ゴミを漁れ
月島駅で別れ際に王麗明が振り返る。
「そうだ!忘れてた!高校の前に運河あるよね?」
王麗明が聞く。
「はい、屋形船がいっぱい待機してます。
でも、ゴミとかもポイしてるみたいで汚い運河ですよ。」潮の関係か?ゴミが橋の下に溜まってたりする。
「でも、そこで遺体上がったんでしょ?」何でも良く知っている。
「そのゴミの中にヒントがあるよ。探してみな。」と言うとトレンチを翻して元来た道を戻っていった。
駅まで送ってくれただけみたいだ。
恐ろしい人なのに、なんか紳士だった。
夏に挨拶で握手した時は、冷たくて大きくて硬い手が恐かったが、
フレンチキスは暖かった。薄い唇をキュと尖らせて可愛いかった。
でも、吹石先生を自殺までワザと追い込んだ。
夏希が背負う心の負荷を分かっていながら。
「アレ?そう言えば運河のゴミの中にヒントがあるとか言ってたな。
えっ、でも自殺なんだよね?
何のヒントなんだ?」夏希は?になる。
翌日、オカルト倶楽部でこの事を話す。
「なんで夜に話さなかったの?王と会ってもんじゃ屋行ったって隠したの?」楊世が怒る。
「だから今言ってるでしょ?楊世怒ったら、父さんや月子さんに聞かれるじゃん!
恥ずかしいでしょ?」楊世も夏希もイライラしてる。
「お前ら我慢しないで、また一緒に帰れば良いじゃん!無理してるとこっちまで疲れるんだよお〜」ヒロとサキがうんざりしてる。
とにかくオカルト倶楽部の部活だ。
皆が登下校する橋の下のゴミをちょっとづつ網で引き上げ、ついでにゴミ袋に詰める。
たまに学校の行事で運河清掃をやってるので、柄の長い網など学校にあるのだ。
「えらい!えらい!この頃また溜まってるからな。
オカルト倶楽部、役に立つじゃないか!」学年主任は
校長に聞こえるように褒めてくれた。
吹石先生の遺体が浮いてた運河のゴミなんで、気持ち悪がる生徒の視線も感じる。
パンの袋、菓子袋、モヤシなどの野菜パックのゴミ。
中には明らかに屋形船の肉パックの発泡スチロールもある。
そこに運河の緑色に染まった花束もあった。
「おかしくない?屋形船の宴会で貰った花束捨てて帰るのは、
あまりに不謹慎だろ?」ヒロがグチる。
花はもう腐ってるが、真ん中のスポンジにメッセージカードが刺さってる。
もう緑色だが、そこに「結婚して下さい!永遠に…」とメッセージが書かれていた。
「変なプロポーズだね。永遠にって」サキが首をかしげる。
確かに、普通に「結婚して下さい。」で良いのに、なんで「永遠に…」なんて厨二病的表現を付け足したのか?
「このブーケの包み紙、なんか駅前の花屋で見たことない?
店頭に飾ってる花束の包みに似てない?」夏希が3人に聞く。
「言われたら…このピンクの波形2本線見たことあるような…」サキとヒロが記憶を辿る。
「ちょっと洗って、メッセージカードと一緒に花屋に聞きに行こうよ!」楊世が言う。
他のゴミも見たが、この捨てられた花束が1番不可解だった。




