たどり着くのはいつだって
10,9,8、7……遠くの方からカウントダウンの声が聞こえる。
倒れるのが好き、という人はいまい。
足の踏ん張りが効かなかった。支えるための手が前に出せなかった。なすすべもなく、地面に向かっていく体。
みるみるうちに迫る地面は硬そうで。大きめの石も視界に入る。当たり所が悪ければ血が出ることは間違いなく、目、鼻、口いずれかの損傷も免れないだろう。
こんなはずではなかった。
もう一問だけ解けていたなら。もう一つだけ番号が違っていれば。もう一分家を早く出ていれば。悔恨のシネマロールが頭の中を巡る。数字というのはこんなにも残酷だったのかと思い知る。
一つ違っただけでそれに価値はないか。一つ多かっただけで偉いのか。一つ先んじた者のみが許されるのか。そうではない。
私はそんなものに負けはしない。誰かが定めた0と1には縛られない。そんなものに自分の人生を左右して欲しくはない。
そんなわけで。
私は地面とキスしたのではない。地面が私にキスしてきたのだ。
あまりに熱烈な口づけのせいで唇が切れ、歯がぐらついてしまったが、まぁ仕方がない。刺激的な彼女を受け入れた結果だ。このくらいのことは覚悟していたので問題はない。
カウントダウンは止んでいた。当たり前だ。ダウンなんてしていないのだから。これで私は戦える。
拳は無事だ。足も無事だ。顔は痛い。でも目はまだ見える。
はは、見ろ。私が立ってくるとは思っていなかったのだろう。あれほど怖かったヤツが向こうで震えているじゃないか。
お生憎様。まぁそんなわけだから。
いざ、再戦願おうか。
諦めない人が一番強い。
世の中はそうできてるから安心して続けるがいい。