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序
蒸し暑い道場の中。
裸足で一気に雑巾をかける。
グラウンドから吹き込んだ風が積もらせる砂埃が綺麗に拭われ、床板は天窓から差し込む光を反射していた。
腰にてを当てて満足げに笑む。
「……綺麗になったな……!これなら堂々と裸足で……」
「おつー」
がらっ!と戸が開いて、運動着姿の男子生徒が道場に足を踏み入れた。
「いやー、灌水後で湿った土に向かって転んじゃったよー」
「…………てめぇ厚央!その泥だらけの靴下で床をふむなぁぁっ」
「……剣崎先輩……隣の柔道部に迷惑ですよ」
……これは、とある弱小高校吹奏楽部の、瞬く間に過ぎ去った一夏の物語である。
主人公の剣崎が金管パートに所属しているため、金管パート中心の物語になるかと思います。
拙い小説ではありますが、お付き合いいただければ幸いです。