ep1-7
「ふむ。どうやらウィンター殿はこの結界の事を分かっているらしいな」
「まじか」
「……うむ」
と、いうことは
「まずはウィンター殿を消さねばなるまいよ」
ノアに向かって電撃を纏った氷解を撃ちだすエバンス
「……余裕」
思術で壁のような物を作り出すノア
「言っただろう。私は神なのだ」
「くっ」
氷解は壁を避けてそのままノアに向かう
「させるかぶごぉっ! 」
ノアの盾になりまたもや吹き飛ぶ俺
そろそろ死にそう
「……ノエル。ごめん」
駆け寄ってきて涙を目に溜めながら謝ってくるノア
「良いってことよ……それより、この結界とかいう物の事を教えてくれ」
ノアは俺に回復の思術をかけながら話し出す
「……この結界の中ではあいつは相手の心が読める」
それはさっき看破したというかあいつが自分からバラしたな
「あとは、おそらくだけど思術に関しての事ならあいつの思い通りになる」
「……どういうことだ? 」
「……例えば、さっき氷が私の防御を避けた。あんな動きは普通はできない」
「じゃあ俺の攻撃を簡単に防いだり、直撃しても無傷なのも? 」
「……うん。防御の思術はあんなに万能ではない」
「悠長に話しているのを待つ程私はお人よしではないぞ! 」
次は電撃を放ってくるエバンス
どうせ避けれねーんだろ!
「アガガガガガガガ!! 」
ノアを抱きしめる形で庇った
「で、でさ。どうしたらいいんだ? 」
腕の中のノアに聞く
「……結界を張っているのならその結界を定着させる為の依り代があるはず」
回復の思術を俺に施しながら周りを見るノア
「フハハハハハハ! まさか依り代があのカーテンだとは死んでも気づくまい! 」
なんだと? 奴の指差すカーテンが結界を作り出しているっていうのか!
「……カーテンだとは思わなかった」
「依り代っていうのはなんでもいいのか」
なんかこう、もっと特別な物なのかと
「普通は術式を描いた御札などを使わなければ定着などできないのだがな! 私は結界の天才だからな! ふーはっはっ! 」
くっそー天才め。高笑いを決めやがって。ってか、これはワザとなのか?
「……日用品に結界を定着させるなんて化物じみている。そしてあいつは恐ろしいアホ」
さすがのノアも驚いているようだ
「だから私は天才なのだよ! まさかこのカーテンがなぁ! フゥーハッハッハッハッハ!!! ……あ」
「……消し飛ばす」
電撃によって加速度を増した火球がカーテンを直撃した
「あああああああああああっ!!! ちょっ! なぜカーテンだと分かった!? 」
「どんだけアホなんだお前!? 」
こっちが心配になるレベルだ
「しまったあああああああ!! 私のアh、じゃなくて天才! 」
地団駄を踏むエバンス
「んじゃまぁ、悪いけど」
カタナを握って近づく
「ひっ! 」
「そうだな。ありがとよ、アホでいてくれてさ」
正直こいつが自滅してくれなきゃ勝てなかったな
「私は天さいぎゃああああああっ!! 」
言い終える前に斬りつけておいた
「ふー」
「ノエル」
ノアが抱きついてきた
「いやー。なかなか厳しい戦いだったな」
「……うん。敵がアホで助かった」
アホだけど強かったなぁ。アホだけど
「しかし。元老院の奴等はこれ以上に強いんだろ? 」
「……うん」
「じゃあ、俺達ももっと強くならないとな」
「うん」
ノアの頭を撫でつつ、とにかく勝てて良かったなぁと思ったのだった
~その頃の元老院~
「えー! ネーヴェックが落ちた? まぁ別にあーっしには関係ないけど」
「そのネーヴェックを落としたのは男か? 掘りてぇな」
「ひゃひゃひゃ! オロナミンスィー!!!!! 」
「ちっ。だからあれほど増援を送れと言ったのだ」
「エバンスには困ったものですね。それで、いかがなさいますか? 偵察からの報告によると、ネーヴェックでは民衆も武装蜂起したとか」
「むぅ。と、なると鎮圧も一筋縄ではいかんか。まぁ、元々あそこは人間の土地だ。放っておいても構わん」
「よろしいのですか? 」
「ああ。久しぶりに人間が歯向かってきたのだ。もう少し泳がしてもいいだろう」
「畏まりました」




