友紀は今を…。千尋は明日を…。ふたりの歩幅が、少しずつ…。千尋の笑顔が変わってゆく。友紀は…。
手紙は渡せなかった。
渡さなかった、 といった方が正しい。 友紀には
千尋が必要だった。
愛していた。
出来ることなら 離れたくなかった。
誰もが、
馬鹿だと笑うだろう…、
でも、
今を生きたかった。
一緒に…。
「千尋を愛してる。 そばにいて…。 今を一緒に生きて。」 友紀の今をぶつけられ
千尋は…泣いた。
千尋の涙は
温かかった。
クリスマスに
プレゼントの交換を
する約束をしていた。
友紀はすぐに プレゼントを
買った。
逢えなくなり
渡せなかった。 渡せずにいた。 でも、
1ヶ月遅れではあるが、
この日、渡せた。 誕生日ケーキと ともに。 寒がりの千尋。 厚手のタイツだ。
手袋も。 カラータイツを よく履いていた。
似合っていた。 1月の“生きた”時間が
終わった。
友紀は千尋の身体が
小さくなるまで見送った。
2月。
友紀はメールを毎日した。
今までも。
逢う約束をした。
ボーリングと
カラオケに。
やはり、手は…繋がない。
笑顔はあった。 いつもと変わらない
笑顔。
ボーリング場で
スペシャルピンを
倒した千尋。
写真を撮って
プレゼントしてくれた。
初めての…
ふたりの写真。 後にも先にも
一枚だけの…。
カラオケも
隣には並んで
座ったが
以前とは…。
もちろん、
手は…。
でも、友紀には “生きた”時間だった。
千尋にも
笑顔はあった。 以前の笑顔とは…、
やはり…。
友紀の大好きな
あの笑顔には
逢えなくなった。
友紀にも
わかっていた。
3月、4月。
それぞれ1日だけ、 ふたりで過ごした。
3月は
ショッピングモールに。
映画を見た。
モール内を
歩いた。
映画を見て
すぐに出ようとする
千尋を
「歩こ。」
と友紀は誘った。
服などを見てまわった。
はしゃいでいた。
友紀は試着を
ねだった。
いろんな服を
着る千尋を
見たかった。
しぶしぶ…、
でも、
友紀のおおはしゃぎに
笑顔を見せた。 2ヶ月遅れの
誕生日プレゼントを
買った。
喜んでくれた。
友紀も嬉しい。 笑顔をいっぱい 作りたかった。
千尋の笑顔を、 心からの笑顔を…。
友紀の愛した笑顔を…。
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親愛なるあなたへ
しあわせにね。




