<EP_022>アルゴナウタイ経歴詐称疑惑 その2
<登場人物>
アストレイア:正義の女神
イーリス:虹の女神
テセウス:英雄。冥界の椅子に張り付いている
アリアドネ:テセウス被害者の会 会長。テセウスの被害者でもある
メーディア:テセウス被害者の会 顧問。百戦錬磨の魔女
パイドラ:アリアドネの妹。テセウスの被害者
ヘレネ:テセウスの被害者
ペリグネ:テセウスの被害者。シニスの娘であり、メラニッポスの母
パイア:テセウスの被害者。猪を飼ってるオバちゃん
ケルキュオーン:テセウスの被害者。オカマ
アンティオペー:テセウスの被害者。アマゾンの女王の妹。ヒッポリュトスの母
デメテル:豊穣の女神。居酒屋でめて〜るの女将
「で、言いたいこととはなんだ、カストール?」
テーブルの上で指を組み、居住まいを正したアストレイアが話を促していく。
カストールはアストレイアに会釈をすると、別画面にいるテセウスへと話しかけた。
「テセウスくん、キミはアルゴナウタイに参加していたと吹聴しているらしいね?」
「え、えぇ……」
カストールの言葉にテセウスがひきつった顔で答えた。
「おいおい、兄貴。嘘だろ?俺、こんなヤツ知らねぇぞ」
カストールとテセウスの会話にポルックスは酷く驚いた顔をした。
「ええ、私も驚いたんですよ。アルゴナウタイでテセウスを見た記憶が無かったものですから。メーディアさんはいかがです?」
「ん?ウチも見た記憶は無いで。だいたい、アルゴナウタイはウチとイアソンが結婚した時の話やろ。ウチはイアソンと別れた後でアイゲウスと結婚しとるんやで。その後でアテナイで、このクズと初対面しとるんやから、その前に会ってるとか無いわ」
カストールの言葉にメーディアも首を捻ってしまう。
「ほ、ほら、俺ってその時はまだ無名の一般ピーポーっスからね。アルゴ号の甲板磨いていたりしただけのモブっスから。アハハ」
黙ってしまった三人の間をテセウスの渇いた笑いが往復していった。
「ヘラクレスさん、あなたはテセウスと旧知の仲なんですよね?」
微妙な空気が流れる中、イーリスがヘラクレスへ話を振る。
「そうですね。俺がアルゴナウタイから離脱して、トロイゼンに立ち寄った時に、俺の獅子頭を本物の獅子と間違えて殴りかかってきた子供がテセウスですからね。それ以来の知り合いってことになりますかね」
ヘラクレスが真面目な顔で言うと、テセウスの顔が凍りついた。
「い、嫌だなぁ…ヘラクレスパイセン。俺と出会ったのはパイセンがアルゴナウタイに行く前じゃないですか……アハハハ。ボケるにはまだ早いッスよ」
テセウスが引きつったまま渇いた笑いで誤魔化そうとするが、メーディアが口を開いた。
「でも、アテナイで私と初対面だったわよね?さっきも言ったけど、アルゴナウタイはウチとイアソンの話や。だったら、ウチらが冒険してた時のアンタはまだ小さいガキだったはずやろ?」
メーディアの鋭い指摘にテセウスは黙るしかなかった。
「アストレイア様。このような嘘を流されては、私やアルゴナウタイの名誉に関わります。これは経歴詐称と名誉毀損にならないのでしょうか」
カストールは真面目な顔でアストレイアに聞いた。
アストレイアは深く考えこむと、再び居住まいを正して、テーブルの上で指を組んだ。
「ふむ。状況は分かった。ただ、私は歴史の専門家ではないし、このことは歴史に大きく関わることでもある。なので、この場で判決を言うことは差し控えたいと思う。然るべき研究機関に報告した後、その判断を仰ぐということにしたい。どうだ、カストール?」
「わかりました。ありがとうございます、アストレイア様」
アストレイアの言葉にカストールは納得した顔で頭を下げた。
「それでは失礼いたします。メーディアさん、ヘラクレス、お二人ともお元気で」
「じゃ、失礼するぜ。姐さんも元気でな。ヘラクレス、また二人でパンクラチオンしようぜ。じゃあな」
「ああ、ポルックス、楽しみにしてるぞ。では俺も失礼します。メーディアさんもお元気で」
そう言うと、英雄たちとの中継は途切れた。
コメント欄には「アストレイア様は慎重だなぁ」「これ、絶対クロだよね」「まぁ、歴史教科書が変わるかもしれない話だしな」「テセウスって自己承認欲求の化物だろ」といったコメントが流れていった。




