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5分で読める短編集

ダサ服コレクション

作者: STELO
掲載日:2026/03/21

短編を愛するすべての人へ!

5分で読めるミステリーをどうぞ!

おしゃれに目覚めて高校デビューした私の夢は、ファッションデザイナー。


……なんて言いながらも、結局気づけば教室のすみっこで、スケッチブック片手にドレスの絵ばかり描いていた。


「リサって絵うまいよね」


隣の席のアリサが、たまにそう言って覗き込んできた。クラスの人気者。私とは住む世界が違う人。お世辞だと思って、いつも「ありがとう」とだけ返していた。


唯一の友達のマユは、そんな私を見て「あんな子に関わらないほうがいいよ」といつも言っていた。


それからしばらく経って、、、教室に「ダサ服コレクション」と題された校内新聞が貼り出された。手書きのタイトルに、見覚えのない写真の数々。顔は写っていなかったけど──全部、私だった。


誰かが先生に報告したのか、首謀者としてアリサの名前が浮上した。


アリサは先生に呼び出されるとき、一度だけ私のほうを見た。何か言いたそうな目をしていた。けれど、隣にいたマユの顔をちらっと見て──結局何も言わないまま、職員室に消えていった。


アリサは「私がやったことに間違いはない」と一筆書かされた。それからいつの間にか、学校からいなくなっていた。


マユは「当然の報いだよね!」と言って笑った。その笑い方が少しだけ引っかかったけれど、あの頃の私にはそれどころじゃなかった。


ショックが抜けなかった。学校に行けなくなった。引きこもりになった。死ぬことさえ頭をよぎった。


──でも、どうせ死ぬなら、夢を追いかけてから死のう。


そう開き直った私は、本気でファッションの勉強を始めた。


そんなある日、風の便りであの「アリサ」がファッション誌の表紙を飾ったと聞いた。


……私、こんなんでいいのか?


吹っ切れた私は、自作の服を着て配信を始めた。最初はバカにされた。でも、夢に命をかけてやっていたら、なんの間違いか面白半分にバズりだし──ついに、ブランドから声がかかった。


そんな時、マユが連絡をよこした。


「同窓会やろうよ」


震えながらも、承諾した。


当時のクラス全員が揃った同窓会。思い出話に花が咲く中、誰からともなく「ダサ服コレクション」の話題になった。


血の気が引く私。けれど、マユが武勇伝のように語ってくれた。「あの時は大変だったよねえ」と、まるで自分が一番の被害者みたいに。


みんなの興奮が最高潮に達したそのとき。


アリサ、登場。


修羅場の予感に、会場が静まり返る。


アリサは私を見て言った。


「あんた、まだそんな格好してるの? 少しは私を見習えば?」


私は静かに返した。


「……それ、私がデザインした服だよ」


一瞬の沈黙のあと、周囲が爆笑した。


マユがすかさず追い打ちをかける。


「あんたさ、そんなこと自慢しに来たわけ?」


みんなの視線がアリサに集中する。


ためて、ためて──アリサは言った。


「そうよ! 私の憧れのデザイナーが、私のためにつくってくれた服なんだから……!」


泣き崩れるアリサを、私は抱きしめた。


知っていた。本当は、ずっと知っていた。


アリサが犯人じゃないこと。あの日、誰かの悪意で一文字目に棒を足されたこと。アリサがそれでも何も言わなかったこと。風の便りは、いつだって遅くて、いつだって核心だけをちゃんと届けてくる。


でも、「知っている」と「信じられる」は違う。


頭で理解しても、あの教室で感じた冷たさが、胸の奥にずっと刺さったままだった。


──今、やっと抜けた。


アリサの涙の温度が、言葉より先に全部教えてくれた。


私の名前は、リサ。


アリサがやりたかったのは、「リサ服コレクション」。


それに棒を足して「ダサ服コレクション」にした誰かさんが──この中にいる。


私はそっとマユのほうを見た。


マユは、笑っていなかった。

読んでくださって感謝です!

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