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<EP_015>アンティオペー事件 その3

<登場人物>

アストレイア:正義の女神

イーリス:虹の女神

テセウス:英雄。冥界の椅子に張り付いている

アリアドネ:テセウス被害者の会 会長。テセウスの被害者でもある

メーディア:テセウス被害者の会 顧問。百戦錬磨の魔女

パイドラ:アリアドネの妹。テセウスの被害者

ヘレネ:テセウスの被害者

ペリグネ:テセウスの被害者。シニスの娘であり、メラニッポスの母

パイア:テセウスの被害者。猪を飼ってるオバちゃん

ケルキュオーン:テセウスの被害者。オカマ

アンティオペー:テセウスの被害者。アマゾンの女王の妹。ヒッポリュトスの母

デメテル:豊穣の女神。居酒屋でめて〜るの女将


VTRがブラックアウトした時の座敷内は、完全にお通夜状態であった。

あまりの衝撃に誰もが声を出すことすらできなかった。

アストレイアはこめかみを二本の指で揉みながら、完全に冷めきった声でテセウスに聞いた。

「テセウス。申し開きはあるか?」

テセウスはそんな座敷の空気などまったく読まずにいけしゃあしゃあと答えていく。

「だって、戦争っスよ。捕虜の獲得なんて当たり前じゃないですか。それに、アンティオペーちゃんだって喜んでたし、アテナイ王の妻としてアマゾン女王なんて箔しかないじゃないっスか」

そううそぶくテセウスの言葉をアリアドネが鋭く遮った。

「黙れ、この強姦魔!」

アリアドネの鋭い語気と視線にさすがにテセウスも怯んでしまう。

「まったく、救いようのないクズだね」

メーディアも珍しく怒気を孕んだ声で吐き捨てた。

コメント欄は「そうだ、そうだ、コイツはクズだ」「こいつはくせえッー!ゲロ以下のにおいがプンプンするぜッーッ!」「スピードワゴン乙」「このセリフに心から同意できる日がくるとは思わなかった……」といったコメントで溢れかえった。

「テセウス。アンティオペーを捕虜とするなら、お前のやったことは、完全に捕虜虐待だ。捕虜ではないというなら、ただの拉致、強姦だ。判決を言い渡すぞ……」

「ちょぉぉっと待ったぁぁぁ!」

アストレイアが判決を言おうとするのをイーリスが遮った。

「アンティオペーちゃん、これには続きがあるんだよね」

イーリスの言葉にアンティオペーは涙を浮かべて頷いた。

その姿は勇ましい女戦士ではなく、ただの女の子であった。

「じゃ、VTR再開!」

さすがのイーリスもかなり眉を吊り上げながら指を鳴らしてVTRを再開させた。


アテナイに到着するとアンティオペーはヒッポリュトスを産んだ。

テセウスは強大な武力を誇るアマゾンの女王を奪い、子供を産ませたことを国中にふれ回った。

「イェーイ!俺様、あのアマゾン女王を拐ってきたんだぜぇ〜スゲェだろ!俺様って最強のアテナイ王じゃ〜ん!アテナイのみんな、これからも俺をよろしくな!」

そんな言葉が虚しくアテナイの空にこだましていた。

一方、残ったヘラクレスは、ヒッポリュテーに対して「おのれ謀ったな!」と言い、思わず撲殺し、アマゾン兵を倒しながら逃げた。

しかし、捕虜からの話を聞くと、自分の勘違いであり、「もっと女王から話を聞けば良かった」と泣いてアマゾン兵へと謝罪した。

ヘラクレスの誠意ある謝罪をアマゾン族は受け入れた。

しかし、女王であるヒッポリュテーは既にいない。アマゾン族は女性のみの部族であることから、次の女王はヒッポリュテーの妹であるアンティオペーしかいなかった。

そのアンティオペーはアテナイへと拐われてしまっている。

アマゾン族はアテナイへの侵攻を決意した。

ヘラクレスもまた、ヒッポリュテーを殺してしまったこと、テセウスを同行させてしまったことを悔いて、アマゾン族がアテナイへ攻め入ることを黙認するしかなかった。

こうして、アテナイへアマゾン族の侵攻が始まった。

アマゾン軍はスキュティア人と同盟を結ぶとアレスの丘に陣取り、アテナイ軍を攻め立てた。

そんな中、アンティオペーは少数の部下をアマゾン軍に派遣し、負傷したアマゾン兵をアテナイへと引き入れ治療し、亡くなった者を弔い続けていた。

アテナイ軍とアマゾン軍の戦いは4ヶ月も続くこととなった。

テセウスはアテナイ軍の劣勢を挽回するために神託を募った。

「ヘイヘイヘイ、デュオニュソス様。俺に常勝不敗の加護を与えてくれたでしょ。どうしたら勝てるか教えて欲しいんだぜ」

テセウスがそう祈ると、デュオニュソスが現れ「恐怖の神ポボスに生贄を捧げれば勝てるよ」と言って去っていった。

アマゾンとの戦闘で捕らえた捕虜をポボスに捧げたが、戦局は一向に変わらなかった。

テセウスは現アマゾン族の女王であるアンティオペーが戦いを止めるように言えば終わるのではないかと考えた。

そこで、アテナイで治療をしていたアンティオペーを連れて戦地へと向かった。

アンティオペーとともにテセウスが戦場に立つと、アマゾン軍はテセウスに向かって槍を飛ばしてきた。

「危ねぇ!」

テセウスは咄嗟に隣りにいたアンティオペーを盾にして後ろに隠れると、放たれた手槍はアンティオペーの心臓を貫き、アンティオペーは絶命した。

それを見たテセウスは叫んだ。

「アマゾン軍よ、貴様らは自らの女王を自らの手で殺したのだ。その罪に恐れ慄け。貴様らは自らの手で女王を殺した罪を償うのだ!」

テセウスの言葉とアマゾン軍の手槍が刺さったアンティオペの死体を目にしたアマゾン軍の戦意は喪失し、アテナイ軍の勝利となった。

そこでVTRが止まると、コメント欄には「これは笑えない、笑っちゃいけない」「ここまでクズだと清々しいな」「クズという言葉じゃ生ぬるい」「ただの外道……」といった、怨嗟のコメントが流れ続けた。

「テセウス、申し開きはあるか……」

アストレイアは努めて冷静であろうとしたが、声には怒気が含まれていた。

「いやぁ、あの時の俺様は神ってましたね。ヒョイって避けたらジャストミートですもん。そこで閃きましたよ。『これは使える』ってね。もうそこからはアテナイ軍の連戦連勝で勝利ですもん。さすがはオリュンポス12神のお告げですわ。俺はアテナイの救国の英雄ッスよ」

悪びれる様子もなく言うテセウスの姿に、アストレイアはテーブルの上で拳を握りしめ、テーブルに押し付けていた。

もし彼女にテセウスの十分の一ほどの力があったならば、テーブルは真っ二つに割れていたであろう。

「さぁ、アストレイア!判決は?」

イーリスの言葉にアストレイアは怒りに震える声を押さえながら聞いた。

「イーリス、これ、判決いるか?」

そう言った後、アストレイアは大きく深呼吸をし、テーブルの上で指を組み居住まいを正し、まっすぐに前を睨みつけた。

「本件において、被告テセウスは…」

アストレイアはそこで言葉を区切り、目を閉じて大きく息を吸った。

アストレイアが目を開き、口を開いた瞬間、座敷内の全ての人間が叫んだ。

「「「ギルティ!」」」

コメント欄も一斉に「Guilty!」のコメントが並び続けた。

「本件において、まずアンティオペーに対する扱いだが、捕虜とするなら捕虜虐待の重大犯罪であり、捕虜でないとしても、拉致監禁、強姦である。被告ははなはだ身勝手な理由でこれらを行い、自国に戦争を招いたということから、外患誘致罪の適用も考えられる。また、アンティオペーの死亡に関してだが、被告の行為は明らかに未必の故意とも言えず、殺人罪の適用すら範囲に入る行為である。被告に反省の意思が全く見られないことから、情状酌量の余地もない。よって、本件における被告はギルティ以外のなにものでもない」

そう告げたアストレイアはジョッキに残っていたネクタルを一気に飲み干すと、法槌代わりにテーブルへと力いっぱい叩きつけた。

「以上!」

その姿に「うわ、アストレイア様、ガチお怒りモード」「そりゃな……」といったコメントがついた。

ペルセポネは墨を持ち出すと、テセウスの左の目にバッテンを描いていく。その筆圧は今までのどの筆よりも強かった。

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