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チャイムの国  作者: さくら
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海鳴りの守り手


第六章:海鳴りの守り手


――チリン!!


鐘の音が、今までで一番強く響いた。


空気じゃない。

水でもない。


世界そのものが震えた。


塔の中の存在が、ぴたりと止まる。


長すぎる腕が、水の中で凍りついたみたいに動かない。


「効いてる……!」


ミナが叫ぶ。


でも、次の瞬間――


ギィィィ……


耳を裂くような音。


守り手が、“鳴いた”。


それは声じゃなかった。


歪んだチャイムの音。


「ピン…… ポォォォン……」


崩れた音が、空間を引き裂く。


水面が逆さに渦巻く。


船が持ち上がる。


「っ、これ……!」


体が浮く。


重力が狂う。


「向こうも“音”使うよ!」


ミナが踏ん張りながら叫ぶ。


「しかも、こっちより強い!」


確かに。


ただ鳴らすだけじゃ押し負ける。


「どうすれば……!」


そのとき、頭の奥で“あの声”がした。


――いいところまで来たね


一瞬だけ、視界が揺れる。


あの“もう一人の私”。


「重ねなよ」


声が続く。


「一つじゃ弱い」


「選べるんでしょ?」


「だったら――同時に鳴らせばいい」



同時に。


頭の中に、あの円盤が浮かぶ。


砂。

海。

ジャングル。

そして――空白。


今まで、一つしか選べなかった。


でも今は違う。


全部が、少しずつ“わかる”。


「……。 やってみる」


私は鐘を握る。


目を閉じる。


音を思い出す。


「ブー ブー」


砂の音。


「ピンポーン……」


海の音。


「ジー……」


ジャングルの音。


三つが、重なる。


混ざる。


ぶつかる。


普通なら壊れる。


でも――


「……。 合わせる」


無理やりじゃない。


“並べる”。


すると――


音が、一つになる。



目を開ける。


私は鐘を鳴らした。


――キィン……


今までにない音だった。


澄んでいて、深い。


そして――とても重い。



世界が止まる。


波が、空中で静止する。


守り手の腕も、動きを失う。


「……なに、今の」


ミナが呟く。


私にもわからない。


でも、一つだけはっきりしている。


今なら、触れられる。


「ミナ!」


「うん!」


言葉はいらなかった。


ミナがロープを掴む。


塔に向かって投げる。


引っかかる。


「行くよ!」


私たちは同時に飛び出した。


揺れる船から、塔へ。


水の壁を蹴るようにして、よじ登る。


守り手は動かない。


今のうち。


塔の表面に触れる。


水なのに、固い。


「中に入れる!」


ミナが叫ぶ。


私は頷く。


そのまま、手を押し込む。


水が裂ける。


バリッ、ババババー、ピキッ



中に入る。


音が消える。


完全な静寂。


中央に、それはあった。


球体。


ゆっくりと回っている。


青い光。


脈打っている。


「これが……核」


ミナが近づく。


でも、そのとき。


背後で、水が歪む。


守り手が、動き出していた。


「時間切れ!」


ミナが叫ぶ。


腕が、こちらに伸びる。


避けられない。


間に合わない。


「触って!!」


私は迷わなかった。


核に手を伸ばす。


触れる。



ドクン



心臓みたいな音。


光が弾ける。


ババーン、パッ、パッ


世界が裏返る。



気づくと、私はまた船の上にいた。


でも――


静かだ。


海が、穏やかになっている。


あの影もいない。


塔は、まだある。


でも、透明になっていた。


ゆっくりと、空に溶けていく。


「……。 終わった?」


ミナが呟く。


私は手を見る。


そこに、小さな印が浮かんでいた。


水の紋章。


淡く光っている。


「これ……」


「鍵だね」


ミナが言う。


「その世界を“使える”証」


つまり――


私は、この海の世界を扱えるようになった。



そのとき。


空に、またあのリングが現れる。


回転している。


「次が来るよ」


ミナが笑う。


少し疲れているけど、楽しそうだ。


私も、少し笑う。


さっきまで怖かったのに。


今は――


進みたいと思っている。


「次はどこ?」


リングの一つが、光る。


絡み合う線。


「ジャングルだね」


ミナが言う。


私は深く息を吸う。


あの、迷う世界。


でも――


もう、ただ迷うだけじゃない。


攻略できる。


「行こう」


私は鐘を握る。


少しだけ、強く。



「ジー……」


世界が、再び変わる。

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