカッコイイ楽器である。
音が綺麗で技術も高く、黒髪ストレートの美人だが、所謂“残念な美人”だ。
底抜けに明るく、いつも笑っているがよく下ネタが飛び出る。行動が時々珍妙。
頼むから、男子二人がいる空間でそれは止めて欲しい。
最後は、現在問題の渦中に居る人物。
副部長で食品科二年の栗原沙輝。
担当楽器はパーカッション。所謂、打楽器である。
大編成で県大会常連だった中学出身。趣味趣向が聖と会う、姉御的な性格の女子だ。身長も高く、時々聖のジャージを借りに来る。
男子二人は彼女によく餌付けされている。
彼女はアンサンブルコンテストの後から部活動を休みがちになり、卒業式を終えてからは本当に来なくなってしまった。
ただでさえ少ない部員。
ただ一人のパーカッションパートで副部長。
聖は必死に連絡をとろうとするが音沙汰はなく……
……部員はどんどん、諦めモードに突入していた。