失恋
「私が安易に王麗明に頼ったばっかりに…」
夏希はあの日から高熱が下がらず終いには急性肺炎になってしまった。
病院に3日入院点滴を受け、今は自宅療養中だ。
楊世が看病してくれるので、甘えてゆっくりしてる。
耕三が読み終わった新聞を持ってきてくれるのと
長谷川さんが見舞いに来てくれたので大体の経過は分かる。
あの王に言われて見つけた花束が無ければ、立件起訴は不可能だったと。
自宅への捜査令状もなかなか署長が判を押したがらなかったそうだ。
でも、奥さんが上のお子さんを連れて里帰り出産してるので、スーツもそのまま見つかり小型酸素ボンベも自宅にあったらしい。
供述も少しづつ取れてきているそうだ。
やはり、夏希に裏垢の事で弁護士相談されてるのを吹石は
小林にも相談していたらしい。
それを聞いた小林は巻き込まれたくなくて、吹石に別れを切り出し、逆上した吹石は夏希を突き落とし
そのまま小林の自宅へ来たらしい。
ちょうど奥さんが里帰りしてたので泊まり復縁を迫ってきた。
もし復縁してくれなければ、奥さんにも学校にもバラすと。
そこで、吹石に殺意が湧いたらしい。
『妻とうまくいってない。借金で首が回らない。死にたい。』と嘘をつき取り立て屋に引き延ばしを頼みに行くふりをしてダイビングショップと花屋へ買い物へ。
自宅に居る吹石に一緒に死のうと持ち掛けた。
そして夕暮れワンピースを2人で買いに行き休みの高校へ。
昼間にリュックサックはすでに隠しておいたらしい。
暗闇に紛れて一緒に花束を握り運河にダイブした。
そして戻って来た屋形船の下に潜ぐりこんだ…
話を聞けば聞くほど、夏希は気が滅入る。
咳が止まらない。
船底で息が出来ず泥水を飲み背中に凄いGを受けながら死んでいく様が浮かんで息が苦しい。
「あんなネット書き込みや机の落書きくらい、放置しとけば良かった。」後悔でどうにかなってしまいそうだ。
携帯に王からのメッセージが来てた。
「君は悪くない。君がイジメも楽々解決してしまったから、打つ手を失って君の背中を犯人が押したんだよ。
僕はその犯人の気持ちを汲んだだけだ。
僕の共犯は君じゃない、犯人にシンパシーを感じたから手伝った。」と。
「その犯人なら、もう吹石先生が逃げた時に分かってたよ…」夏希が手で両目をおおう。
夏希は犯人にやったろと詰めた。
が、犯人は「私は勝どき駅だと」嘘をついた。
夏希が月島駅の横断歩道と言ってないのに。
「楊世にラブレター転校してきてすぐに渡した」と言ったのは、小林先生の時に音楽の先生に早いもの勝ちと言われたから。
そして小林先生が犯人に当たりがキツいのは、結婚したら相手してもらえなくなったから。
横断歩道で、吹石先生の甘いフレグランスの匂いはしなかった。
何より本気で殺しにきてる人間の突き飛ばしは性別関係無かった。
アレは…脅しだ。自分の恨みを晴らせと私に強要してきたんだ。
涙が流れる。
「私、失恋したんだな…」3年間の密かな恋が終わったのだ。




