推薦
授業が始まるので教室に戻ると、分かりやすく机が落書きだらけだった。
「目立ちたがり」「自意識過剰」「承認欲求の鬼」「バカ、シネ、消えろ…」等など。
携帯で写メだけ撮り、ハンカチ広げて座る。
周りでクスクス笑う声がする。
『バカバカしいし、幼稚なんだけど。
まだ、分からないんだろなあ〜』と思う。
授業はモロ担任教師だった。
気付かず授業を始めたが、解答を書き込む時間に教室を周り机に気付く。
「なんで落書き消さないの?」と教師が言う。
「私が書いたと思うんですか?先生は?」夏希の質問にカチンと来たのか、
「あなたの机でしょ?汚れていたら綺麗にしたら?」と返す。
「コレは学校の備品ですよ。私の物じゃありません。
そして、これは器物破損の現場です。
消したら証拠隠滅で私が犯罪者になります。」
先生が固まる。
教室もザワつく。
「でも授業が始まるので座らなくてはいけないので
証拠を出来るだけ残すため触れる部分にハンカチを敷きました。」
「写メは残してますので、すぐ警察へ連絡して下さい。授業中の教室内の責任者は、先生なので。」
先生は黙ってしまう。
「古舘さんは大げさすぎます!それくらいで…」先頭列の陽キャ女子が立ち上がり意見する。
「そうだよ…空気読めよ」「あ〜あ、探偵気取り出たよ」や好き好き文句が出る。
夏希は立ち上がり、先生の手を引いて教壇に立たせる。
横で教室の生徒に向かって話す。
「それが大したことかどうかを決めるのは、あなた達じゃないの。私なの。
そして、大学進学の推薦を決めるこの大事な時期にこれ書くのに参加した人は、確実に落とされるのよ。
高校が風評被害を恐れて伏せても私が大学の方へ報告するから。」教室がやにわに沸き立つ。夏希に怒鳴って威嚇する者や下を向いて絶望する者やそれぞれである。
「先生、私が囁くのでその通りに言ってください。」夏希が先生の耳元に囁く。
「書いた人を報告した人は、自分が書いたかどうかを不問とします。
後で職員室の先生の所へ1人で隠れて報告してくれて良いから。
団体で来た時も1人づつ話を聞きます。」先生は話した。
「これで問題なく解決できると思います。校長や警察を出さずに済みますよ、先生。
名前の一覧表を作って私に渡して下さい。
どう処分するかは私が決めます。」壇上を降りて机に戻る。
チラッと日高明奈を見る。
シャキッとした背筋とポニーテールが、優等生の輝きに満ちている。
なぜ、こんな子が居るのにこの落書きを許したんだろ?
悲しくなる。
ふと魔が差して携帯のあの悪口の書き込みのスクショを彼女に向かって見せた。
サッと、顔色が変わった。
『あ〜あ、当たりかあ〜
間違いであって欲しかったなあ〜』とガックリした。