ep1-8
地下牢へと続く階段を駆け下りる
「親父!! 」
勢いよく牢の扉を開けた
「んあ? んん? どうしたお嬢ちゃん達。こんな所に来たら怒られるぞ」
8年振りに見る親父は当時と何も変わらない姿だった
「おっと、そうか。変身を解かなきゃな」
アドライバーを外して変身を解く
「おおっ。ノアちゃんじゃないか! いやー、綺麗になったなぁ! 」
「……グラさん。久しぶり」
「息子よりも先に息子の幼馴染に食いつくってのはどうなんだ」
照れているのか?
「それで? この子は誰だい? お友達? 」
あれ、こいつ本気で分かってないぞ
「……グラさん。ノエルだよ」
「ノエル? 何を言ってるんだ。俺の子供は男だぞ」
「だああああっ! お前マジか!? 8年経ったら息子の顔を忘れるのか!? 」
実の父親であり、元王様をお前呼ばわりしてるが、そんな事は今大した問題ではない
「んー? ああー、そういやなんかノエルの面影があるな……よっ、久しぶり」
「軽くね!? 息子との再会軽くね!? 」
「いや、久しぶりに会った息子が性転換してたらお父さん照れる」
「してねぇよ! 」
「え? じゃあなに? 自然にそうやって成長したの? やばくね? 」
「普通だよ! 」
つーか親父の方がやばくね?
「まぁいいや。それで? なんでお前達はこんな所にいるんだ? 兵士達はどうした? 」
俺とノアはここ、ネーヴェックを想人達から取り戻した事を親父に話した
「ほっほぉ、世界征服の為にね。いいなぁ若くて」
「ま、全てはこのアドライバーのおかげだ」
「ふーん。ミゲルも頑張ってるんだなぁ。8年間食っちゃ寝食っちゃ寝だった俺とは大違い」
なんだかんだで不自由なく過ごしていたらしい親父だった
「えー。と、いうわけで! ネーヴェック開放を祝して! かんぱーい! 」
親父の音頭でお祝いが始まった
想人達に支配されていた時はこのようにして夜中まで皆で騒ぐなどといった事はできなかったから皆大はしゃぎだ
「おほん! えー、というわけでですね! 今回このネーヴェックを開放した英雄である私、蒼井ノエルとノア・ウィンターにね! 盛大な拍sh」
「グラちゃん久しぶりー! 」
「おおーセシルとミゲルじゃねーかよ! 聞けよ俺の獄中生活! 」
俺が勝手に始めたスピーチをウィンター夫妻と両親によって邪魔された
「……ごほん。と、いうわけでね! 今回の主役である私蒼井ノエr」
「王子ー! 頑張ってー! 」
「王子ー! 今日も可愛いー! 」
「婿にはぜひとも家の息子をよろしくねー! 」
「うるせえええええ!!! 可愛いとか言うな! あと婿なんてとらねーよ! 」
やかましい主婦トリオだな
「まぁいいや。でね! 俺達2人頑張ったわけだからね。拍手くらい」
「王子可愛いよ王子」
「なんであれが男なんだ……っ!!! 」
「それがいいんだろアホかよ」
「なんだとこのやろー」
「やんのかこのやろー」
「俺は可愛くねーし男で悪かったなこのやろー! 」
殴り合いを始めた2人の男達に俺も参加する事にした
皆騒ぎ疲れたのかそこら中で眠っている中、俺とノアは並んで座っていた
「アドライバー。すげーなこれ」
「……うん。だけど、ノエルはこんなに傷だらけ」
俺の痣を優しく撫でるノア
「まぁ、無敵ってわけにはいかないだろ」
今日のも正直な話、あのまま戦ってたら負けてたしな
「……仲間を見つけなきゃね」
「ああ。さすがに2人だけじゃ世界は征服できないだろうな」
なにせあのエバンスよりも強い元老院を倒さなきゃいけないんだからな。世界征服は楽じゃない
と、ここで1つ疑問が
「そういやさ、お前はなんで世界征服をしたいんだ? 」
ウィンター家は皆想人だ。ミゲルさんは俺と同じで今の世の中は気に入らないっていう事で協力してくれたんだが、こいつは去年俺が世界征服するぞ! って誘ったらそのまま乗ってきただけなのだ
「……今の世の中じゃノエルと結婚できない」
頬を紅くしつつ呟くノア
「なるほど。まぁ世界征服をしたい理由なんて恥ずかしくて言えないよな」
「……いや、冗談じゃなかったんだけど」
「ははは。何言ってるんだ。俺は12歳8ヶ月13日目にお前に告白してフラれたんだぞ」
いやー。あの時は泣いたなぁ
「……とてつもなく根に持ってるね」
だから、こいつにその手の事を言われても釣られないのだ
「……まぁいいか。焦らずゆっくり」
ノアは一度だけ頷いて立ち上がった
「んじゃま、ここの防衛とか、今後の作戦は明日城で立てよう」
「……らじゃ」
小さく敬礼して帰っていくノア
「俺も帰ろ」
俺も城ではなく8年間暮らしてきた家に帰った




