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<EP_012>黒い帆事件

<登場人物>

アストレイア:正義の女神

イーリス:虹の女神

テセウス:英雄。冥界の椅子に張り付いている

アリアドネ:テセウス被害者の会 会長。テセウスの被害者でもある

メーディア:テセウス被害者の会 顧問。百戦錬磨の魔女

パイドラ:アリアドネの妹。テセウスの被害者

ヘレネ:テセウスの被害者

ペリグネ:テセウスの被害者。シニスの娘であり、メラニッポスの母

パイア:テセウスの被害者。猪を飼ってるオバちゃん

ケルキュオーン:テセウスの被害者。オカマ

アンティオペー:テセウスの被害者。アマゾンの女王の妹。ヒッポリュトスの母

デメテル:豊穣の女神。居酒屋でめて〜るの女将


「さてさて、この後、テセウスくんはアテナイへ帰港するわけです。『帰る時に生きてたら白い帆、死んでいたら黒い帆をあげろ』とアイゲウス王と約束していたわけですが、テセウスくんは黒い帆をあげてアテナイの港に近づいたため、テセウスくんが死んだと思い込んだアイゲウス王は身投げしてしまうんですね」

イーリスが説明していった。

「そ、それは、俺が悪いんじゃねぇよ。親父が早とちりしただけで、俺は悪くねぇ!」

テセウスが喚くと、アリアドネがニヤリと笑った。

「へぇ、じゃあ、その時を聞いてみようか」

アリアドネが指を鳴らすと画面が切り替わり、一人の奴隷が画面に映し出された。

「あなた、あの時のテセウスの船にいた人よね」

「はい」

「その時、このバカが何をしていたのか教えてくれないかしら」

アリアドネの詰問に奴隷はおどおどしながら答えていった。

「テセウス様はナクソス島を出られましてから自室に籠もるようになられました。自室にお食事を届けに参りますと、中では鏡に向かってポージングの練習をしていたりしておりました。たまに『どうかな、この演説とポージング。イカしてるだろ?これでアテナイの市民の心も鷲掴みさ』などとおっしゃって演説とポージングを考えていらっしゃいました」

奴隷の言葉に座敷内が白けムードになっていると、「こんな感じかしらん」とケルキュオーンが立ち上がり水晶玉に向かってポージングを決めはじめた。

コメント欄では「画面を汚すなw」「だから、なんなんだよ、このチャンネルw」「テセウスならやりかねんよなぁ」といったコメントで埋め尽くされていった。

「つ、続けてくれ…」

ケルキュオーンの謎行動に気圧されつつアストレイアが促すと、奴隷も我に返って話を続けていった。

「はい。アテナイの港が近づいて、そろそろ帆を変えないといけないと思いまして、テセウス様に声をおかけいたしました。テセウス様が甲板に出ると、崖のほうで大きな水しぶきが

あがったのでございます。そうしたら、『なんだよ、英雄の帰還を派手に祝ってくれてんのか?道頓堀じゃないんだしさぁ』などとおっしゃられて、帆を変えたのでございます」

「ふむ、そうか…」

奴隷の言葉にアストレイアは考え込む。

「では、当時を見ていたアテナイ市民にも話を聞いてみましょう」

イーリスが指を鳴らすと画面には一人の老人が登場した。

「あなたは、当時のアテナイ港で見ていたのですよね?」

イーリスの言葉に老人は恐縮しながらも答えていった。

「ええ。当時、テセウス様のお帰りを心待ちにしていたアイゲウス王は毎日のように海を眺めていらっしゃいました。そして、黒い帆の船を見た瞬間に崖から身投げされてしまったのです。その直後、港から見えるテセウス様の船は帆を張り替えたように見えました」

「その時、どう思われましたか?」

「正直、やりやがったな…と」

老人の言葉に座敷内が爆笑の渦に包まれた。

コメント欄も「市民にこう思われてる王子様w」「まぁ、そう見えるよなw」「ダメだ。画面端に映る筋肉バカのせいで話が入ってこねぇw」と大盛り上がりだった。

「さて、アテナイに降り立って、アイゼウス王のことを聞いたテセウスくんはどんなことを言っていたのかな?」

イーリスは楽しそうに老人へとインタビューを続けていく。

「アイゲウス王の死を知ったテセウス様は『え?親父、死んじゃったの?どして?……あ、そうか。そんなに俺に王になって欲しかったんだ。親父もバカだなぁ。王位を譲ってくれるだけでよかったのに』と笑っておられました」

この証言には「ひ、人じゃねぇぞ、コイツ……」「なに、この人、怖い……」「ケルキュオーン!キレてるよ!腹筋6LDK!」といった言葉が並んでいった。

老人へのインタビューが終わると、アストレイアはジョッキを握りしめながら難しい顔で考え込み、ジョッキのネクタルを半分ほど飲み干すと隣のメーディアに話しかけた。

「メーディア、アイゲウス王はどんな人だったんだ?」

「ん?どうってことない男だったわよ。ちょっと思い込みの激しい人ではあったけどさ」

「そうか…」

メーディアの言葉にアストレイアは居住まいをただし、瞑目して深呼吸をしたあと、テーブルの上で指を組むと判決を下した。

「被告テセウスをギルティとする」

「「「フォォォォォ!!」」」

再び会場内が盛り上がっていった。

「アイゲウス王の死因については被告側は知らなかったというのは事実であろう。なので、アイゲウス王の死についてはノット・ギルティだ。しかし、アイゲウス王の性格を知っていたのだから、帆を変えずにアテナイの港へ近づくというのはどういう結果を招くかは予見可能だったはずだ。未必の故意とまではいかないが、被告側に重大な落ち度があり、これは過失と見て問題ない。よって、被告テセウスをギルティとする」

「「「YAAHAHAHAHA」」」

アストレイアの言葉を受け、ペルセポネがテセウスの額に「肉」の文字を書くと更に盛り上がっていった。

コメント欄は「さすがペルセポネ様、わかっていらっしゃる」「なんか難しいけど、ギルティなら良し!」「アストレイア様は公平だ」「だから、後ろのケルキュオーンを誰か止めろ。話が入ってこねぇんだよ!ww」といった声で溢れかえっていた。

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