表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スクラップブック:勇者の影で笑う猫  作者: beens
第3章:四天王の来訪と、魔境の開拓

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/28

2話『魔王軍、内部崩壊の予兆』

 魔王軍四天王の一人、ザガンが「偵察」に旅立ってから数日が経過した。

魔王城の謁見の間では、残された三人の四天王が苛立ちを募らせていた。

「遅すぎる。ザガンの奴、たかが人間の村一つ潰すのに何を手こずっているのだ」

苛立たしげに爪を鳴らすのは、四天王が一人、変幻のシルフィーヌ。

風を操り、隠密と暗殺を得意とする彼女は、ザガンのような「力押し」の男が戻らないことに不信感を抱いていた。

「……ふふ、案外、勇者の美少女にでも骨抜きにされたんじゃないかしら?」

「笑えん。……シルフィーヌ、貴様が行け。ザガンを回収し、ついでにその村を『無』に帰してこい」

魔王の代理として玉座の脇に立つ影の命令に、シルフィーヌは不敵に笑って姿を消した。

数時間後。シルフィーヌは風の刃となって「希望の芽吹き村」へと舞い降りた。

彼女はまず、上空から村の様子を観察した。

「(……何かしら、あの男は。ザガンに似ているけれど、あんなに穏やかな顔をするはずが――)」

彼女の視線の先には、エプロンを身に着け、額に汗して巨大な石臼を回している大男の姿があった。

「ザガン殿! 次の粉が引けたよ! 助かるなぁ!」

「オウ、任せておけ勇者。……この粉で焼くクロワッサンは、魔王城の配給食よりよっぽど『力』が湧くからな」

ザガンは、アルトと親しげに笑い合いながら、山のような小麦粉を運んでいた。

かつて「鉄血」と恐れられた男の姿はどこにもない。そこにあるのは、村の物流を支える、ただの「力持ちのザガンさん」だった。

「(……狂ったの? 脳を焼き切られたの? それとも、あまりの恐怖に精神が崩壊したの!?)」

シルフィーヌは身震いした。

彼女は姿を消したまま、ザガンに近づき、耳元で鋭く囁いた。

「ザガン、何をしているの。目を覚ましなさい。魔王様がお怒りよ」

「……シルフィーヌか」

ザガンは表情を変えず、石臼を回す手を止めなかった。

「……逃げろ、シルフィーヌ。ここは地獄だ。だが、焼き立てのパンと適切な労働条件がある地獄だ。……魔王軍のブラックな環境に戻るよりは、マシだぞ」

「何を言って――」

「にゃお(その通り。うちの福利厚生は、死ぬほど手厚いぞ)」

シルフィーヌの背後から、冷ややかな声が響いた。

彼女が振り返るよりも早く、周囲の「空気(風)」が凝固した。

「(なっ……!? 私の風が、動かない!? 空間そのものが……食べられている!?)」

『(主殿。ターゲットの風魔法、および存在座標を「因果捕食」にて固定完了。……彼女の風の権能は、村の「全自動換気・冷暖房システム」として極めて有用なスクラップになります)』

俺は、影の中からヌリリと姿を現した。

絶望に顔を歪めるシルフィーヌを見上げ、俺は最高に「慈悲深い」笑みを浮かべた。

「にゃーん(さあ、お前も『契約書』にサインしろ。……拒否するなら、お前の風の権能だけを剥ぎ取って、ただの扇風機にしてやるが?)」

翌日。

「希望の芽吹き村」には、爽やかな風が常に吹き抜けるようになった。

村の広場では、透き通るような美貌を持った女性シルフィーヌが、顔を引き攣らせながら巨大な団扇うちわを振り、村全体の空気を循環させていた。

「あはは! シルフィーヌさんも働き者だね! おかげで夏でも涼しいよ!」

アルトの無邪気な声が響く。

ザガンはパンを齧りながら、同僚となった彼女に同情の視線を向けた。

「……慣れろ。ここは、逃げ出すよりも『働く』方が楽な場所だ」

俺はカフェのテラス席で、アークの頁に新たな「従業員データ」が刻まれるのを眺めていた。


【アークの記録帳スクラップ

• 個体名: ノア

• 種族: [神を喰らうディバイン・イーター]

• レベル: 25

• 称号: [聖獣]、[はじまりの王]

• 保有スキル:

• [捕食進化]、[影の移動]、[魔剣生成:ルミナス]、[影の武装]、[影の支配]、[偽造の奇跡]、[影の代行者]、[光輝の反転]、[NPCマスク]、[記憶の断片化]、[影の自白剤]、[影の過負荷]、[因果捕食]、[神威の眼]

• 新加入スタッフ:

• 変幻のシルフィーヌ(元・魔王軍四天王):現在、村の気候管理・換気システム担当。

• アークの分析:四天王を二人確保。村のインフラが劇的に改善されました。……主殿、魔王軍の『人事部』がパニックを起こしているようです。次に来るのは、おそらく最も忠誠心の高い「あいつ」でしょう。

更新通知を受け取りたい方は、ぜひブックマークをお願いします!

「続きが気になる」「面白い」と思っていただけたら、下の☆☆☆☆☆から評価をいただけると、執筆の大きな励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ