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スクラップブック:勇者の影で笑う猫  作者: beens
第3章:四天王の来訪と、魔境の開拓

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5話『魔王、求人票を受け取る』

 その日、「希望の芽吹き村」の空は一瞬にして漆黒に染まった。

雷鳴と共に大地が震え、村の中央広場に、この世のものとは思えない圧倒的な「魔圧」が降り立つ。

「……我が四天王を掠め取り、魔王軍を空っぽにした不届きな人間は、どこのどいつだ?」

立ち上る煙の中から現れたのは、禍々しい角と六枚の翼を持つ、魔族の頂点――魔王ゾルガード。

彼の放つプレッシャーだけで、普通の人間なら心臓が止まるレベルだ。だが。

「あ、魔王さんだ! いらっしゃい! 今、ザガンさんたちが焼いたパンがちょうど焼けたところだよ!」

アルトがいつものように、ホカホカのバスケットを持って駆け寄ってきた。

魔王は絶句した。自分の命を狙うはずの勇者が、焼き立てのパン(しかも四天王が焼いたもの)を差し出してくるという異常事態に、思考が追いつかない。

「……ザガンだと? 奴は、我が軍の突撃隊長だったはずだが」

「あ、あそこにいますよ。今はパン屋の物流と、ついでに自警団の教育係をやってくれてます!」

アルトが指差す先では、エプロン姿のザガンが、ヴァルトスと協力して村の子供たちに「正しい剣の振り方(護身術)」を熱心に教えていた。

「いいか、力任せに振るな! パンの生地をこねるように、腰を落とすんだ!」

「……魔王様? いえ、今は研修中ですので、お引き取りを」

四天王たちが自分に向ける視線に「恐怖」も「崇拝」もなく、ただ「仕事の邪魔をしないでくれ」という労働者の自負が宿っているのを見て、魔王はついに膝をついた。

「……どういうことだ。我が軍よりも、この村の方が……統制が取れているというのか?」

「それはそうですよ。ブラック企業より、ホワイト企業の方が定着率は高いですから」

魔王の背後から、静かにエリオット(人型のノア)が歩み寄った。

その足元では、本体である黒猫のノアが「にゃーん(遅かったじゃないか)」と欠伸をしている。

「魔王ゾルガード。貴方はこれまで、恐怖と暴力だけで部下を従えてきた。ですが、我々は『パンと、安全と、やりがい』を提供した。……結果は見ての通りです。貴方の会社(軍)は、もう倒産寸前なんですよ」

「ぐ、ぬぅ……! 貴様、何者だ……!?」

「ただの村人です。……さて、魔王様。貴方にも『求人票』を持ってきました」

エリオットが差し出したのは、アークが作成した最高級の羊皮紙。そこには、魔王軍の運営を遥かに凌ぐ「福利厚生」の数々が記されていた。

• 役職: 村の最高経営責任者(CEO)補佐、兼・魔界支店長

• 報酬: 上質な魔力結晶、および「神を喰らった猫」による加護

• 休日: 週休二日制(魔王としての破壊活動は有給休暇扱い)

「……馬鹿な。私が、部下だった連中と同じ場所で働けというのか!?」

「いえ、貴方には『魔界との貿易窓口』になってもらいたいのです。魔界の特産品をこの村に流し、代わりにこの村のパンと文化を魔界へ売る。……世界征服などというコスパの悪いことはやめて、世界を『顧客』にしませんか?」

魔王は震える手で求人票を受け取った。

彼はノアの瞳の奥に、かつて自分が見たこともないほど深く、巨大な「捕食者の闇」を見た。抗えば、自分という存在そのものが、データの一片として喰い尽くされる。

「……ふふ、ははは! 面白い。恐怖ではなく『利益』で世界を支配しようというのか。……いいだろう。この村のインターンとして、その手並みを拝見させてもらう!」

魔王ゾルガードは、その場で禍々しい鎧を脱ぎ捨て、村のロゴが入った「スタッフポロシャツ」を羽織った。


【アークの記録帳スクラップ

• 個体名: ノア

• 種族: [神を喰らうディバイン・イーター]

• レベル: 27

• 称号: [魔王を雇った猫](New)

• 保有スキル:

• [捕食進化]、[影の支配]、[因果捕食]、[神威の眼]、[偽造の奇跡] 等

• 新加入スタッフ:

• 魔王ゾルガード(インターン):現在、魔界貿易の折衝および村の総括管理補佐。

• アークの分析:魔王軍のトップを「雇用」することで、実質的に魔王軍そのものを我が村の『子会社』化しました。……主殿、これで世界に敵はいなくなりましたが、次はどこへ向かいますか?

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