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「あなたのために頑張ったんじゃあないです」  作者: イチイ アキラ


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01

 拙作「こりゃあきまへんわ。現実みよ」も、一緒に楽しんで頂けると嬉しいです。


「あなたのために頑張ったんじゃあないです」


 リーシャはその目を――散々馬鹿にされたその目を細めて、微笑んだ。






「うぐぎぎ……スカーレット……オハラぁ……」


 誰?


 最近、友人が良く口にするようになったその名前。

「細腰がすばらしい、とある物語の主人公……いや、遠い遠い国の……」

 友人は時折誰も知らない遠い国のことを口にする。不思議な知識の持ち主だ。


 そしてすばらしいセンスの持ち主だ。


 その遠い国の物語の女性は43センチというウェストサイズだったらしいと、友人は教えてくれた。

「まぁ、諸説ありましたが演じた女優さんも、また……すごいんで……くは……っ」

「そうなの?」

「物語の登場人物……創作の人間に近くあるって、すごいですわ……っ……」

 本当よね。

 リーシャも同じように唱えてみようかなと、同じように腹の底の息を吐き出した。

 侍女の掛け声が鋭く。

「はい! あと少し! もう一息!」

「うぐぐぐ……」

 そう、少女たちは――コルセットを締めていた。

 まるで拷問。

 けれどもそれにより細い腰と立ち姿を手に入れるために。


「伯爵令嬢になるのが、こんなに大変だったなんて……」

 スピカは先日、新たに興った――いや、再び興ったレトラン家の、伯爵家を継ぐことになった。

 それは色々あった末。

 スピカの才能が、そしてスピカの婚約者となるセオドアの才能も、両方惜しまれた故に。

 王太子アルフレッドの手のひらの上だと、スピカもリーシャも、関わった彼らは理解しつつも、転がされた感になんとも言えない顔をするのはしかたなく。

 セオドアとは元から親戚であるリーシャは彼の人となりを知っていたから、親友であるスピカが蔑ろにはされないだろうと、そうしたところでは安堵していた。

 そう、セオドアは良いひとだ。



 決して婚約者を蔑ろに……酷いことは言ったりしないだろう。



「ふう……」

 コルセットを締めてため息をつきつつも、親友は美人だ。

 その穂のような黄色味がある金色の髪も、淡く青い宝石のような瞳も。

 何より、その形よい丸い瞳が。

 コルセットを締めて、スタイルも良いことも改めてこの度判明した。


「一応は主人公だったんで……」


 と、また不思議なことを言っていたが。

 男爵令嬢から伯爵令嬢へと、学ぶことが変わり増えたことに彼女は大変そうだ。後々義母となる方が家庭教師となり、今は手取り足取り教えてもらっている最中。

「クラリスさま、あんなに優しくてわかりやすく教えてくださるのに。レティシアさんは何が嫌だったのかな?」

 クラリスはスピカの婚約者になったセオドアの母だ。もともと侯爵家の方だった彼女の礼儀作法は高位貴族の中でも一級品だ。


 そしてレティシアはスピカの義姉となる――リーシャの従姉妹。


 クラリスは形だけの再婚をして、その際にあまりに礼儀不足だったレティシアを見るに見かねて躾けようとなさったのだが……。

 結局レティシアは問題を起こし、それが巡り巡って、スピカが伯爵令嬢になる結果にもなった。


 レティシアはもう王城に上がることを許されない。礼儀作法も必要ない生活となった。コルセットもない――。


 そう、コルセット。


 男爵令嬢な頃よりもより格式高い催し物に呼ばれるようになり。即ちドレスもまた格式高く――コルセットをガッチリと締めねばならなくなったのだ。

 今日はそのためにリーシャの母の店でドレスの試着中。もちろんスピカのデザインだ。

 デザインをしているのがスピカと広まってからは、彼女は自らを広告代わりにも。美人の彼女ならでは、だ。


「作法も違うので……」

「扇の持ち方も気をつけてね?」

「あ、こんなところにも作法またあり……」


 元から伯爵家に産まれ、その産まれた日から学んでいるリーシャとは違うから、本当に大変そうだ。


「……コルセットなんて、無くなったらいいのに。もしくはもっと楽な……」


 友人は常々そんなことを考えているらしい。最近ではスケッチしなからよくぶつぶつつぶやいている。

「長年の慣習を変えるのは難しい」

 けれどもそれも理解していて。

 伯爵家になったとはいえ、たかが小娘一人が国を変えるのは何か大きな横槍でもないと、と……。

 今ではスピカのデザインは国にとっても価値があり。スピカ自身の存在も。

 そうしたことで親友は本当に大変そうだから。



 だから、リーシャはなかなか相談できなかったのだ。


「何でもっとはよ言わんかったんや!」


 怒りのあまり言葉が訛る親友に。訛るくらいに本気で怒ってくれていると、嬉しくなってしまい、リーシャは泣きじゃくった。

 怒ってくれた。

 リーシャのことを、本気で、本心で、心配してくれたのだ。

 言い出せなかったリーシャより、相手に(・・・)怒ってもくれた。



 リーシャは我慢を止めた。

 その細い瞳から、ぼろぼろと涙を流しながら。




 前作「こりゃあきまへんわ。現実みよ」の一ヶ月くらい後のお話です。

 今度は糸目少女のリーシャがメインです。

 まだまだ寒いですから、あたたくして、そうした一息つくときのお供にしていただけたら。

 どうぞお楽しみください。


 そしてこれは己のことですが。

 エアコン、昨年の10月の吉日に新品に買い直しました。その際の皆様のご心配やアドバイス、とてもありがたく!

 壁にも穴を開け配管を通し直してもらいました。天井裏に配管通した家を建てたころは、日本の真夏がこんな暑くて熱くて湿度高くなるたぁ、なかったんでしょうなぁ…もうこれで天井に結露もないぞぅ!



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