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チャイムの国  作者: さくら
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海の底で呼ぶもの


第五章:海の底で呼ぶもの


「ピンポーン……」


音が、今までよりもはっきり聞こえた。


ただ聞こえるだけじゃない。


どこから鳴っているのか、わかる。


前だ。


私はその方向を“選ぶ”。


すると、世界がそれに応じて歪んだ。



気づくと、私はまた船の上にいた。


でも――前とは違う。


「……。 揺れてる」


はっきりと。


船は波に乗って動いている。


空もある。


ちゃんとした、青い空。


「前に来たときと違う……」


ミナが周囲を見渡す。


「世界が“固定されてる”」


「固定……?」


「うん。たぶん、あの場所を経由したから」


あの“外側”。


あそこを通ったことで、ただの通過じゃなくなった。


ここは、攻略できる場所になっている。



船の上には、いくつかのものが増えていた。


ロープ。

古いランタン。

そして――


小さな鐘。


船の中央に、ぽつんと置かれている。


「これ……」


手に取る。


軽い。


振ると、小さく鳴る。


――チリン


その瞬間。


水面が、わずかに揺れた。


ミナがすぐに言う。


「それ、“干渉してる”」


「干渉?」


「この世界に、音で触れてる」


私はもう一度、鐘を見る。


チャイムと同じ。


音は、この世界の“鍵”だ。



そのとき。


船の下から、影が通る。


大きい。


前に見たものと同じ――


いや、もっとはっきりしている。


輪郭がある。


背びれのようなもの。


でも魚じゃない。


もっと長い。


もっと“何か”に近い。


「来たね」


ミナが低く言う。


「どうする?」


逃げる?


でも――


今回は違う。


私は鐘を握る。


「試す」


ミナがうなずく。


「いいね」



影が、船の真下で止まる。


様子を見ている。


私は息を整える。


そして――


鳴らす。


――チリン


音が、水の中に落ちる。


バーンと波紋のように広がる。


その瞬間。


影が、反応した。


急に浮上してくる。


速い。


「来る!!」


ミナが叫ぶ。


ドドーン


船が大きく揺れる。


ミシミシ、ミシー


水面が割れる。


現れたのは――


巨大な“眼”だった。


黒い。


でも中心に、淡い光がある。


こちらを見ている。


完全に。


「……!」


足がすくむ。


でも、目を逸らさない。


逸らしたら終わる気がした。


「もう一回!」


ミナの声。


私は反射的に鐘を鳴らす。


――チリン!


今度は強く。


すると――


眼が、揺らいだ。


ほんの一瞬。


その隙を、ミナは見逃さなかった。


「右に寄せて!」


「え?」


「船、動かせる!!」


よく見ると、船尾に舵がある。


私は走る。


掴む。


重い。


でも、動く。


「うわっ……!」


ミシッ


船がきしみながら方向を変える。


その瞬間。


さっきまでいた場所の水面が、深く沈む。


――食われた。


「正解!」


ミナが叫ぶ。


「音で“引きつけて”、動いて避ける!」


なるほど。


戦えるわけじゃない。


でも――


コントロールはできる。



私は呼吸を整える。


「これ、攻略できる」



そのとき。


遠くに、何かが見えた。


海の上に――塔。


細く、高い。


まるで水面から突き出た針みたいに。


「……あれ」


ミナも気づく。


「たぶん、“核”」


「核?」


「どの世界にもあるの」


彼女は真剣な顔で言う。


「そこを押さえれば、世界が安定する」


つまり――


目的地。


「行こう」


私は舵を握る。


鐘を鳴らす。


――チリン


影が、また動く。


でも今度は怖くない。


動きが読める。


誘導できる。


船が進む。


塔に向かって。



近づくほどに、異様さが増す。


塔の表面は、水でできている。


流れているのに、形を保っている。


内部に、何かが見える。


光。


「……誰かいる?」


ミナが目を細める。


その瞬間。


塔の中の“それ”が動いた。


ゆっくりと。


こちらを見る。


人の形。


でも――


腕が長すぎる。


「まずい」


ミナの声が変わる。


「“守ってる側”だ」


「守ってる?」


「核を守る存在」


つまり――


ボス、みたいなものだ。


私は鐘を強く握る。


「やるしかない」


ミナがにやっと笑う。


「いいね、それ」



船が、塔の目前に迫る。


水がざわめく。


影も、塔の周りに集まっている。


全部が、ここに集約されている。


「準備は?」


ミナが聞く。


私はうなずく。


鐘を構える。


舵に足をかける。


「いくよ」


塔の中の存在が、腕を伸ばす。


水が巻き上がる。


世界が揺れる。


その中心で――


私は音を鳴らした。


――チリン!!


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