第1章 やっかいごと
どうも、ホメロスの叙事詩です。
この度は読んでいただいて、感謝感激雨あられでございます。
上手く書けるか分かりませんが、よろしくお願いします。
俺は神様なんか信じない。信じないったら信じない。なぜなら、この世にはとんでもない理不尽が存在するからだ。肩がぶつかっただけで医療費請求?自販機に金を飲み込まれる?突然架空請求される?どれも自分には非がない、酷いことばかりだ。だが、寛大な俺の心も、今日1日でそれらが全部俺に降りかかってきたからか、さすがに許容範囲を超えた。
「あ~、今日から役員になりました、桐羅ナコです。どぞ、よろしく」
「今すぐ で て い け 」
意味が分からない。誰かの悪意を感じるぞ。嘘だと思いながら、目を擦って再び前を見る。変わらずいらっしゃる幼馴染に思わず辟易。
桐羅ナコ……俺の幼馴染にして、最凶のトラブルメーカーだ。艶のある漆黒の長髪ストレート、パッチリと開いた二重まぶた、高すぎず低すぎない鼻、心配になるほどの白い肌、165センチという女子では高めの身長、若干大振りな胸、と完璧すぎるくらいに可愛い。可愛いのだが……必ずと言っていいほど厄介ごとを持ち込んでくる。この一週間だけで何回だ?あ~、7回。毎日じゃねえか!?
「酷いなあ、生徒会長の函辺希望先輩。こんなに可愛い幼馴染の後輩が、先輩目当てで生徒会に入ったんですよ?泣いて喜ぶでしょ、普通。」
「よし、桐羅。キミの要求は分かった。いくら出せばいい?」
「むぅ、いつも通りナコナコ(はーと)って呼んでくださいよおっ!あと、一万円でいいです」
「断じてそのような呼び名で呼んだことはないし、今後も呼ぶ予定はない。それと何だ、この世は俺に対して金の恨みでもあるのか!?朝っぱらから碌な目に遭っていないぞ。主に金銭面で」
「搾り取られそうな顔してますもんねぇwwww」
どんな顔だ、どんな。
「かっちょいい顔してますヨ?」
「その手には乗らん。おだてたからと言って、俺から一万円が出ると思ったら大間違いだ」
「む、素直じゃない!中学の頃は恥ずかしがってくれたのに!」
「あれからもう3年も経ってるんだ!まだ掘り返すのか貴様は!!」
はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。ようやくここで一段落。こいつと話してると猛烈に疲れる。
「あ、あの……会長?」
「あ?」
「ひぅっ!あ、あの……新入生役員の紹介がまだ終わってないんで、そろそろ……」
「あー、スマン。ほらナコ失せろ」
「うっわ、はいはい黙ってますよ黙ってますともそれでいいんでしょそれで!」
「じゃ、次のキミ」
「ガン無視!?」
いちいち構ってたらキリがない。俺はナコの隣にいる女子に顔を向けた。
「僕、新村ソウ。よろ」
「簡潔かつ愛想悪っ!?挨拶くらいもうチョイまともにしてくれ!」
「新村ソウ。性別は女、血液型はO、身長152センチ、髪型は茶髪のショートボブ、趣味はBL小説、現在も過去も彼氏なし、スリーサイズは上から「言わんでいい」……よろ」
「よろ」とは「よろしく」という意味と取って構わないよな?これまた可愛らしい少女だが、ナコに通じるものがあるな。主に厄介ごと系で。とりあえず、怖いほど無表情が印象的な少女を記憶する。それにしても眠そうな目だなぁ。
「まぁ、いい。最後の」
「はぁ、僕ですかね。えー、山中スグルです。選挙で選ばれたからには頑張りますので、よろしくお願いします」
最後は病弱という言葉がぴったりな男子。顔は青白く、絶対お前外で遊んだりしないだろってやつ。顔立ちは……なんと言うか可もなく不可もなく?身長は170センチ無いくらい。真面目そうだし、何となくまともな感じがする。俺は待っていた!キミみたいな普通の人が来るのを待っていたよ!!
「あ、ちなみに僕幼女趣味です。なので、幼児体型の人しか興味ないんで」
「俺の平穏はどこに行ったああぁぁぁ!!」
「ちょっ、ヒカリ先輩どうしたの!?」
「シャラップ、ナコ!今年の一年は2人ともお前と同類だよ馬鹿野郎!!」
類は友を呼ぶを体現しやがった!!
ここ、水都市立西水都高校では、先日生徒会選挙が行なわれた。ウチの高校の生徒会は、一年の時に生徒会に入ると、三年までずっと生徒会に所属するという珍しい体系を取っている。その年度の初めに3人選ばれ、その次の年度にまた3人、という具合だ。去年は俺達だったが、1つ上の先輩方が早めに引退(ぶっちゃけ押し付け)して、二年の俺に生徒会長のお鉢が回ってきた。そういうことで、実質今年の生徒会は6人となってしまうのだが、こいつらじゃ戦力にならん。かなり心配になってきた。
今日は新しい生徒会役員との顔合わせだったんだが、まさかここまで酷いとは思わなかった。……いや、諦めろヒカリ。ナコが居ると分かった時点で、お前はもう悟ってただろう。
俺に平穏はない、と。
「あ、あはは……次は俺達か。ほらヒカリ、生徒会長なんだからしっかりしな!」
「う、そうだな。いつまでも打ちひしがれてても仕方ないよな。じゃあ、能登から」
「うし。俺は能登テツジ。副会長をやらせてもらってるぞ。よろしくな」
俺の右腕、能登。中肉中背で、スポーツ刈り。顔は中の上くらいか?そんで剣道一筋。剣の腕はいいらしく、よく賞を取って来る。質実剛健を地で行くようなやつだが、有能で良いヤツだ。まあ、ときどき変な電波を受信して壊れるが。
「む!なんか汗臭い人な気配が」
「シーッ!私も思ったけど、そういうこと言っちゃダメ!」
…………良いヤツなんだぞ!!
「んじゃ南」
「う、うん。私は南アマネ。会計、してます。よ、よろしくね……?」
「南先輩、実は最初から貴女に決めてました。結婚してください」
「ひぅっ!?」
「自重しろロリコン!」
スグルが反応した通り、南は幼女体型だ。140後半くらいの身長に、ツインテールの茶髪。涙目がデフォルメなんじゃないかというくらいに臆病で、「ひぅっ!」が口癖の17歳。……性格はまともだよ?うん。笑ったら可愛いんよ、うん。って、ちょっ、ちがっ、俺はロリコンじゃねぇ!!
「さて、自己紹介は済んだな?そんじゃま、早速新人3人の役職を決めるか」
「ヒカリ先輩!私は先輩の愛人で!」
「本妻が居らんし、それは役職じゃねぇ!」
俺とナコの茶番はいつものこととして……問題は後の2人だな。
「僕は風紀委員でいいよ」
「風紀委員?なんでまた」
「素行が悪い生徒……お仕置き……フフフ」
「何する気!?」
ソウは俺の中で、ドSの変態に決定。
「そうですね……でしたら僕は、書記の補佐で」
「想像付くけどその心は?」
「南先輩を手取り足取り……むふ、むふふ、むふふふふふふ」
「南、警察」
涙目の南は携帯片手に震えていた。
「と、それが半年前だったわけだ」
「誰に言ってんのヒカリ先輩?」
「なに、独り言だ」
そう、これまでのは俺の回想。いわゆる現実逃避ってヤツだな。あの頃はまだ良かった……あれくらいの厄介ごとで済んだあの頃は。皮肉にも視界の隅では、半年前と同じで、涙目の南が携帯片手に震えている。
「さて、あの平和な時間はどこへ行った?」
「会長、そんなヒマあるんですか?」
「……すまん、軽くトンでた」
「か、かかか会長。わた、わた、私達どうすれば!?」
「落ち着け南。ほら、またスグルに襲われるぞ?」
「ひぅっ!?」
さてさて、俺達は今、日常なら絶対に陥らない状況に居る。非日常ってやつさ。
「何でお前は冷静なんだよ!?」
「いやいや能登。これでも結構混乱してるって」
「…………そうは見えないんだが?」
「……諦めの境地さ」
この小説のカテゴリ、ちゃんと確認したかい?コメディだと思っただろ?
「先輩、僕、トイレ」
「はいはい我慢な」
「……先輩は我慢して洩らせって言うの?みんなの前で洩らせだなんて……はぁ、はぁ」
「ソウ。この半年てっきりお前はSだと思っていたが、それは間違いだったんだな」
残念ながら、ナコの厄介ごとは……コメディじゃ収まらなかったみたいだ。
『えー、水都市立西水都高校の諸君。この高校は我々が乗っ取った。抵抗は無意味だ』
この話は人物紹介的な意味合いが込められてますので、話が本格的に始まるのは次の話からです。
さて、理不尽なこと……時々ありますよね?
その理不尽を、一手に請け負った少年のお話です。