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変身できるようになったんだけどさ  作者: ゆないてっど
ep2【吸血鬼の災難】
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ep2-6

「それ……卑怯ちゃうん? 」


なんだかよく分からない口調で頭領が抗議を始めた。


「さぁさぁ! こんな雑魚は放っておいて今は勝利に酔いしれよう! 」


「ああ、うん。そうね」


確かに戦いに卑怯もクソもないって言ったけど……


「あ。そういえばまだ僕達自己紹介してなかったよね」


「ああ。確かに」


ずっとヴァンパイアちゃんって呼んでたな。


「僕はシェリレ。シェリレ・ファニュっていうんだ。シェリって呼んでね」


「へー。よかったな。中性的な名前で」


ヴァンパイアは中性的な名前しか付けないのかな? 男しか生まれないって言ってたけど。


「そうだねー。よかったー」


羽をパタパタさせながら頷くシェリ。


「俺は蒼井ノエル。ちなみに蒼井が姓でノエルが名前だ」


「え?なんで名前と順番が逆なの? なんでなんで? 」


「ああ、まぁ本当は違う姓があるんだけど。後で話すけどとある事情で本当の姓は剥奪されててな。しかたないから自分で決めたんだ」


日本風に姓→名前という順にしてあるのもポイントだ。


「へー! なんかかっこいいね! 」


「よせやい。照れるだろ。それより、シェリはこれから」


「頭領!? とうりょおおおおおおおおおおっ!!! 」


!?


振り向くと聖堂の入り口にはヴァンパイアの皆さんが。


「貴様達が頭領をこんなボロ雑巾みたいにしたのか! 」


「え? いや、なんか気付いたらそうなってました」


「嘘をつけ! 廊下の同士達も貴様達の仕業だろう! 」


あー。これは


「捕らえろ! 」


まずいな。


普段ならまだしも今こんなに疲労している状態でこの人数はきつい。


「の、ノエル」


シェリも不安そうだ。


「あ、シェリは飛べるんだから逃げれば? 」


ほれ、と屋根の吹き飛んだ天井を指差す。


「いやいや。僕1人で逃げるわけには」


「大丈夫だって。お前もこのベルトの力は知ってるだろ? こんな奴等には負けねーよ」


「だったら僕も戦う」


むー。意外と義理堅いな。


「食らえ! 」


振り下ろされる剣をカタナで弾きつつ後ろのシェリに言う。


「よし。だったらこうしよう。お前は先に逃げて、逃げ道を作っておいてくれ」


「え? で、でも」


「後からいくからさ。お願い。今度は俺を助けてくれよ」


「分かった! 任せて! 」


羽を広げて飛んでいくシェリ。


「うお! なんだあのメス! 飛んだぞ! 」


「嘘!? これって飾りじゃなかったのか!? 」


「俺も飛べるんじゃね? 」


ヴァンパイアの飛行を見て興奮するヴァンパイア達。


「えーい! バカ共が! 羽をパタパタさてる暇があったらとっととそいつを捕らえろ! 」


「イエッサー! 」


くそっ。ずっとパタパタさせてろや! 


「おいおいおい! なんだよこの騒ぎは」


声のした方を振り向くと


「劣化共。はしゃぎすぎじゃねーか? 」


スキンヘッドで筋骨隆々の男が立っていた。


「ネ、ネビュラ……」


ヴァンパイアの1人が呟く。


「な、なぁ。ネビュラって? 」


いままで戦っていたヴァンパイアに聞く。


「元老院の1人、ネビュラ・ホプキンス。武装思術の達人だ」


緊張した面持ちで教えてくれるヴァンパイアさん。


「お? 劣化の割には良い男がいるじゃねーか」


「ひっ」


ネビュラはヴァンパイアの1人の肩を抱いた。


「くそっ! 想人が! 」


捕らわれた仲間を助けようと1人が斬りかかる。


「おいおい。どっちかっていうと俺は刺されるんじゃなくて刺す方が好きなんだぜ? 」


「うわっ! は、離せ!」 


あ、あいつ。剣を指だけで防いだ?


「んー。まぁ今日はこの2人でいいか。待ってろよ。すぐにこっちの世界に連れて行ってやるからな」


「い、いやだ! いやだああああああっ!!! 」


「お、俺には妻と子供がいるんだ! 離せ! 離せえええええええっ!! 」


ネビュラは男2人を軽々と担いで去っていった


「……な、なんだよあいつ」


あれが元老院…


「ぁぁ……これで何人目だ? 」


腰を抜かして青ざめているヴァンパイア。


「何人目って? 」


「あ、あいつ……最近部隊を引き連れてここに現れて、ここの自治権を渡せって頭領を脅してきたんだ」


ああ、そういえばアバンドに着いた時に「想人の奴等がでしゃばってきた」とか言ってたな。


「頭領は当然断ってたんだけど。そしたらあいつら「自治権を渡さない限りこの町の男は全部俺の物だ」って言い出して」


ん?


「それで……それで……お、俺の同僚もこの間あいつらに連れて行かれたんだ」


「そ、そいつはどうなったんだ……? 」


「後日、あいつがアヘ顔でピースサインを決めている写真が届いた……」


ゾゾゾゾゾゾゾゾ


「な、なんだよそれ! 超おっかねぇ! 」


「お、お前は女だから大丈夫だろう! あいつら男にしか興味がないんだ」


今の時ほど俺は自分の見た目に感謝した事はない


「あいつに狙われたら最後だ。最近は大人しいから大丈夫だと思ってたのに、お前等が騒動を起こすから! 」


「ま、まじでごめん」


決めた。とりあえず逃げよう。


「お、おい! 逃げるな! くそっ。腰が抜けて動けない」


やばいぞ。俺は本当に世界征服できるのか?


「おーノエルー! 無事だったんだねー! 」


飛びついてくるシェリ。


「やめろやめろ。惚れる惚れる」


頭を胸にグリグリと擦り付けてきているのを引き剥がす。


「ほら! 逃げ道見付けといたよ! 」


「ああ、ありがとう」


多分もう必要ないんじゃないかな。

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