ep1-2
「おとーさん。ノアだよ」コンコン
来る途中に5回程のナンパに遭遇しつつもノアの父親の研究室にやってきた俺達
「おー。よく来たね。2人とも」ガチャッ
いかにも研究者って風貌の男性が姿を現した
このヨレヨレの白衣に身を包んだ中年男性こそ、ノアの父親であるミゲル・ウィンターさんだ
「うっす。久しぶりです」
頭を下げる
「うん。久しぶり。家のノアも負けちゃいないが、ノエル君はまた一段と女らしさに磨きをかけたね」
「磨いてねーっす」
いきなり失礼な中年である
「おとーさん。そんなことより例のあれは? 」
「うんうん。最終調整も終わったし、準備万端だよ」
満足そうに頷くミゲルさん
「よっしゃ! 早速使わせてくださいよ! 」
「はいはい。じゃーちょっと待っててね」
ミゲルさんは研究室に戻って行った
「いよいよだね」
ノアもすこしワクワクしているようだ
「はいおまたー。これが、僕の最高傑作であるアドヴァンス・ドライバー。略してアドライバーだよ」
そう言ってミゲルさんは4本のベルトを差し出してきた
「ん? 4本もあるんすか? 」
「ああ。まぁ一応ね。目指すは世界征服なんだろう? さすがに2人じゃ厳しいんじゃないかと思ってね」
「ほほぉ。なるほど。ではありがたく」
4本受け取り1本をノアに渡す
「……ふむ」
無表情で頷くと腰に装着した
「そしたらこの横に付いてるボタンを押して」
「……えい」
『Welcome Vanquisher』
ノアがボタンを押すと、ベルトが光りだした
おほぉぉぉ。かっこええ
「……ん? うわぁ。なんだろう、今の私は多分無敵 」
光が収まるとそこにはさっきまでとは違う姿のノアが立っていた
「おおおお。かっこいい」
ノアは所々に甲冑の付いた純白のドレスを身に纏い、背中には天使の様な翼が生えていた。まるで神話に出てくる戦乙女のようだ
「うほぉ。さすが僕の娘。マジ萌ゑる」
「すっげー! あれってミゲルさんがデザインしたんすか!? 」
「いや、あれはだね。そうだな、まずはアドライバーの仕組みから説明しなきゃいけないんだけど、まずアドライバーが装着者の」
長くなりそうだからスルーして俺も付けてみよう
「……を、分解して解析してだね。それから再構築……って聞いてないのね」
「いくぜ! 変身! 」
仮面戦士ジパングの変身ポーズを真似してみた
『Welcome Vanquisher』
音声の後にノアのと同様に光りだすアドライバー
「うおおお。力が漲る! 」
きっとムキムキのスーパーヒーローみたいになるに違いない
「よっしゃあああ! どうだ! 」
ババーンと決めポーズをとる。なんか足がスースーするのはなぜだろうか
「……」
「……」
なぜ2人とも無言なんだ
「さってと。僕は研究に戻るよ。君達のサポートをする発明をもっとしたいしね」
んー? なんだろう? なぜ無反応なんだろうか
「ありがとうおとーさん。世界征服が終わったらゆっくりさせてあげるから」
やっぱり男の俺にこんなミニスカートは似合わなかったかな
「期待してるよ」
……ちょっと待て
「なにこれ? ……何これえええええええええええ!? 」
なんで男の俺がこんなヒラヒラした衣装を着てるんだ!? プリティでキュアキュアな感じに仕上がってるんだ?!
「落ち着けノエル君。そうだ。左のボタンを押してみて」
「左? 」ポチ
言われたままにボタンを押すと
『Permission to Engagement』
ベルトからポーンと何かが飛び出してきた
「なんだこれ」
地面に落ちたそれを拾い上げる
「わ。銃? 本物? あとこれって……カタナ!? すげー! 日本の伝統品のカタナじゃないか! 超カッコいい! 」
まさかフィクションの物が現実に現れるなんて
「おーなんかすごいのが出たね」
「すげー嬉しい! って! 誤魔化されないぞ! ミゲルさん! これは一体どういうことっすか!? 」
危うくこんな格好してるのを忘れるところだった
「うーん。アドライバーが君に最適な装備を構築した結果だからなぁ。僕にはどうしようもないよ」
困ったように頭を掻くミゲルさん
「なんだそりゃ! 俺にこれが最適だって!? 」
明らかに男が着る物ではないぞ
「いや、でも実際似合ってる」
ノアが珍しくニヤニヤしながら頷く
「うん。僕もそう思うよ」
「あ、そうっすか? じゃあこれでいいか。ってよくねー! 」
他人事だと思っちゃってまったくもー
「……でもほら。この左肩だけ甲冑が付いてたりするのカッコいい」
「あ、それは俺も思った。じゃなくて! なんでお前よりスカート丈が短いんだよ」
なによりなんでスカートなんだよ
「でもほら。もうどうしようもないからさ。ね? 」
子供をあやすかのように語りかけてくるミゲルさん
「……男ってバレなきゃ大丈夫」
くっそー。ちくしょー
「世界征服やめようかな」
「……冗談でも言って良いことと悪いことがある」
「はい、すみません。その通りです」
ノアの目が怖かったのですぐさま謝る俺。紳士である
「わかったよ! やるよ! やってやるよ! こんな世界は女装野郎に征服されるのがお似合いだぜ! 」
これも何もかも……この世界のせいだっ!!!
「……そうそう。細かい事でいちいちへこまない」
「……細かいかこれ」
結構大事じゃね? 俺的には




