ep2-1
「せいっ! とおっ! 」
「はい脇が甘い」
「ぐほっ! 」
「なんだよノエル。8年経ってもちっとも強くなってねーな」
「親父も相変わらずの腕だな」
どうも。蒼井ノエルです。只今俺は親父に剣の稽古をつけてもらっている最中です
「そんなんで世界征服できるのか? 」
「できるできないじゃない。やるんだ」キリッ
「そんなどこかで聞いた事あるようなセリフを決め顔で言われても……」
「カッコよくなかったか? 」
「全然。それより、次の予定は決まったのか? 昨日もノアちゃんと散々考えてたようだが」
カッコよくなかったんだ……
「ああ。とりあえず仲間を見付けようと思う」
「ふーん。でもお前達みたいな薄っぺらい世界征服に付き合ってくれる奴なんかいるのかね」
「いるかいないかじゃない。見付けるんだ」キリッ
「だからカッコよくねーって」
「そっか……まぁとりあえずアバンド辺りで探してみようって事になってる」
今日の稽古が終わったら早速行くつもりだ
「アバンドか。確かにあそこなら見つかるかもな」
「ああ」
アバンドは想人達からはゴミ溜めと呼ばれている、いわゆるスラム街である
きっとあそこでなら世界征服を夢見る同士が見つかるに違いない
「ま、ネーヴェックは俺に任せときな」
「ほほぉ。一度落とされたお方が頼もしいことで」
「あれは油断してたんだ。まさかあいつが裏切るなんて夢にも思わなかったからな」
親父の言うあいつが誰の事かは分からないが、少し寂しそうな親父の目が気になった
まぁ、そこについて詳しく聞いてるほど俺も暇ではないからスルーだけど
「んじゃ、行ってくるぜ」
「おー。頑張れよー」
親父に見送られながら俺はジパン号の元へと向かった
「強いぞー速いぞー♪ かめーんせんしジッパング」
なぜ今日は電車ではなくジパン号なのかと言うと、ノアを連れて行くわけにはいかないからである
どうやら最近のアバンドでは勢力争いが激化していて住民も皆殺気立っているとか
まぁノアなら心配いらないだろうが、念には念をという言葉もあるしね
「何者だ」
「ただの旅人っすよ。こいつの燃料がもう少ないんでね、補給していこうかなと」
「一応検査させてもらおう」
なぜだかいやらしい笑みを浮かべながら俺の身体を弄る衛兵
「?? 」
「よし、通れ」
ニヤニヤしているが……ああ、俺を女だと思ってんのか。まぁいいや
「よーし、スカウト開始」
ジパン号を人目に付かない所に停めて歩き始める
「はーいそこのお兄さん、世界征服とか興味ない? 」
「うるせぇ! 女に興味はねぇ! 失せろ! 」
「いや、女じゃなくて世界征服……行っちゃった」
何でいきなり怒鳴られたんだよ俺は
その後
「世界征服? 何言ってんの? バカなの? 」
「ははは。お嬢ちゃんはでっかい夢を持ってるなー」
「ふっ。世界は既に俺の所有物なのだぞ? 」
「うーん。興味ないなー。お姉さんになら興味あるけど」
「結婚してください」
「ちっ、やっぱ見つかんねーか」
皆相手にもしてくれない
「おうおう姉ちゃん! このアバンドで好き勝手されちゃあ困るぜ」
「この町は俺達ヴァンパイアの町なんだからな」
「おっ。ヴァンパイアだ。久しぶりに見たな」
ヴァンパイアと言うのはここヴェネットに住んでいる想人の亜種的な種族である。想人と人間は見た目の違いがないのだが、彼等ヴァンパイアは蝙蝠のような羽(飛べないらしい)が生えているのですぐに分かる
元々の数が少ないので滅多にお目にかかれない方達なのだが、なんとそのヴァンパイアが10人位目の前に現れた
「へー。アバンドってヴァンパイアの自治区だったのか」
知ってたならもっと早く来たかったぜ
「そうだ! なのに最近想人の奴等がでしゃばってきやがってよ」
「ヴァンパイアなめてっと吸い殺すぞ」
お?
「ほー。つまり、想人達が気に食わないんですね? 」
これは……
「おうよ! 」
いける!
「じゃあ、世界征服しようぜ! 」
「なに言ってんの? バカなの死ぬの? 」
ちくしょおおおおおっ!
「うわー。痛い痛い。もうこんなの放っておいて帰ろうぜ」
「きっもー」
ちくしょうこいつら……希少なヴァンパイアじゃなかったら全員ぶっ飛ばしてやったのに
「ははは。僕は良いと思いますよ」
「む? 」
俺が若干涙目になっていると1人のヴァンパイアが肩を叩いてきた
「いいじゃないですか。世界征服。夢があって」
「おおっ! 本当か! じゃあ一緒に世界を征服しよう! 」
「あいや、そういうことでは」
「いやー! お兄さん話が分かるねーよっしゃ、詳しい話はどこか座れる所でしようか」
「は、はぁ。わかりました」
くっくっく。絶対仲間にしてやる




