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<EP_004>アテナイへの道 その2

<登場人物>

アストレイア:正義の女神

イーリス:虹の女神

テセウス:英雄。冥界の椅子に張り付いている

アリアドネ:テセウス被害者の会 会長。テセウスの被害者でもある

メーディア:テセウス被害者の会 顧問。百戦錬磨の魔女

パイドラ:アリアドネの妹。テセウスの被害者

ヘレネ:テセウスの被害者

ペリグネ:テセウスの被害者。シニスの娘であり、メラニッポスの母

パイア:テセウスの被害者。猪を飼ってるオバちゃん

ケルキュオーン:テセウスの被害者。オカマ

アンティオペー:テセウスの被害者。アマゾンの女王の妹。ヒッポリュトスの母

デメテル:豊穣の女神。居酒屋でめて〜るの女将


「次はアタシだね」

そういうと老女が画面の前に立った。

「アタシはクロムミュオーンに住んでたパイアって言うんだけどね…」

「はいは〜い、それではパイアさんのVTRスタート!」

パイアが話し始めるとイーリスは指を鳴らし、VTRをスタートさせた。


パイアというのはテュポーンとエキドナの子供と言われる牝の猪であり、カリュドーンの猪の母であるといわれている猪であった。

「クロムミュオーンの猪」と言われる残忍な女盗賊パイアに育てられたため、猪もまたパイアと名付けられた。


そこまでVTRが流れるとパイアが大声をあげた。

「異議あり!」

パイアが声を荒げるとイーリスはVTRを止めた。

「なんだいこれは!アタシが『クロムミュオーンの猪』だって?冗談じゃない。アタシはここまで生きてきて人様のものを奪ったことなんてないよ!それに、ウチの猪だって少し大きいけど、あのカリュドーンの猪の母だなんて嘘だ。普通の猪だよ。アストレイア様、これは立派な名誉毀損だよ!」

パイアは肩で息をしながら興奮して叫んでいた。

「テセウス。申し開きはあるか?」

アストレイアはテセウスへと聞いた。

「嘘だ。そのババアが嘘をついているんだ。俺はクロムミュオーンの住人に聞いたんだ。そのババアの猪が畑を荒らして困るって」

テセウスは上ずった声で叫び返した。

「パイア、反論は?」

アストレイアは冷静にパイアへ話を促した。

「冗談じゃないよ。アタシは散歩をする時だってリードは付けていたんだ。そりゃ、この歳にもなれば猪が本気になれば抑えきれないこともあったさ。それに、ウチの猪は少し身体が大きいから食べる量だって多かったさ。それでもアタシは、必死に育てていただけさ」

パイアは必死に訴えてきた。

「ふむ……」

双方の話を聞くとアストレイアは腕を組み考え込んでしまった。

「はいは〜い。それではパイアさんが飼っていた猪の写真がありますので、見てみましょ〜」

アストレイアが考え込んでしまったのでイーリスが指を鳴らして画面を切り替えた。

そこに映っていたのは、古ぼけた一枚の写真で、そこには生前のパイアと猪が映っていた。

その猪は、確かに小柄なパイアと較べると巨大に見えはするが、どうみても一回り大きいだけの普通の猪だった。

「……ちっさ」

座敷内の誰かがポツリと呟くと「そうだよね〜」、「確かに一回りぐらい大きい気もするけど、普通だよねぇ…」という声が上がりはじめた。

コメント欄でも「うわ、これは普通ですわw」「ウチの猪のほうがデケェぞ」「この大きさの猪を飼ってたパイア婆さん、パワフルやなw」などといったコメントが流れていた。

「ほら、ごらん。ウチの猪は普通の猪なんだ。あの日だって、アタシたちは日課の散歩をしていただけなんだ。それをこの男は、待ち構えてアタシたちを棍棒で撲殺したのさ!」

パイアは涙ながらに叫んだ。

「サイッテ〜。てか、アンタ、良く『俺はクロミュオーンの巨猪を倒したんだぜ』って自慢してたよね。こんな小さな猪とお婆ちゃんを殴り殺して自慢してたの?ダッサ」

アリアドネがテセウスに対して吐き捨てるように言った。

「う、嘘だ。あの猪はもっと大きかったし、このババアは俺に対して猪をけしかけて、刃物を向けてきたんだ!信じて下さい、アストレイア様!」

画面が切り替わってテセウスは必死になって訴えてきた。

テセウスの反論にコメント欄は「テセウス、やっちまったなw」「効いてる、効いてるw」というコメントが踊っていた。

アストレイアは腕組みを解き、テーブルの上で指を組みながら静かに言った。

「ギルティ」

アストレイアの言葉にイーリスは大きな声を上げる。

「おおっとぉ〜、ここで本日2回目のギルティだぁ!」

興奮する座敷を沈めるようにアストレイアは冷静に言葉を続けていった。

「今回のことについては、証拠が集まっていないし、農家への被害の報告もわかっていない。なので、パイアが盗賊であったか、猪が凶暴であったかについては不問とする。しかし、当時の写真と証言から推測すれば、被告テセウスの証言には、はなはだ疑問が残る。また、写真から見て、この猪が進んで人の命を奪うとは思えず、パイアも残忍な女盗賊であったとは思えない。たとえ、猪が命を奪っており、パイアが女盗賊で襲ってきたとしても、それを被告が待ち伏せして撲殺するのは防衛行動とは言えず、不当な私刑である。よって、本法廷では被告をギルティとする。被告テセウスに原告パイアへの猪一頭と一万ドラクマの賠償が妥当と判断する」

アストレイアは静かに断言した。

「「「YAAAAA!!!!」」」

座敷内に歓声が湧き上がった。

コメント欄も「妥当w」「ババア殺してドヤ顔ってダサ過ぎる」といった声が溢れ、アストレイアの裁きに賛辞が送られていた。

画面内にはモザイクに隠れたペルセポネが墨と筆を使って、テセウスの両頬にバッテンを書いていた。

その姿にさらに会場のボルテージは上がっていった。

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