<EP_023>テセウスのその後
<登場人物>
アストレイア:正義の女神
イーリス:虹の女神
テセウス:英雄。冥界の椅子に張り付いている
アリアドネ:テセウス被害者の会 会長。テセウスの被害者でもある
メーディア:テセウス被害者の会 顧問。百戦錬磨の魔女
パイドラ:アリアドネの妹。テセウスの被害者
ヘレネ:テセウスの被害者
ペリグネ:テセウスの被害者。シニスの娘であり、メラニッポスの母
パイア:テセウスの被害者。猪を飼ってるオバちゃん
ケルキュオーン:テセウスの被害者。オカマ
アンティオペー:テセウスの被害者。アマゾンの女王の妹。ヒッポリュトスの母
デメテル:豊穣の女神。居酒屋でめて〜るの女将
「それでは、その後のテセウスくんの足跡を辿ってみよ〜」
英雄たちが消えた後、イーリスの軽やかな声とともに指が鳴らされVTRは再開した。
冥界から地上へと返ってきたテセウスはアテナイの門をくぐっていった。
当時のアテナイはディオスクロイによりボロボロになった土地の復興の真っ最中であった。
「やぁやぁ、アテナイの市民の諸君。キミらのアイドル、英雄王テセウスが帰ってきたよ〜。なんかボロボロになってるけど、俺が来たからには安心だよ〜」
復興に従事している市民の間を能天気に話しながらテセウスは歩いていった。
市民はテセウスを見ると驚いた顔はするものの、何も見なかったような振りで黙々と復興作業へと戻っていった。
テセウスが王宮にたどり着くと王宮の前には二人の衛兵が立っていた。
衛兵はテセウスを見るとギョッとした顔を一瞬見せたが、お互いに目を合わせると小さく頷いた。
テセウスがそのまま王宮へと入ろうとすると、衛兵は持っていた槍を交差させテセウスの王宮への進入を防いだ。
「ここはアテナイ王宮である。不審な者を通すわけにはいかん」
衛兵の言葉にテセウスは眉を吊り上げた。
「ああ?俺はここの主のテセウスだぞ。お前ら新入りか?とっとと通せよ」
そう言って槍を跳ね上げようとするも衛兵は引かなかった。
「黙れ。我らが王はメネステウス様である。テセウスなどという、他国の王女を誘拐し、その上、冥王の妻を誘拐しようとして、国をないがしろにするような者は知らぬ。早々に立ち去られい」
衛兵と言い合いをしていると、テセウスの背中に小石が当たった。
振り向くと、王宮の前には人が集まっており、彼らからは罵声とともに大量の石が投げつけられた。
「出てけ、テセウス!」
「お前のおかげでどれだけ迷惑したと思っているんだ」
「オラの農地を返してくれ」
彼らの言葉にテセウスは自分の居場所がここにないことを痛感せざるを得なかった。
傷心のまま、テセウスはアテナイを後にし、父アイゲウスの伝手でリュコメデス王を頼り、スキューロス島へと落ち延びていった。
コメント欄には「ざまぁww」「まだ、少しは人の心が残っていたのか…」「そっちのほうが驚きだよね」といったコメントが流れていった。
リュコメデス王はテセウスを受け入れ、テセウスはスキューロス島で悠々自適に暮らしていた。
ある日、夕食で酒をしこたま飲んだテセウスは「風に当たってくる」と言って王宮を出ていくと、そのまま戻ってこず、心配した侍従が探しに行くと、道端で死んでいるのが発見された。
英雄の死というにはあまりにも呆気ない死に様であった。
VTRが止まると「死んだ〜」「え?え?え?」「展開が急すぎて理解が追いつかない」といったコメントが溢れかえっていった。
「う、嘘だ。俺はリュコメデスの野郎に崖から突き落とされて死んだんだ!英雄の死に様がこんな惨めなわけあるか!」
テセウスは必死になって叫んでいた。
「では、テセウスくんの死亡場所を見てみましょう」
イーリスの言葉に画面が切り替わると、そこには崖というにはあまりにもなだらかな、坂が写っていた。
「坂だよね?」
アンティオペーが思わず呟いてしまうと、座敷の人間が全員頷いた。
「あ、ああ、崖じゃない。深い穴に落とされたんだ」
テセウスが必死になると「じゃ、もっと近づいてみましょう〜」というイーリスの言葉に、画面がズームアップされた。
そこにあったのは穴ではあるが、深い穴というよりもただの凹みであった。
「え?何?アンタ、酔って坂の窪みでコケて頭打って死んだの?ダッサ、ダッサ、超ダッサ」
アリアドネはそう言うとけたたましく笑った。
それに釣られて周囲も嘲笑に包まれていった。
コメント欄も「うわ、ダッセェ」「【朗報】英雄テセウス、死因は転倒」「まぁ、お爺ちゃんだったしね」「コイツにはこんな死こそ相応しいw」といったコメントが高速で流れていった。




