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23,77m 未来への架け橋  作者: 錦絵 駿
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 大輔の母親の実家は神奈川県の静かな海沿いにある。両親の仲が良かった、まだ小さかった頃は近くの海で夏休みに泳ぐのが楽しみだったがここ数年は行っていなかった。


 改札から降り、久しぶりに海の風を感じるとふと寂しい思いがこみ上げてくるが首を振り切り替える。

 昔は飽きるほど遊んだ砂浜を見ながら歩くと小学低学年位の男の子達が元気に和気あいあいと遊んでいる。


「懐かしいなぁ」

 その光景に大輔は目を細めた。

「なんか言った?」

 大輔の少し前を歩いていた母親が不思議そうに大輔の顔を見たが大丈夫だと分かると少し歩調を早めた。


 母親の実家に着くと早速おばあちゃんが出迎えてくれた。おばあちゃんの家はこの地区でも大きく、また3年前に死んでしまったおじいちゃんが大のテニス好きで本格的なテニスコートが1面あるほどの大きな土地を持っている。


 おじいちゃんの遺言なのかは知らないけれど大輔が帰ってくる長期休みでしか使わないはずのテニスコートはいつでもキレイに整備されていた。

「大輔、ひさしぶりね?しばらくこっちで過ごすって聞いたけどあなた高校でもテニスするの?」

「ん?うん‥一応こっちの高校でもテニスする予定だけど、まだどこ進学するか決まってないよ?」


 やはり中学3年にもなると身内との話は進路へ移ってしまう。アメリカの中学では結構真面目に勉強していたので成績は問題はないがそれが半年間通学する予定の中学で生かせるかが心配だった。

 そんな事を考えていたのを察したのかおばあちゃんは含み笑いで転校先の中学を教えてくれた。


「昔から物わかり良いんだから気にせんでいいさ。私の知り合いが校長やっててこっちで話しといたから大丈夫。それより飛行機に乗ってたんだから荷物置いたらしばらくコートで打ってきなさい」

「本当人脈広いね。でもありがと。じゃあ1時間くらい打ってるから」

「はいはい いってらっしゃい」

 

 自治会長のおばあちゃんの人脈はほんとに広い。そんなおばあちゃんの言うことだから転校先も多分安心だろう。ラケットバックを背負って家の端にあるテニスコートに少し駆け足で向かった。


 おそらく日本中どこを探しても数少ない完璧に手入れされたオムニのテニスコートを見て大輔はなぜかため息をついた。これをつくったおじいちゃんも凄いがおじいちゃんがいなくなった後もコートを手入れしてきたおばあちゃんには脱帽する。


 倉庫の中から俺が帰国すると聞いて入れ換えてくれた真新しいキレイなテニスボールを1カート運び出し俺はウォーミングアップを始める。クリスがいたときは2人でウォーミングアップをしてきたのだが1人でのアップはやはり寂しい。


 アップをしながら練習メニューを考えていたがあまり良い案が出てこなかったので時差ボケざましにサーブ練習をする事に決めた。

 サーブは大輔の得意なプレーで身長は170と小さいがコントロールと球のキレは良かった。ワイド、ボディ、センターと8割程は狙ったコースに打てることができた。1カートで丁度40分程で終わったので後片付けを手早く済ませ置いてきた荷物整理に取りかかった。


 2階にある1人では十分すぎるほど広い自室に荷物を運び終えグリップを巻き替えているとおばあちゃんがなにかのパンフレットを手にして部屋に入ってきた。

「大輔は高校でもテニスするって言ってたわよね?」

「あーーうん やるよ?それがどうしたの?」

「そう…ならここの高校を目指した方がいいわ。この関東で5本指にはいる位の強豪校だから。はい、これパンフレット」


 少し分厚い冊子には大きな文字で『湊川高校』と書いてあった。いわゆるスポーツ推進校のようなもので部活要項にはたくさんの部活が載っていて戦績もすごかった。

 その中でも特に硬式テニスはインターハイ出場など他の部に比べても戦績は良かった。


 高校も家からさほど遠くは無い。確かにテニスをするのに遠くに行ったり寮生活はいやだ。大輔は昔から上下関係というものが好きではない。


 しかし最も大輔の心が惹かれたのは…

「インターハイ出場か…」


 冊子をベッドに放り投げ俺は窓の外を見て大きな伸びをした。


「よっしゃ!!やったるぞ~!!」

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