表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チャイムの国  作者: さくら
4/9

飛躍する音と新たな世界


第四章:跳躍する音と新たな世界


円盤に触れた瞬間、指先から音が広がった。


音――なのに、見えた。


光の波みたいに、円が何重にも広がっていく。


「なにこれ……!」


私の声と同時に、模様が浮かび上がる。


砂の線。

波の円。

絡み合う枝。


そして――空白。


全部が、同時に光っていた。


「全部反応してる!?」


ミナが叫ぶ。


「普通は一つだけなのに……!」


そのとき、背後から“削れる音”が迫る。


振り返らなくてもわかる。


時の喰いが、もうすぐそこまで来ている。


「選んで!!」


ミナの声。


選ぶ。


でも――どれを?


砂漠は知ってる。

でも、安全とは限らない。


海は……あの影。

ジャングルは、迷う。


一瞬で考える。


そして――


「空白……!」


私は、何も描かれていない部分に手を押し当てた。


ミナが息を呑む。


「そこは――!」


言い終わる前に、世界が割れた。



落ちる。


音もなく。


光もなく。


上下もわからない。


ただ、“どこでもない場所”を通っている感覚。


「……っ!」


隣でミナが手を掴む。


離れないように。


その手だけが、現実だった。


「これ……。 移動じゃない……!」


ミナの声が震える。


周囲に、何かが“ある”。


見えないのに、いる。


触れたら終わる、みたいな気配。


そのとき。


遠くで、音が鳴った。


――ポーン……


私の家のチャイム。


暗闇の中に、微かな光が浮かぶ。


「出口……!」


私は叫ぶ。


ミナと一緒に、そこへ向かう。


でも距離が歪む。


近づいているのに、遠い。


「間に合って……!」


手を伸ばす。


光に触れる。


その瞬間――



視界が弾けた。



気づくと、私は地面に倒れていた。


硬い。


冷たい。


砂じゃない。


「……ここ、は……?」


起き上がる。


空を見る。


そこには――


巨大なリングが浮かんでいた。


いくつも。


重なり合う円。


ゆっくりと回転している。


空そのものが、装置みたいだった。


「……成功、した……の?」


隣でミナが息を整えている。


彼女も無事だ。


「ここ……どこ?」


私は周囲を見渡す。


地面は石畳。


でも規則的すぎる。


街のようで、街じゃない。


建物はある。


でも、どれも“未完成”だった。


壁が途中で終わっている。

階段が宙に続いている。

扉がどこにも繋がっていない。


「……。 変な場所」


ミナが呟く。


「ここ、“作られてる途中”みたい」


そのとき。


コツ、コツ、コツ、コツ、と足音が響いた。


誰かがいる。


私たちは同時に振り向く。


そこにいたのは――


背の高い人物だった。


長いコートのようなものを着ている。


顔は見えない。


でも、はっきりと“こちらを見ている”。


「珍しいね」


低い声。


「未接続から直接来るなんて」


ミナが一歩前に出る。


警戒している。


「あなた、誰?」


その人物は少しだけ首を傾けた。


「案内人……。 とでも言えばいいかな」


聞いたことのある言葉。


私は思わず言う。


「もう一人、いた」


その人物がわずかに反応する。


「ほう?」


「“こっち側の私”って言ってた」


沈黙。


それから、ふっと笑う気配。


「なるほど。あれに会ったか」


「あれ?」


「君の“分岐”だよ」


意味が、すぐには飲み込めない。


「分岐……?」


「可能性の一つ」


その人物はゆっくり歩きながら言う。


「この世界は、音で繋がっている」


「そして音は、“選択”を運ぶ」


空を指さす。


巨大なリングが回っている。


「選ばれなかった道、進まなかった可能性」


「それらが、ここに溜まる」


背筋がぞくりとする。


「ここは……何?」


答えは、すぐに来た。


「“チャイムの国の外側”」



風が吹く。


でも、音がない。


完全な無音。


「君たちは今、境界を越えた」


その人物は私たちを見る。


「戻るか、進むか」


「どちらも選べる場所にいる」


ミナが小さく言う。


「……戻れるの?」


「もちろん」


「ただし」


一拍置く。


「戻れば、“知らなかったこと”も失う」


私は息を呑む。


じゃあ――


進めば?


「進めば?」


問いかける。


その人物は、ゆっくりと笑った。


「チャイムのすべてに触れることになる」


「世界の仕組みも、“鳴らしている存在”もね」



私はミナを見る。


ミナも、こちらを見る。


少しだけ笑う。


「どうする?」


その顔は、怖がっていない。


むしろ――ワクワクしている。


だから、私は決めた。


「進む」


即答だった。


その人物は満足そうにうなずく。


「いいね。いいね」


指を鳴らす。


すると、空のリングの一つが強く光る。


「では最初の目的地を与えよう」


光が収束する。


形になる。


それは――


水の紋章。


「次は“海”だ」


あの世界。


影が追ってくる場所。


でも、今は少し違う。


逃げるだけじゃない。


攻略する。


「準備はいい?」


その問いに、私はうなずく。


ミナも、しっかりとうなずいた。



音が鳴る。


「ピンポーン……」


世界が、再び揺れる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ