<EP_003>アテナイへの道 その1
<登場人物>
アストレイア:正義の女神
イーリス:虹の女神
テセウス:英雄。冥界の椅子に張り付いている
アリアドネ:テセウス被害者の会 会長。テセウスの被害者でもある
メーディア:テセウス被害者の会 顧問。百戦錬磨の魔女
パイドラ:アリアドネの妹。テセウスの被害者
ヘレネ:テセウスの被害者
ペリグネ:テセウスの被害者。シニスの娘であり、メラニッポスの母
パイア:テセウスの被害者。猪を飼ってるオバちゃん
ケルキュオーン:テセウスの被害者。オカマ
アンティオペー:テセウスの被害者。アマゾンの女王の妹。ヒッポリュトスの母
デメテル:豊穣の女神。居酒屋でめて〜るの女将
「んじゃ、まずはペリグネちゃん、行ってみよ〜」
「は〜い」
アリアドネに促され、ペリグネは立ち上がった。
「えっとぉ〜私はペリグネって言います。コリントスでお父さんと一緒に暮らしてたんですけどぉ〜」
「OK。大丈夫だよ。ペリグネちゃん。ちゃんとVTRにまとめておいたから。じゃ、VTRスタート!」
イーリスが指を鳴らすと画面が切り替わった。
おどろおどろしい音楽をBGMに緊迫感のあるナレーションが入りながらVTRはスタートした。
ペリグネの父シニスは怪力の盗賊で、コリントスのイストモス地峡を縄張りにしていた。
シニスの別名はピュオカムプテーオス(松曲げ男)と言った。
シニスは旅人にひどい乱暴をすることで有名であった。
松の木を地面まで曲げ、松がもとに戻らないように押さえさせ、跳ね飛ばして殺しては、旅人から金品を奪っていたのだ。
また、別の旅人には、一緒に松を押さえさせ、シニスは手を離した。
当然、松の木は元に戻るため、旅人は跳ね飛ばされた。
またある時には2本の松を曲げて旅人の両足を縛り付け、2本の松がもとに戻るのを利用して引き裂いて殺していた。
そこへテセウスがやってきた。
テセウスはシニスと一緒に松の木を曲げると、シニスの足を松の木に括り付けた。
シニスが縄をほどこうとしている間に、もう1本の松を曲げると、もう片方の足も括り付けていった。
そして、両足を括り付けるとシニスを蹴り上げた。
シニスは二本の松によって引き裂かれて死んだ。
「うわっ、グロっ……」
画面にはモザイクがかけられていたが、それでもシニスの惨殺の様子が映し出されると、誰かがボソッと呟いた。
画面は再び冥界のテセウスへと切り替わった。
「テセウス、申し開きはあるか?」
アストレイアは、顔をしかめつつも画面のテセウスに向かって言った。
「シニスは旅人を無作為に殺していた悪党なんだ。それを退治して何が悪いんだ!」
テセウスは引きつりつつも、そう叫んだ。
「まぁ、そこまでなら良いんだけどねぇ……ペリグネちゃん、この後、このクズはどうしたのかな?」
アリアドネは画面内のテセウスを冷たい目で見ながら、ペリグネに話を促した。
「えっとぉ…お父さんが松の木パッカーンで殺された時に、私は近くのアスパラガスの茂みに隠れてたんですけど、見つかっちゃったんですぅ」
そこまで言って、ペリグネは顔を赤らめてしまう。
「ほぉ、それで?」
アストレイアは無表情かつ冷徹にペリグネへ続けるように促した。
「それでぇ、『何もしないから出ておいで』って言ってくるから出ていったんですぅ。そうしたら、『キミ、可愛いね。お父さんはいなくなっちゃったけど、大丈夫、これからはボクがキミを守ってあげるよ』とか言ってきたんですぅ。私もバカだから、それを信じじゃって、その…その場で…」
そう言って、ペリグネは顔を更に赤くさせ、モジモジと身体をくねらせた。
「ヤッちゃったと……」
パイドラの言葉にペリグネは恥ずかしそうに頷いた。
「クズやな」
メーディアが吐き捨てると、会場の中から「クズだね」「クズ過ぎる」と次々と言葉が飛んだ。
コメント欄は「テセウス、クズやん。引くわ〜」「でもさ、アスパラガスって隠れられるん?」「アスパラガスは1.5mまで伸びるから隠れられるで。これ豆な。」「ほぇ〜初めて知った。さんがつ」などといったコメントが流れていった。
「テセウス。申し開きはあるか?」
アストレイアの再びの言葉にテセウスは引きつった顔でしどろもどろに答えていく。
「いや…その…ほら…彼女は父を亡くして天涯孤独になったわけですよ…なら…ほら、ちゃんと責任は取らないとね……」
「ほぉ、責任なぁ……ペリグネ、続きを言いな」
テセウスの苦しい言い訳にメーディアが冷笑を浮かべ、静かにペリグネへ続きを促していく。
「その…それで、私、身ごもっちゃって…メラニッポスを産んだんですけどぉ…」
ペリグネはそこで言い淀んでしまう。
「アテナイに入ると、オイコスの都合やと言って、ディオネウスに払い下げられたんよな?」
ペリグネが話しづらそうにしているので、メーディアが言葉を継いだ。
メーディアの言葉にペリグネは悲しそうな顔をして、コクンと頷いた。
その様子にアストレイアもジョッキを一気に飲み干すとテーブルに叩きつけた。
「テセウス、申し開きはあるか?」
アストレイアは座った目でテセウスを射抜いた。
「え?いや、ほら、俺ってアテナイの王子じゃん?王子の妻が盗賊の娘ってさ…ほら、格というか…ね?アストレイア様、わかるでしょ?」
引きつった顔のまま、テセウスはアストレイアを見てきた。
ニンフが持ってきたジョッキをイーリスから受け取り、半分を飲み干すと、アストレイアはボソっと呟いた。
「ギルティ」
その言葉を聞いたイーリスは弾むような声で言った。
「おおっと!ここで『ギルティ』が出ました〜!」
イーリスの言葉に座敷中が湧き立ち、歓声が上がった。
コメント欄にも「そりゃそうだw」「これがギルティでなくてなんなのよ?」といったコメントが溢れかえっていった。
「さてさて、今回は何回ギルティが出るんやろねぇ…」
一人冷静にジョッキを傾けながらメーディアは呟いた。




