ダサ服コレクション
短編を愛するすべての人へ!
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おしゃれに目覚めて高校デビューした私の夢は、ファッションデザイナー。
……なんて言いながらも、結局気づけば教室のすみっこで、スケッチブック片手にドレスの絵ばかり描いていた。
「リサって絵うまいよね」
隣の席のアリサが、たまにそう言って覗き込んできた。クラスの人気者。私とは住む世界が違う人。お世辞だと思って、いつも「ありがとう」とだけ返していた。
唯一の友達のマユは、そんな私を見て「あんな子に関わらないほうがいいよ」といつも言っていた。
それからしばらく経って、、、教室に「ダサ服コレクション」と題された校内新聞が貼り出された。手書きのタイトルに、見覚えのない写真の数々。顔は写っていなかったけど──全部、私だった。
誰かが先生に報告したのか、首謀者としてアリサの名前が浮上した。
アリサは先生に呼び出されるとき、一度だけ私のほうを見た。何か言いたそうな目をしていた。けれど、隣にいたマユの顔をちらっと見て──結局何も言わないまま、職員室に消えていった。
アリサは「私がやったことに間違いはない」と一筆書かされた。それからいつの間にか、学校からいなくなっていた。
マユは「当然の報いだよね!」と言って笑った。その笑い方が少しだけ引っかかったけれど、あの頃の私にはそれどころじゃなかった。
ショックが抜けなかった。学校に行けなくなった。引きこもりになった。死ぬことさえ頭をよぎった。
──でも、どうせ死ぬなら、夢を追いかけてから死のう。
そう開き直った私は、本気でファッションの勉強を始めた。
そんなある日、風の便りであの「アリサ」がファッション誌の表紙を飾ったと聞いた。
……私、こんなんでいいのか?
吹っ切れた私は、自作の服を着て配信を始めた。最初はバカにされた。でも、夢に命をかけてやっていたら、なんの間違いか面白半分にバズりだし──ついに、ブランドから声がかかった。
そんな時、マユが連絡をよこした。
「同窓会やろうよ」
震えながらも、承諾した。
当時のクラス全員が揃った同窓会。思い出話に花が咲く中、誰からともなく「ダサ服コレクション」の話題になった。
血の気が引く私。けれど、マユが武勇伝のように語ってくれた。「あの時は大変だったよねえ」と、まるで自分が一番の被害者みたいに。
みんなの興奮が最高潮に達したそのとき。
アリサ、登場。
修羅場の予感に、会場が静まり返る。
アリサは私を見て言った。
「あんた、まだそんな格好してるの? 少しは私を見習えば?」
私は静かに返した。
「……それ、私がデザインした服だよ」
一瞬の沈黙のあと、周囲が爆笑した。
マユがすかさず追い打ちをかける。
「あんたさ、そんなこと自慢しに来たわけ?」
みんなの視線がアリサに集中する。
ためて、ためて──アリサは言った。
「そうよ! 私の憧れのデザイナーが、私のためにつくってくれた服なんだから……!」
泣き崩れるアリサを、私は抱きしめた。
知っていた。本当は、ずっと知っていた。
アリサが犯人じゃないこと。あの日、誰かの悪意で一文字目に棒を足されたこと。アリサがそれでも何も言わなかったこと。風の便りは、いつだって遅くて、いつだって核心だけをちゃんと届けてくる。
でも、「知っている」と「信じられる」は違う。
頭で理解しても、あの教室で感じた冷たさが、胸の奥にずっと刺さったままだった。
──今、やっと抜けた。
アリサの涙の温度が、言葉より先に全部教えてくれた。
私の名前は、リサ。
アリサがやりたかったのは、「リサ服コレクション」。
それに棒を足して「ダサ服コレクション」にした誰かさんが──この中にいる。
私はそっとマユのほうを見た。
マユは、笑っていなかった。
読んでくださって感謝です!




