北進ハイスクール
~地下室~
もはやおれはここまでか。金属バットで全身を殴られ、おれは重傷を負っていた。
「さぁ、吐くんだ。まゆこさんはどこにいる。」
床にうつ伏せになったおれをさらに殴り続ける。死んじゃうよー。
「死んでも、死んでも言わねぇよ。ここで親分裏切って生きるくらいなら、ここで、死んで、天国で……。」
天国で?天国に行けば姐さんに会えるんじゃ。天国には親分はいないから、姐さんは、おれの、もの……!?
「なぁ、トモヤ、殺してくれ。おれを、殺してくれよ。なあ。」
おれはトモヤにすがりついた。
「なっ、なんだよ、急に、おい、やめ……。」
すがりつかれて体制を崩した。デイがなぜか持っていったマウスの線に躓いたのだ。
「隙有、くらえ、鈴蘭スラッシュ!」
木刀がトモヤの脳天に振り下ろされる。
~門の前~
デイはマウスの線が引っ張られ、少しよろけたが、それどころではなかった。
「伊勢原氏、そのアングル、よろしいですなァ。」
「いえいえ、デイ氏、お宅のそのふともも、たまりませんなァ。」
ハァハァ。
~北進ハイスクール本部~
「ここなら安全だとおもったかぁ?さぁ、まゆこを渡してもらおうか。」
カオルの体力はもう限界だ。わたしを護って百人以上の格闘家たちを倒してくれたけれど、最後に残った一人、強すぎる。
「渡せない。」
「そうか、なら。」
そう言って、北進ハイスクール地理担当の姉崎は名簿を取り出し、メガネをかけた。
「出席をとるぞぉ。」
大仏のような、スタンド、いや、オーラが現れる。
「お嬢、下がって。」
テニスボールが大仏の手から打ち込まれる。それがカオルに命中する。カオルは倒れたが、すぐに、しかし、よろよろと立ち上がった。
「わたしのこれをうけて、生きているだけでもすごいン。でも、次で終わりなんだね。」
姉崎はもう一度、名簿を取り出しながら言った。
「くそっ、バックに北進ハイスクールがついていたとは。」
カオルが呟いた。
「久地組と親密な私らが、石原組の二重スパイだとは思わなかったと、こうでしょう。」
姉崎は少し微笑んだ。
「じゃ、次でぶち殺すよ。」
~渡り廊下~
エスパー十四郎はバトミントンのラケットを片手にニヤニヤと笑っていた。ユウちゃんさんの胸にはシャトルが突き刺さっていた。
「ここはあっしが。岳さん、逃げてくだせぃ。」
俺はユウちゃんさんを担いで走りだした。エスパー十四郎はもう一発撃ってきたが、それをヤスさんは素手で止めた。
俺は走った、走って、走った。気がつけば体育館に出ていた。
「ユウちゃんさん、大丈夫ですか。」
辛うじて息はあるようだ。
「岳、殿。エスパーが敵に、敵についているということは……、お嬢が、危ないんです。」
ユウちゃんさんは俺の手を握り締めた。冷たかった。
「北進ハイスクール本部へ。……お嬢を頼みます。」
ユウちゃんさんの手は心もとない力になり、やがてこぼれた。
「ユウちゃんさん。」
いざ、北進ハイスクール本部へ。
「そうはさせませんよ。」
体育館のギャラリーを見上げると、そこにはどこかで見た顔が。
「お前は……!」
えーっと。
「お前は、あれだ。あの、なんだ、その。」
すると男はギャラリーから飛び降り、ゆっくりと俺に近づいた。
「私は、木戸ディドロ…………!!」
だれぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええ!?