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チャイムの国  作者: さくら
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迷いの森の境界線


第七章:迷いの森の境界線


――ジー……


音が、長く長く響く。


砂漠でも海でもなかった。


湿った空気の中、木々がざわめく。

光は少しだけ差し込む。

影は、すぐに消える。


私とミナは、森の入口に立っていた。


「……。 ここが、ジャングル」


ミナの声は、静かだ。


でも、私は知っている。


ここは――迷う世界。


地形が勝手に変わる。

道は消える。

目印は裏切る。


「前に来たときも、音でやられたよね」


私は小さくうなずく。


ブー… ブー…

ピンポーン…

ジー…


頭の中に、今までの音が流れる。


でも、ジャングルの音は違う。


長く、延々と、止まらない。


「止まらないって……。 どういうこと?」


ミナは足元の葉を踏みながら答える。


「止まる前に、戻らないと……」


背筋が寒くなる。


「消える……」


前と同じ、時の喰いの危険だ。


でも、今回は少し違う。


海で、少しだけ“音を組み合わせる力”を手に入れた。


「やってみよう」


私は自分に言い聞かせる。



森に入る。


湿った土と落ち葉が、足元で音を立てる。


「ここで……」


手の中の鐘を握る。


――チリン


波紋のように音が広がる。


木々の影が揺れる。


不規則に動く道が、一瞬だけ“固定”された。


「わかった……」


私は小さく笑う。


音を使えば、森の迷路も攻略できる。


ミナも理解している。


「なるほど、音で“道を作る”ってことか」



奥に進むほどに、音は長く伸びる。


耳を裂くような、止まらない


“ジー……”


森全体が、呼吸しているみたいだ。


その中で、影が動いた。


木々の間を、黒い影が縫うように動く。


人型に見えるけど――何か違う。

手足が長く、体が揺らいでいる。


「前と同じ……。 時の喰い?」


ミナが囁く。


「でも……。 動きが違う」


影は、森のルールに合わせて動いている。


こちらの音に反応してくる。


「つまり、誘導できる……!」


私は鐘を鳴らす。


――チリン……


影が、少しだけ止まった。


「よし、チャンス!」


ミナと同時に走る。


倒れそうになる地面。


消える道。


でも、音が道を固定する。


――進める。



森の中心。


そこには、大きな樹がそびえていた。


根元に、光る球体。


「核だ」


ミナが息を整えながら言う。


「ここも攻略しなきゃ」


しかし――


影は、中心を守る。


守り方が巧妙だ。


動きながら道を消す。


触れられない。


「どうする……!?」


海での経験が頭をよぎる。


「音を重ねる!」


砂の音、海の音、そしてジャングルの音。


全てを組み合わせる。


音が、森を支配する。


影の動きが鈍る。


「行ける!」


私たちは同時に核へ向かう。


手を伸ばす。


触れる。


――光が弾ける。


森が、静止する。


影も、消えた。


「……。 やった」


ミナが笑う。 


「ふはぁーー。よかった」


私は胸を撫で下ろす。


核を攻略した証、掌に小さな印が光る。


青と緑。


海と森。


「次は……?」


リングが空に現れる。


絡み合う線。


光が灯る。


「次は……。 砂漠?」


ミナが指差す。


「元の場所に戻るってこと……?」


「そう。でも、もう戻るだけじゃない」


私は小さくうなずく。


「攻略者として戻るんだ」


森を後にして、次の光へ。


「ブー…ブー…」


チャイムが鳴る。


――世界がまた、揺れ始める。

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