3話『女神の宣告、勇者の選択』
虚無の世界。俺が作り上げた「漆黒の書斎」に、この世のどんな楽器よりも美しく、そしてどんな冷気よりも冷たい「声」が降り注いでいた。
それは上位次元から世界を統治する、この宇宙の管理者――女神ルミナの宣告だった。
「……聞きなさい、若き勇者アルトよ」
頭上から降り注ぐのは、視界を焼き切るほどの純白の光。
俺が作った影のドームさえも透過してくるその光の中に、実体を持たない巨大な女性の輪郭が浮かび上がった。
「わ、わああ……っ! まぶしい……っ!」
「怯える必要はありません。私は世界の均衡を守る者。……貴方が信じ、共に歩んできたその『獣』の真実を伝えに来ました」
女神の指先が、猫の姿をしている俺を指し示しめす。
「その者は、猫などではありません。次元の隙間に湧いた『バグ』。文明を、命を、そして神々を喰らって肥大化する、宇宙の廃棄物。……これまで貴方が救ってきた街も、倒してきた魔王も、すべてはその者が自らを太らせるための『家畜の管理』に過ぎなかったのです」
「……え?」
アルトが呆然と俺を眺める。
俺は否定も肯定もせず、ただ静かに、アークの頁をめくらせた。
『(主殿。女神ルミナ、全次元に放送中。……彼女はあなたの「効率的すぎる管理」が、自分たちの支配体制を脅かすことを恐れているようです。……実に醜い、保身のためのプロパガンダですね)』
(……構わない。アルトがどう動くか、それだけが今の観測データとして価値がある)
「アルトよ、聖剣ルミナスを抜きなさい」
女神の声が、さらに鋭さを増す。
「その剣は、貴方の正義に応えて私が授けたもの。今、その剣に私の『真なる裁き』を宿しました。……そのバグを殺し、世界を正常な循環に戻すのです。それが、勇者としての貴方の最後にして最大の使命です」
アルトの手の中で、魔剣ルミナスが「聖なる輝き」を放ち始めた。
女神による上書き。俺が仕込んだ影の回路を強引に焼き切り、ルミナスは真に「俺を殺すための武器」へと変質していく。
「……ノア。女神様が言ってること、本当なの?」
アルトが震える手で剣を構えた。その瞳には涙を溜めて。
「俺たちが作ったあの村も、みんなの笑顔も……全部、お前が食べるための準備だったの? 俺のことを助けてくれたのも……全部、嘘だったの?」
俺は人型の影をアルトの前に実体化させ、いつものように優雅に一礼した。
「アルト様。……私は嘘はついていません。私はただ、無駄を削ぎ落とし、効率的にスクラップを整理してきただけです。……貴方がそれを『愛』や『正義』と呼んで勝手に解釈していたに過ぎません」
「……っ!!」
「さあ、勇者様。選んでください。……女神の言う通り、私を殺して『元通りの不自由で残酷な世界』に戻すか。それとも、私と共に『管理された永遠の楽園』を広げ続けるか」
俺は、再構築した[終焉の鎌]を静かに手に取りました。
「……にゃお(さあ、俺を斬るか? それとも俺に喰われるか?)」
【アークの記録帳】
• 個体名: ノア
• 種族: [次元を喰らう影]
• レベル: 31
• 称号: [管理者殺し]
• 保有スキル:
• [捕食進化]、[影の支配]、[因果捕食]、[神威の眼]、[次元跳躍]、[終焉の鎌]
• アークの分析:アルト様の精神的な「勇者補正」が最大値まで上昇。女神による強制エンチャントにより、聖剣ルミナスの出力がこちらの防御壁を突破する可能性が80%を超えました。……主殿、本気でやり合うおつもりですか?
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