悲劇か喜劇か或いは日常か
もう私達終わりね、と君が言うので、
僕は静かに頷くしかなかった。
長い付き合いだった。
世間的に見て僕らの恋人としての期間は非常に長かった。
今まで多くの友人達が僕達を祝福した。
その友人達も次から次へといなくなった。
僕達は、僕と君はただ涙を流してそれを見送るしかできなかった。
互いを見て、そして寄り添って。
連れて行かれた僕達の友人がどれだけ素晴らしかったのかと、君と語り合い、涙を流し、悲しみを吹き消すように歌を歌った。
友人達へ祝福を。
そして僕達の未来に、安寧を願って。
僕は歌が下手だったけど、君が僕の歌を聴くと元気になると言うから、僕は精一杯歌った。
君は歌が下手だと恥ずかしがるけど、僕は君の歌を聴くと元気になると君に言うので、君はたくさん歌ってくれた。
そうして僕達はずっと一緒にいた。
口付けをし、皮膚と皮膚を擦り合わせ、時には追いかけっこもした。
明日とも知れぬ身だからこそ僕達は精一杯遊んだ。
そんな僕達の姿を見て哂う奴もいたが、彼等が心底僕達のことを羨ましがっていたことを知っていた。
確定された運命を待つ僕達だからこそ、心の拠り所が必要なのだ。
例え、いつかそれを失ってしまうと分かっていても。
それが二人の運命なのだと、僕達はちゃんと、最初から理解しているのだ。
ただ、それでもやっぱり別れは悲しくて、辛くて。
身を引き裂かれるほどに痛い。
君が別れを告げた次の朝。
僕達の神様が僕達の元へとやって来た。
僕は、抵抗する。
無駄だと分かっても、抵抗する。
僕達の神様が君を連れて行くから。
僕から君を奪っていくから。
僕はそれをなんとか喰い止めようと泣き喚くけど、君は結局連れて行かれる。
最後に。
さよなら、と君が悲しげに言うので、
僕もさよならと涙を流した。
私の事も、ちゃんと歌ってね、と君が笑顔で言うから、
僕は下手糞な歌を、君を讃える歌を、泣きながら一心不乱に歌った。
喉が枯れてしまうぐらい、僕自身が壊れてしまうぐらいの悲しみと君への愛を、死に物狂いで歌った。
さよなら僕の恋人。
さよなら。
明日になれば、僕もそっちへ行くよ。
(×××××××について……)
(養殖豚達の悲劇について……)