地獄のハーレム
「相変わらずスゴイな」夏希は遠目で驚愕する。
体育で楊世のクラスと一緒になったが、女の子が楊世の周りに群れている。
体育祭の演舞でアイドル化してしまい、もうなんかスゴい。
が、もう慣れたのか?
楊世は涼しい顔して適当に会釈してる。
「体育祭からよけいにヒドくなったね〜
クラスでは親衛隊が出来たみたいで身辺警護やってるみたいだよ。」日高明奈が笑う。
なんか…どんどん明るくなってきた。
付き物が落ちていくように。
文化祭の準備も着々と進め、今回夏希のクラスはカキ氷屋をやるらしい。
担任がいなくなったのなんか関係ないくらい、日高さんが何でもやってくれる。
臨時教員さんは、すっかりお飾りになっている。
「おい日高、申請用紙材料の数字が抜けてるぞ!
しっかりしてくれよ。」体育の小林先生が文化祭の吹石先生担当だった部分をやってるらしいが、
なぜか日高さんにだけ当たりがキツい。
「はいはい、分かりました〜すみません。」日高さんも日高さんで
小バカにしたような態度でちょっとらしくない。
やはり警察から自殺だと断定する発表が無いためか?
日に日に小林先生は明らかイライラしだした。
申し訳ないが、王麗明に教えられて見つけた花束と花屋の証言は月島署の長谷川に報告提出しといた。
しかし、一体なぜ王麗明には分かるのか?
謎だ。
急に事務員さんが体育館に入って来た。
「奥様から病院に行くと連絡ありました。いよいよですね〜おめでとうございます!」事務員さんがニコニコしてる。
「先生とこ、2人目生まれるみたいだね。ますます大変だね。」日高さんがクスクス笑う。
夏希はこれから待ってる暗転がより残酷になりそうで恐いが…音楽の先生、大丈夫だろうか?
「3年前、新採だった音楽の先生、私達ほとんど関わり無いまま産休入っちゃったもんね。
また、これで3年産休入るから6年開けて職場復帰出来るのかな?」日高さんが笑う。
職場復帰するかどうか分からないはずだが…辞めるかもしれないし。
でも日高さんは、必ず現場復帰すると思ってるみたいだ。
殺人の損害賠償は2000万くらいだ。
果たして教員で返せるか?子育てしながら?
離婚して逃げるのが得策だと思うが。
すると子供に賠償義務が行くのかもしれない。
これから生まれてくる命に。
「教員じゃ無理かもよ。水商売か売りとか考えないと。」夏希がつい口にしてしまう。
「へーっ、でも音楽の先生、実家太いとか言ってたし…売りって何?」日高さんが怪訝な顔をする。
しまった!夏希は焦る。
犯罪者の家族は、良くそういう場所で働いてる事が多いのだ。
追い込まれた吹石先生は、辞めるついでに不倫をばらすと小林先生を脅したのだろう。
あの夏希への誹謗中傷見ても死なば諸共キャラだった。
それで次は小林先生が追い込まれたのだろう。
ハーレムを楽しんでた先生は殺人者の道を選んだのか?
王麗明の黒い糸が人間の欲望を暴き曝け出させていってる。
「ふふっ、音楽の先生、早いもん勝ちとか嘯いてたけど、ヒドい粗悪品掴んだかもね?」日高明奈が笑う。
その瞬間、黒い糸が日高さんも侵食してるのが見えてしまう。
「どうしたの?次私達の対戦だよ?」夏希の手を引いて日高がコートに走った。